ニューズレター
株主総会・取締役会を書面決議で行う場合等の留意事項について
株主総会・取締役会を書面決議で行う場合等の留意事項について
台湾でも株主総会は6月が多く、株主総会の季節が近づいてきました。そこで、株主総会、取締役会の書面決議等について、2022年2月に経済部(日本の経済産業省に相当)より出された解釈等をご紹介します。
まず、昨年2021年12月末に改正会社法が施行され、公開会社においてテレビ会議による株主総会の開催が可能となり、非公開会社においては、天災、事変又はその他不可抗力の状況がある場合、一定期間内は定款の定めがなくてもテレビ会議による株主総会の開催が可能となりました。改正後の取締役会・株主総会のテレビ会議方式での開催、書面決議に関する規定の状況は以下のとおりです。
①公開会社 |
②非公開会社 (非閉鎖会社) |
③非公開会社 (閉鎖会社) |
|
取締役会 |
|||
(1)テレビ会議 |
◯ |
◯ |
◯ |
(2)書面決議 |
☓ |
◯ |
◯ |
株主総会 |
|||
(3)テレビ会議 |
〇※ (ただし、証券取引所轄官庁が規定する条件等に合致する必要あり) |
◯※ |
◯※ |
(4)書面又は電子的方式による議決権行使 (株主総会自体は開催する) |
〇 |
〇 |
〇 |
(5)書面決議 (実際には株主総会を開催しないものの、開催したものとみなされる) |
☓ |
☓ |
◯ |
※テレビ会議方式は、天災等の場合で所轄官庁から公告がなされたときは、定款の定めなしでも可能。
改正の概要は、2022年1月11日付の当事務所のニュースレターをご参照ください。なお、台湾においては、「非公開会社」と「閉鎖会社」は全く意味が異なるので注意が必要です。「閉鎖会社」(上記の表の③)は2015年に創設された類型で比較的新しく、現在でも上場していない会社の多くは、上記の表の②となっています。
そして株主総会、取締役会の書面決議等について、2022年2月に経済部より解釈が示されました。
1.非公開会社のうち閉鎖会社の株主総会を書面決議で行う場合の招集通知について
これは、上記の表の(5)に関するものです。非公開会社のうち閉鎖会社では、その定款に定めがある場合、株主総会を書面決議で開催し、実際に株主総会を開催しないことができます(会社法第356条の8第3項及び第4項)。今回の解釈では、この場合でも、招集手続に関する第172条の規定は適用される旨の見解が示されました。すなわち第172条に従い、当該株主総会の書面決議の事由及び行使の方式を株主に通知する必要があるとされています。
2.株式会社が株主総会において書面又は電子的方法による議決権行使を採用する場合でも、株主総会自体は開催する必要がある。
これは上記の表の(4)に関するものです。株式会社が株主総会において書面又は電子的方式による議決権行使を採用する場合でも(第177条の1及び第177条の2等)、株主総会自体は実際に開催する必要がある旨の解釈が示されました。
すなわち、これらの規定は、あくまで株主総会決議への株主の参加を促すために、株主が自ら出席する方法、委託出席する方法に加えて、書面又は電子的方法により議決権を行使できるようにしたにすぎず、書面決議(実際の集会は不要。356条の8第3項)とは異なり、実際に株主総会を開催しないことを認めるものではないと説明されています。
このように(4)の書面による議決権行使と、(5)の株主総会の書面決議は異なっているので注意が必要です。現在でも、多くの非公開会社は、上記の表の②の類型の会社なので、(5)の書面決議(即ち、集会しない)の方式で株主総会を開催することはできません。
3.非公開会社が取締役会を書面決議で行う場合の招集通知について
これは上記の表の(2)に関するものです。非公開会社が第205条第5項に基づき取締役会を書面決議で行う場合、実際に取締役会を開催する必要はありません。しかし、この場合でも、第204条の規定に従い書面決議の事由及び行使の方式を各取締役および監査役に通知しなければならないという解釈が示されました。
現地法人の株主総会や取締役会に関連する書類は、各国の会社法にあわせて作成する必要があります。ところが、実務上、親会社の取締役会、株主総会関連書類を流用してしまうことによって、現地法人の適用法令への違反リスクが生じてしまっている事例もあるようですので、国ごとに異なる会社法規定にぜひご注意いただきたく存じます。