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正当な権利行使の境界線:警告書送付における事前手続義務とリスク



 

 一、警告書関連規定

 

公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当。以下「公平会」という)が制定した「事業者が著作権、商標権又は専利権(専利:特許、実用新案、意匠を含む)の侵害に関して警告書を送付する案件に対する公平会の処理原則」(中国語「公平交易委員會對於事業發侵害著作權、商標權或專利權警告函案件之處理原則」)(以下「警告書処理原則」という)第3点及び第4において、警告書の送付前に実行すべき事前手続きが規定されており、事前手続きを実行した上で警告書を送付した場合に限り、正当な権利行使とみなされる。さもなければ、警告書処理原則第5点の規定に基づき、公平交易法(日本の「不正競争防止法」及び「独占禁止法」に相当。以下「公平法」という)第25条違反となる可能性がある。

 

ここで注意すべきは、警告書処理原則第3点第3号及び第4点第1号では、警告書の送付前又は送付と同時に侵害排除を求める通知を行うべき対象は「製造業者、輸入業者又は代理店」であると規定されており、商品を販売する「流通業者」は含まれていないという点である。

 

【警告書処理原則第3点】

「事業者が次のいずれか1つの手続を実行した上で警告書を送付した場合、その行為は著作権法、商標法又は専利法に基づく正当な権利行使に該当する。

(一)裁判所の一審判決により著作権、商標権又は専利権の侵害が認められた場合。(二)著作権審議及び調停委員会による調停成立後、裁判所の審理を経て著作権侵害が認められた場合。(三)専利権侵害の疑いのある対象物の侵害鑑定を専門機関に依頼し、鑑定報告書を取得し(実用新案権の場合は、実用新案技術報告書を併せて提示すること)、かつ警告書の送付前又は送付と同時に、侵害の疑いのある製造業者、輸入業者又は代理店に対して侵害排除を求める通知を行った場合。事業者が前項第3号後段の侵害排除通知実行しなかった場合でも、事前に権利救済手続をとった、又は合理的かつ可能な注意義務を尽くした、又は通知が客観的に不可能である、又は通知を受けるべき者がすでに権利侵害紛争の事情を知っていたと認めるに足る具体的事実及び証拠がある場合、侵害排除通知の手続を実行したものとみなす。

 

【警告書処理原則第4点】

「事業者が次のすべての手続を実行した上で警告書を送付した場合、その行為は著作権法、商標法又は専利法に基づく正当な権利行使に該当する。(一)警告書の送付前又は送付と同時に、侵害の疑いのある製造業者、輸入業者又は代理店に対して侵害排除を求める通知を行った場合。(二)警告書において、著作権、商標権又は専利権の明確な内容・範囲及び侵害された具体的事実(例えば、係争権利がいつ、どこで、どのように製造、使用、販売又は輸入されたかなど)を明記し、係争権利に侵害の疑いがある事実を受領者に十分知らせた場合。(三)実用新案権の場合、上記の通知又は警告書の送付時に、実用新案技術報告書を提示すること。事業者が前項第1号の侵害排除通知を実行しなかった場合でも、事前に権利救済手続をとった、又は合理的かつ可能な注意義務を尽くした、又は前項の通知が客観的に不可能である、又は通知を受けるべき者が既に権利侵害紛争の事情を知っていたと認めるに足る具体的事実及び証拠がある場合、侵害排除通知の手続を実行したものとみなす。」

 

なお、公平法第25条は「本法に別段の定めがある場合を除き、事業者は、その他取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔行為又は著しく公正さを欠く行為をしてはならない。」と規定している。上記規定にいう「著しく公正さを欠く」とは、著しく不公正な方法で競争又は商業的取引を行うことをいう。「取引秩序に影響を及ぼすに足りる」か否かの判断にあたっては、被害者数の多寡、損害の量・程度、他の事業者に対する抑止力の有無、特定の団体や集団を対象とした行為か否か、将来的に多数の潜在的な被害者に影響を及ぼすかどうか、行為の方法・手段、行為の頻度・規模、行為者と相手方の情報格差の有無、紛争・争議解決のための資源の多寡、市場支配力の大小、依存関係の有無、取引慣行及び産業特性などを考慮することができ、かつ、実際に取引秩序に影響を及ぼしたことに限るものではない(公平会の公平法第25条の案件に対する処理原則(中国語「公平交易委員會對於公平交易法第二十五條案件之處理原則」)を参照)。

 

公平法第25条に違反した場合、主務官庁は同法第42条の規定に基づき、行為者に対しその行為を停止・改善し又は必要な是正措置を講じるよう命じ、過料に処することができる。「主務官庁は、第21条、第23条から第25条に違反した事業者に対し、期限を定めてその行為を停止・改善し又は必要な是正措置を講じるよう命じることができ、並びに5万台湾元以上2,500万台湾元以下の過料に処することができる。期限を過ぎてもその行為が停止・改善されず、又は必要な是正措置が講じられなかった場合、引き続き期限を定めてその行為を停止・改善し又は必要な是正措置を講じるよう命じることができ、並びにその行為が停止・改善され、又は必要な是正措置が講じられるまで、回数に応じて10万台湾元以上5,000万台湾元以下の過料に処することができる。

 

二、事案の概要

 

被処分者は、LED産業の川中パッケージング業者であり、事業範囲を川下の照明器具製造にまで拡大した。同社は、LEDブラケットパッケージング技術及び構造関連技術に関する3件の特許を取得している。これらの特許技術は、発光装置の生産速度と歩留まり、並びに装置の導電性と放熱性を向上させるものであり、LED照明器具製品に応用されている。

 

202210月より、公平会は複数の流通業者から通報を受けており、被処分者はこれらの流通業者に対し、期限付きで自社の特許権を侵害する照明製品を取り下げるよう求める警告書を送付したことに起因して、本件紛争が生じた。

 

公平会は、202578日付で公処字第114058号処分書を作成し、被処分者による警告書送付が警告書処理原則の事前手続きに違反したとして、被処分者が公平法第25条に違反したと判断した。

 

三、公平法による処分理由

 

公平会は、主に以下の理由に基づき、被処分者が警告書処理原則の事前手続きに違反したと判断した。

 

 (一)被処分者による警告書処理原則第3点第1号及び第3号違反

 

1.被処分者は警告書において、2022117日に知的財産及び商業裁判所(IPCC)へ特許侵害訴訟を提起した旨を指摘したが、警告書送付時点において侵害を認める第一審判決はまだ下されていなかったため、警告書処理原則第3点第1号の要件を満たしていない。

 

2.被処分者が送付した警告書には、自ら作成した侵害品リスト及び分析報告書のみが添付されており、第三者専門機関による鑑定報告書が添付されていないため、警告書処理原則第3点第3号の要件を満たしていない。

 

(二) 被処分者による警告書処理原則第4点第1号及び第2号規定違反

 

1.被処分者は、製品販売の流通業者に警告書を送付する前に、特許侵害紛争に関与することを事前に又は警告書送付と同時に「製造業者、輸入業者又は代理店」に通知しなかった。これに対し、被処分者は、警告書の送付先である流通業者の一部が自社ブランドの照明製品を開発し、他者に製造を委託しているため、製造業者に該当すると抗弁した。しかし、公平会は、本件に係る照明製品には当該流通業者の自社ブランド製品が含まれておらず、流通業者は他社ブランド製品の特許状況を把握しておらず、加えて被処分者は、流通業者が侵害疑義商品について販売業務を担当していることを照明業者も知っていると述べたことがあり、流通業者が販売チャネルに属し、製造業者ではないとの見解を示した。よって、被処分者の行為「警告書処理原則第4点第1号に違反する。

 

2.警告書には侵害品リストが明記されておらず、侵害の原因、内容及び範囲も明確に示されていないため、警告書の受領業者が侵害事実を明確に知ることができず、警告書処理原則第4点第2号に違反する。

 

(三)公平会は、流通業者が特許侵害紛争に巻きまれないように、警告書を受け取った後、製品撤去や供給業者による保証書発行などの方法で対応することが多いと考えている。被処分者は流通業者に対し、極めて短期間で侵害品への対応を要求し、製品撤去、市場撤退、或いは不当な和解条件の受諾を強要した。これにより、中小企業の販売に支障をきたし、萎縮効果をもたらした。また、被処分者は一部の製造業者に通知したものの、通知の範囲と内容は流通業者に提供されたものよりも限定的であったため、製造業者は侵害紛争を十分に把握できず、効果的な防御策を講じることができなかった。これは取引秩序に影響を及ぼす著しく公正さを欠く行為行為に該当し、公平法第25条に違反する。

 

(四)公平会は最終的に、被処分者がLED業界における大手メーカーであり、売上高と規模も比較的大きいこと、また80以上の事業者に対して100通以上の警告書を送付したことを考慮し、被処分者に対し違法行為の即時停止を命じるとともに、200万台湾元の過料に処した。

 

四、結論

 

企業が権利保護手段として警告書を用いる場合、警告書処理原則の事前手続き規定を厳格に遵守しなければならない。警告書送付のタイミング、送付対象の選択、内容のいずれかが不適切又は不十分である場合、公平法違反のリスクにつながる可能性がある。企業は、警告書送付前に関連手続要件を満たすことを確保するため、明確な内部審査メカニズムを構築する必要がある。これにより、違反リスクを低減し、権利保護の正当性を強化する。

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