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専利権者が取引相手に対して警告書を送付する際に侵害鑑定報告書を添付した場合でも、必ずしも正当な権利行使とは認められない



知的財産権の権利者は、警告書を送付したり広告を掲載したりするなどの方法で、自らの権利を主張することがよくある。しかし、権利の行使は決して無制限ではなく、知的財産権者の権利濫用による取引秩序への影響を防止するため、公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当。以下「公平会」という)は早くも1997年に事業者が著作権、商標権又は専利権(専利:特許、実用新案、意匠を含む)の侵害に関して警告書を送付する案件に対する公平会の処理原則(中国語「公平交易委員會對於事業發侵害著作權、商標權或專利權警告函案件之處理原則」)」(以下「警告書処理原則」という)を制定した。これは、権利者が自身又は競合他社の取引相手や潜在的な取引相手に対し、警告書、広告掲載、その他の文書形式で、競合他社がその所有する著作権、商標権又は専利権を侵害している旨を散布する場合に、行動指針を提供し市場における公正な競争を確保することを目的としている。例えば、特許権者が顧客に対し、競合他社がその特許権を侵害している旨を通知する警告書を送付しようとする場合、事前に特許権侵害の疑いのある対象物の侵害鑑定を専門機関に依頼し鑑定報告書を取得し、かつ警告書の送付前又は送付と同時に、侵害の疑いのある競合他社に対し侵害排除を求める通知を行った場合、警告書処理原則第3点第1項第3号に基づき、その行為は正当な権利行使とみなされる。

 

しかしながら、最高裁判所は202565に下した114年(西暦2025年)度台上字第664号民事判決において、特許権者が警告書処理原則の要件に従い、警告書送付時に鑑定報告書を添付したとしても、その行為が完全に合法であるとは限らず、依然として不当な権利行使とみなされる可能性があるとの見解を示した。

 

本件において、A社は本件特許権を有しており、B社が製造・販売する製品が自社の特許権を侵害していると主張し、B社及びその下請け業者に警告書を送付した後、B社に対して特許権侵害訴訟を提起した。これに対し、B社は自社製品が非侵害であると主張するほか、A社が警告書を濫発した行為は不正競争行為に該当し、公平交易法(日本の「不正競争防止法」及び「独占禁止法」に相当。以下「公平法」という)に違反するとして、A社に対し損害賠償を求める反訴を提起した。本件控訴審において、知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は二審判決(112年(西暦2023年)度民専上字第29号民事判決)を下し、B社の製品は非侵害であると判断した。反訴について、IPCC は、A社が警告書に係争特許の特許公報、特許事務所が作成した侵害鑑定報告書(以下「甲鑑定報告書」という)を添付し、係争特許権の内容・範囲及び侵害された具体的事実を明記し、かつ同日又は事前にB社に対し侵害排除を求める旨の通知書を送付したことは、警告書処理原則の関連規定を満たしており、正当な権利行使に該当し、公平法に違反しないとした。IPCCまた、B社が特許事務所に依頼してA社に対し侵害を否認する旨の書簡を送付したものの、対比過程を含む非侵害鑑定報告書(以下「乙鑑定報告書」という)を添付しておらず、甲鑑定報告書に具体的かつ明白な誤りがあることを明確に指摘していなかったことから、甲鑑定報告書と乙鑑定報告書の結論の相違や、甲鑑定報告書が司法院(台湾の最高司法機関)のウェブサイトに掲載された鑑定人(機関)の参考名簿に記載された鑑定機関によるものではないことを理由に、A社に侵害の故意があったと判断することは困難であるとした。これにより、IPCCは当事者双方の第二審控訴を棄却した。

 

最高裁判所は当事者双方の上告を審理した後、IPCCの二審判決とは異なる立場をとり、114年(西暦2025年)度台上字第664号民事判決を下した。最高裁は次のように述べた。「知的財産権者が、他事業者が自らの知的財産権を侵害していないことを知っていた、又は過失により知らなかった場合、その知的財産権の保護を目的とせず、知的財産権を他の競合他社やその取引相手を脅迫・威圧する不公正な競争手段として利用し、当該事業者に対し通知書や警告書を濫発することは、産業発達に寄与するという知的財産権の立法趣旨を逸脱するものであり、正当な権利行使とは言い難い、事業者が係争原則第3点及び第4点に定められた手続きを実行した後に行う警告書や通知書の送付行為がすべて正当な権利行使に該当するわけではない。」 最高裁はまた、警告書処理原則第5点第2項において「事業者が同原則第3点又は第4点に定められた事前手続きを実行して警告書を発したとしても、その内容が競争制限や不正競争に該当する場合には、公平会は具体的事案に応じて、公平法違反の有無を審査する」と定められていることを指摘した。

 

最高裁は、A社が警告書を送付した後B社が内容証明郵便でA社に対し、その製品の動作における2つの支持板機構と振動方式がA社の特許技術とは異なる旨を通知し、これは、係争製品が係争特許の特許請求の範囲に含まれない理由をA社に明確に告知したものとみられるとした。A社が通知を受けた後も、他の業者に対して警告書を送付し続けた行為が、故意又は重大な過失により他人を保護する法律に違反し、B社に対して損害賠償責任を負うべきかどうかについても、さらに議論を深める必要があるとした。最高裁はさらに、原審が、A社の書簡送付行為が警告書処理原則の関連規定を満たしているという理由だけで、公平法第45条に規定される正当な権利行使行為に該当し、同法第20条第1号、第24条、第25条に違反する事情がないと即断した点について、議論の余地があるとし、原判決のこの部分を破棄して差し戻した。

 

 

 

上記の最高裁判決から明らかなように、専利権者が取引相手に警告書を送付し、競合他社が自らの権利を侵害していると主張する場合、たとえ形式上は警告書処理原則の要件(例えば、侵害鑑定報告書を取得し、事前又は同時に競合他社に侵害排除を求める通知を行うなど)を満たしているように見えても、専利権者はその侵害主張が適切かどうかに留意する必要があり、特に、競合他社から侵害懸念の解消に関する回答を得た場合、専利権者は相手方の主張を慎重に評価し、自らの行為が法律違反に当たらないよう行動戦略を調整する必要がある。

 

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