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台北高等行政裁判所の最新判決:第2類新薬のパテントリンケージ登録システムへの特許情報の登録を認める



医薬品のパテントリンケージ(Patent Linkage特許連携)制度において、薬事法第483条に基づき、医薬品の特許情報を登録できる新薬の範囲について、台湾主務官庁の衛生福利部食品薬物管理署(日本の厚生労働省医薬食品局に相当。以下「TFDA」という)は従来、薬事法第7条に規定される「新成分」「新治療効果・複方」「新投与経路製剤」を有する医薬品(1新薬)に限定し、「新剤形」「新用量」「新単位含有量製剤」を有する医薬品(2新薬)は含まれていないと認定していた。しかし、主務官庁が医薬品のパテントリンケージ制度を立ち上げた当初は、パテントリンケージ登録システムに若干の2新薬の医薬品許可証(Marketing AuthorizationMA)の所持者が特許情報を登録するための専用アカウントが既に設けられていたため、その後、主務官庁がこのようなアカウント及び関連登録情報を削除した。この決定については、弊所は、医薬品のパテントリンケージ制度の立法趣旨に反するものと考え、不利益処分を受けた新薬の医薬品許可証メーカーを代理して、上記決定に対する訴願及び行政訴訟を提起した。
 
上記行政訴訟に関し、20221229日に、台北高等行政裁判所は、弊所が代理した2件の行政訴訟(110年(西暦2021年)度訴字第844号判決及び110年(西暦2021年)度訴字第1060号判決)に対し、TFDAの原処分及び訴願決定のいずれも取消し、TFDAに対して原告らが登録した係争医薬品許可証の特許情報をパテントリンケージ登録システムに回復するよう命じる判決を言い渡した。
 
この2つの判決要旨は以下のとおりである。
 
一、薬事法第4章の1「医薬品のパテントリンケージ」にいう「新薬」は、同法第7条に規定される新薬(すなわち第1新薬)に限定されるものではない
 
薬事法第4章の1に医薬品のパテントリンケージ制度が導入された背景には、台湾がTPP環太平洋戦略的経済連携協定)加盟のために法制度を整備する必要があることから、その後新設された薬事法第4章の1におけるいわゆる「新薬」について、立法者は、パテントリンケージ制度を適用できる医薬品を、「薬品の検査試験登録に係る審査準則」(中国語:「薬品査験登記審査準則」)4条第1号の新薬はもとより、薬事法第7条にいう「新成分、新治療効果・複方又は新投与経路製剤を有する医薬品」にも限定するつもりはないと思われる。原処分は、原告の2新薬の医薬品が薬事法第7条にいう新薬(すなわち1新薬)ではないとして、特許情報をパテントリンケージシステムに登録することはできないと誤って判断したものであり、誤りである。
 
二、パテントリンケージ制度の本質は、新薬(先発医薬品)メーカー及びジェネリック医薬品(後発医薬品)メーカーの利益のバランスをとることにあり、特許情報を登録できる新薬の対象を限定することは、特許情報の透明性を損ない、立法目的の達成に寄与しない
 
パテントリンケージ制度の本質は、新薬メーカーの研究開発への投資とのバランスをとり、新薬とジェネリック医薬品との間に合理的な市場競争を促進することにある。新薬メーカーが新薬の特許情報を積極的に開示することで、ジェネリック医薬品メーカーは透明性のある特許情報により、先に医薬品の特許状況を把握できる。このような仕組みは、ジェネリック医薬品メーカーに特許回避設計(迂回設計、デザインアラウンド)をした研究開発を行うことを促し、ジェネリック医薬品の発売前に侵害の懸念をクリアにするのに役立つ。医薬品のパテントリンケージ制度では、ジェネリック医薬品の承認申請の審査手続きにおいて、許可証の発行を12ヶ月間一時停止する一方、挑戦する後発医薬品メーカーに報いるために、特許への挑戦(パテントチャレンジ)又は特許回避に成功した最初のジェネリック医薬品メーカーに12ヶ月の市場販売独占期間を付与する。これは、新薬メーカーの研究開発の利益を保護するとともに、ジェネリック医薬品の市場競争を促進するために、医薬品のパテントリンケージ制度によって設計されたバランスのとれた仕組みである。したがって、特許情報を開示できる新薬の範囲を、薬事法第7条に規定されたものに限定する必要はない。不必要な登録の対象の制限は、特許情報の透明性を損なうだけで、上記バランスのとれた仕組みの実現に何も寄与しないばかりか、特許権をめぐる紛争をさらに誘発し、販売中のジェネリック医薬品が侵害問題で販売停止となるリスクすらあり、ひいては患者の薬服用の権利に影響を及ぼすことになりかねない。
 
三、パテントリンケージ制度は、特許情報の公開審査の仕組みがあり、主務官庁は特許情報の審査・管理に介入する権限はない。もし、主務官庁が一方的に特許情報を削除できるとしたら、パテントリンケージ制度における市場競争の均衡を図るための仕組みや設計が完全に損なわれることになる
 
薬事法第48条の3、第48条の41項に基づき公示された特許情報が実際の情報と一致しない場合、公示の正しい状態を回復させるため、薬事法第48条の6では、新薬医薬品許可証の所持者は、特定の事情変更事項について、一定期間内に登録済みの特許情報を変更又は削除する義務を負うことが新設されている。同法第48条の7では、特許情報の公開審査の仕組みが設けられており、何人も書面で理由を述べるとともに証拠を添付して主務官庁に通知し、主務官庁はこれを新薬医薬品許可証の所持者に転送して回答を求め、新薬医薬品許可証の所持者に特許情報の変更又は削除するよう命じる旨規定されている。以上のことから、主務官庁が特許情報の審査・管理に介入する余地はないことが分かる。特許情報の開示に不実がある場合、主に公開審査を通じて一定の法律効果を生じさせるが、その効果には、主務官庁の自発的な職権による「削除処分」の効果は含まれていない。「削除処分」とは、新薬メーカーが医薬品のパテントリンケージプラットフォームで特許情報を開示することによって生じる法律効果を、直接「取消す」又は「発生させない」ことを指す。したがって、当該処分は、間違いなく、新薬メーカーとジェネリック医薬品メーカーの特許権をめぐる紛争に、医薬主務官庁の行政権力を早急に介入させるものであり、このような介入では、新薬メーカーは完全な特許保護を受けられない可能性があり、ジェネリック医薬品メーカーが一定の独占販売期間を付与されるために特許に挑戦したり回避したりする機会も奪っていることが明らかである。この処分は、医薬品のパテントリンケージ制度における新薬の特許情報の透明な開示を通じて、ジェネリック医薬品の市場競争の均衡を図ることを目的とした仕組みや設計を完全に損なうものである。
 

上記判決は、弊所が代理した2社の新薬メーカーの勝利となるだけでなく、台湾で2新薬を販売するすべての新薬メーカーの権利や利益にも大きな影響を与えることになるだろう。2新薬のパテントリンケージ登録システムへの特許情報登録のご要望があれば、遠慮なく弊所にご連絡いただきたい。 

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