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「不動産権利の均等化に関する法律」(原文:平均地權條例)を受けて5つの規則草案が内政部により予告される
「不動産権利の均等化に関する法律」(原文:平均地權條例)を受けて5つの規則草案が内政部により予告される
今年(2023年)、「不動産権利の均等化に関する法律」(原文:平均地權條例。以下、「本法」といいます)の一部改正条文が公布・施行されました。これを受けて、行政院内政部(日本の国土交通省に相当)は4月25日に以下の新たな5つの規則草案を予告しました。
- 「私法人による住宅に使用する家屋の購入に関する許可弁法」(原文:私法人買受供住宅使用之房屋許可辦法。以下、「許可規則」といいます)
- 「不動産権利の均等化に関する法律第79条の1第1項に基づき内政部により公告された私法人の許可が免除される場合」(原文:內政部依平均地權條例第七十九條之一第一項公告私法人免經許可情形。以下、「許可免除規則」といいます)
- 「青田売り又は新築物件の売買契約の譲渡及び転売に関する審査弁法」(原文:預售屋及新建成屋買賣契約讓與或轉售審核辦法。以下、「審査規則」といいます)
- 「青田売り又は新築物件の売買契約を譲渡又は転売できる場合」(原文:預售屋及新建成屋買賣契約得讓與或轉售情形。以下、「譲渡可能な場合に関する規則」といいます)
- 「不動産販売売買及び情報登録申告案件の摘発奨励及び過料の拠出運用に関する弁法」(原文:不動產銷售買賣與申報登錄資訊案件檢舉獎勵及罰鍰提撥運用辦法。以下、「摘発規則」といいます)
これら規則草案の概要について、以下、ご説明します。
1. 私法人の住宅購入許可制度に関連する措置
私法人は原則として居住のニーズがないことに鑑み、住宅が私法人による投機的売買の対象となることのないよう、本法第79条の1では、私法人の住宅購入に対して、申請許可制度を新設し、住宅市場が合理的に調整されるようにしました。
これについて、許可規則では、本法にいう「住宅として使用する家屋」は、登記に記載された主要な用途に「住」又は「住宅」の文字がある建売、新築及び青田売り物件に限られると規定しています。ただし、私法人の経営に影響が及ぶことを避けるため、主要な用途が「住商用」、「住工用」等混合用途である、主要用途がない又は用途が空白の建物は、これに含まれません。
更に許可規則では、私法人による住宅購入について、その申請用途は以下の各号のいずれかに限られ、また単一用途に限ると規定しています。
(1) 宿舎。ただし、購入宿舎の累計戸数は、経常的雇用従業員数を超えてはならない。
(2) 居住に使用する賃貸経営。ただし、建売物件に限る。このほか、私法人の営業項目には、不動産賃貸業を含み、かつ購入戸数は取得済みの戸数と併せて、同一使用許可(検査済証に類似)において5戸以上に達しなければならない。
(3) 共同建設、都市再開発の実施又は参加、危険及び老朽化に伴う再建であり、かつ建売物件に限り、法に定める各号のいずれかに該当しなければならない(例:築年数30年以上等)(許可規則第6条)。ただし、建物が法定迅速画定再開発地区の範囲内に位置する場合は、急迫性を有するため、この限りでない。
(4) 建築物の使用類型及び使用変更規則(原文:建築物使用類組及變更使用辦法)第2条附表二のH-1及びH-2類型の衛生福祉機構場所(例:老人福祉機構、心身障害福祉機構、長期介護サービス機構等)。
(5) 共同組合が公用設備としての住宅を設置する場合。
(6) その他、中央所轄官庁により公告された場合。
内政部は許可免除規則において、許可が免除される例外的場合を規定しました。それには以下が含まれますが、これらに限りません。
(1) 私法人と土地所有権者が合同建設契約を締結し、土地所有権者の住宅を購入する場合。
(2) 私法人が金融持株会社、銀行再投資の資産管理会社、又は銀行が合弁かつ全額再投資により設立した資産管理会社であり、かつ購入する住宅が不良債権の担保品である、又は各級政府機関の公開入札の対象物である場合。又は、
(3) 私法人が法により優先買取権を行使した(例:土地法第34条の1第4項に規定の共有者間の優先買取権)、又は裁判所の競売に参加したことにより、住宅を購入する場合。
内政部の許可を得た場合、許可文書の有効期限は原則として1年となります。ただし、購入対象が青田売り又は新築物件である場合、有効期限は所有権の保存登記を行った日から1年となります。私法人は有効期限内に許可文書を持参し、地方政府機関で所有権移転登記を行わなければならず、期限を過ぎた場合、移転登記を行うことはできません。
2. 青田売り又は新築物件の売買契約の譲渡・転売に関する対処規制
青田売り又は新築物件の買主は契約の譲渡・転売により利益をむさぼる可能性があり、それにより不動産価格相場が高騰し、不当な影響が及ぶおそれがあることに鑑み、本法では、青田売り又は新築物件の売買契約は譲渡及び転売できないことを原則としています。ただし、例外として、以下の場合には、申請により許可を得て、譲渡又は転売できると規定しています。
(1) 買主に重大な事件・事故が生じた場合。例えば、以下が挙げられる。
(a) 買主が法定の会社都合退職に該当し、かつ6か月を超えて就労していない場合。
(b) 買主又はその家族が重大な疾病に罹患し又は重大な不慮の事故により負傷し、国民健康保険法にいう重大傷病又は社会救助法に所定の特定病症に合致し、医療機関の専門医師により、6か月以上の全日看護が必要であると診断された場合。
(c) 買主がもともと住民票を登録し、居住していた家屋(当該家屋は買主又はその家族が所有していなければならない)が、災害により毀損し、居住として使用できなくなり、別途家屋を賃借する必要がある場合。
(2) 買主が死亡し、相続人に保留する意向がない場合。
(3) 共同買主間での転売又は譲渡。ただし、法人が株主との共同名義で青田売り又は新築物件を購入し、更に契約を譲渡又は転売する方法で、関連法令違反を避けることを防ぐため、法人には適用されない。
審査規則では更に上述の例外申請の手続きについて規定しています。また、買主が審査規則に基づき譲渡又は転売の許可を得られる戸(棟)数は、全国で2年ごとに1物件に限られ、かつ、一部についての譲渡又は転売は、1物件の譲渡又は転売とみなすと規定しています。つまり、買主は2年ごとに1度しか許可を申請するチャンスがないことになります。
3. 違法摘発賞金制度について
不動産取引の合法性を高めるため、本法では違法摘発制度が新設されましたが、これに基づき内政部でも摘発規則を設け、摘発賞金の適用範囲、給付対象、手続き、取消し及び過料拠出適用範囲等について規定しました。摘発規則では、不実の摘発を防止するため、原則として摘発の実名制を採用し、かつ具体的証拠を備える必要があると規定しています。
前述の5つの規則の予告期間は2023年5月15日までとなっており、施行日は行政院により別途定められます。
当事務所の「不動産及び建設プラクティス・グループ」では、不動産及び建設に関連するリーガルサービスに精通しており、不動産及び建設業務に関する新法の動向を引き続き注視しております。不動産業者及び投資者の方におかれまして、本法の新規則についての更なるご質問、又は新規則が施行された後、関連申請を行う必要がある場合、いつでも当事務所の朱百強弁護士(marrosju@leeandli.com)、林莉慈弁護士(litzulin@leeandli.com)までお問い合わせ頂ければ幸いです。