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「気候変動対応法」の改正について



 「気候変動対応法」の改正について

 
世界各国で気候変動のテーマに対する注目度が高まっていることを踏まえ、台湾行政院(内閣に相当)は20224月に「温室効果ガス削減及び管理法(原文:溫室氣體減量及管理法。)(以下、「温室効果ガス管理法」といいます。)」の改正案を可決し、名称を「気候変動対応法(原文:氣候變遷因應法)」へ修正しました。そして、今年の110日に立法院(国会に相当)にて改正法が可決され、同年215日に公告、のちに施行されました。
 
今回の改正のポイントについて以下のとおりご説明します。
 
一、      2050年ネットゼロ計画を改正法で導入
温室効果ガス管理法第4条では、我が国の温室効果ガスの長期削減目標について、2050年までに温室効果ガス排出量を2005年比で50%以下に削減すると定めていました。今回、気候変動対応法では、更に進んで、上記目標が「ネットゼロ(原文:淨零排放)」へと修正されました。
「ネットゼロ」の定義については、以下の規定を参照できます。
気候変動対応法第3条第10号:ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量と二酸化炭素吸収量とが均衡状態に達することをいう。
同条第9号:二酸化炭素吸収源とは、二酸化炭素又はその他温室効果ガスを排出源又は大気中から取り除き続け、その後吸収又は貯蔵する樹木、森林、土壌、海洋、地層、施設又は場所をいう。
つまり、「2050年ネットゼロ」の目標において、将来、気候変動対応法に規定された温室効果ガス除去量を満たすには、「二酸化炭素吸収源」によって温室効果ガスを取り除く方法しかないといえます。
 
二、      国内の排出源に対する「炭素費」の徴収開始
気候変動対応法では新たに「炭素費」に関して規定されました。第28条第1項では、中央所轄官庁行政院環境保護署は段階に分けて直接又は間接に温室効果ガスを排出している排出源に対して炭素費を徴収できると規定しています。
また、同条第2項では、電力使用者の間接的な温室効果ガスの排出削減を促すため、電力事業者は電力消費による排出量についての証明文書を提出すれば、その直接排出量から、電力消費による排出量を控除することができると規定しています。この部分の排出量は、電力消費側の間接排出源の計算に含めるべきです。
 
三、      輸入製品に対する炭素国境調整措置の実施
気候変動対応法第31条では、カーボン・リケージ(炭素の漏れ)を防ぐため、事業者は中央所轄官庁により公告された製品を輸入する場合、中央所轄官庁に対して製品の炭素排出量を申告しなければならず、また中央所轄官庁により査定された炭素排出差額に応じて、中央所管官庁が指定したプラットフォームにて削減額を取得できると規定しています。
ただし、輸出国にて排出量取引、炭素税又は炭素費の納付が実施されており、かつ輸出時に還付を行っていない場合、関連証明文書を添付し、中央所轄官庁に対して取得すべき削減額の減免を承認するよう申請することができます。
 
四、      温室効果ガス削減額の用途の更なる多元化
事業者又は各級政府は、カーボンオフセットプロジェクト、温室効果ガス削減先行プロジェクト又は気候変動対応法第25条第1項に規定する自主的削減プロジェクトを執行して取得した削減額について、同条第3項の規定により移転、取引又は競売を行うことができます。そのほか、気候変動対応法第26条の規定により、同法第24条第1項の温室効果ガス増量分のオフセット、第28条第1項に定める炭素費の納付基準として計算すべき直接又は間接排出量の控除、第31条により炭素国境調整措置を実施後の外国商品輸入の炭素排出差額の控除、又は第36条第2項の排出上限の超過量との相殺も行うことができます。
このほか、事業者が国外の削減額を取得し、中央所轄官庁により認可された場合、第28条第1項に定める炭素費の納付基準として計算すべき直接又は間接放出量の控除、又は第36条第2項の排出上限の超過量との相殺に用いることができます。
 
上記の気候変動対応法改正のポイントに基づき、以下の点にご留意ください。
一、      事業者は温室効果ガス排出量測定(Carbon Footprint Verification)を行い、温室効果ガス排出の記録文書を体系的に保存しておく。
事業者はまず運営行為により生じる温室効果ガスの排出量を把握することで、更に進んで排出削減に関する後続作業を行うことが可能となります。生産に関連する直接排出(Scope I)、エネルギー使用に関連する間接排出(Scope II)について、後日測定作業が行いやすいように、文書を体系的に保存しておくことが推奨されます。
 
二、      カーボンオフセットプロジェクト、温室効果ガス先行プロジェクト又は自主的削減プロジェクトの執行可能性について評価しておく。
気候変動対応法の施行に伴い生じる潜在的コスト(炭素費など)に備えるため、事業者はカーボンオフセットプロジェクト、温室効果ガス先行削減プロジェクト又は自主的削減プロジェクトの執行可能性について評価しておくことで、運営コストの増加による影響を抑えることが考えられます。
 
当事務所では、気候変動、温室効果ガス排出削減等のテーマを注視し、尽力してまいりました。当所は「社団法人台湾ネットゼロ協会」の特級会員であり、所内の多くの弁護士が「台湾持続可能エネルギー研究基金会」の訓練を受け「企業サステナビリティマネージャー」の資格を取得しております。2022年には、弁護士をして「中華コーポレートガバナンス協会」にて「ネットゼロ、カーボン・ニュートラル及びコーポレートリーガルコンプライアンス("Net Zero", "Carbon neutrality", and Corporate Legal Compliance)」カリキュラムを開設しました。現在までに10数社の国内上場・店頭販売企業グループの依頼を受けて、取締役・監査役向けの特別プログラムの講義や実務交流を行ってきました。
 
気候変動対応法の施行後の新たなビジネスチャンス、派生的テーマ、又は温室効果ガス削減計画及び執行について、ご不明点やご質問等ございましたら、いつでも当事務所の朱百強弁護士(marrosju@leeandli.com)、林莉慈弁護士(litzulin@leeandli.com)までお問い合わせ頂ければ幸いです。
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