ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

最高行政裁判所判決-「Boy London」商標が公衆にその商品又は役務の産地について誤認誤信させるおそれがあるとして登録不可



得恩堂眼鏡株式会社Grace Optical Co.Ltd.、以下「得恩堂社」というは、係争商標「Boy London出願番号第107011874について、智慧財産局台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)に対し、第9類「光学レンズ、眼鏡フレーム、サングラス」などの商品、第35類「眼鏡の小売又は卸売」役務、第37類「時計、眼鏡の修理サービス」役務、及び第44類「眼鏡の検眼、眼鏡作製」役務への使用を指定して登録出願した。同局が審査した結果、係争商標は、公衆にその商品又は役務の産地について誤認・誤信させるおそれがあり、商標法第30条第1項第8号に違反するとして、拒絶をすべき旨の処分を下した。
 
智慧局の認定は、以下の通りである。得恩堂社は、係争商標の英文「Boy London」自体は「ロンドンボーイ」を意味し、それ全体がロンドンの地理的意味から逸脱いるため、一般消費者にその表彰する商品の品質、性質又は産地について誤認・誤信を生じさせるおそれはないはずであり、識別性を有すると主張した。しかし、知的財産裁判所は、99年(西暦2010年)度行商訴字第123号判決において、商標が出願人によって使用され、かつ取引においてその商品又は役務を識別する標識となっている場合、その先天的識別性の欠如の状況は除外できても、商標が公衆にその商品又は役務の性質、品質又は産地について誤認・誤信させるおそれがある場合、登録を受けることができないとの規定の適用は除外できないとされている。また、性質、品質又は産地を誤認・誤信させるおそれがあるかどうかの判断について、最高行政裁判所は、99年(西暦2010年)度判字第1324号判決において、商標法第30条第1項第8号の適用については、商標自体の図案・文字全体による外観、観念又は称呼などを観察し、商標が消費者に与える印象、商標の指定商品又は指定役務との関連性、指定商品又は指定役務の取引の実情を考慮して、指定商品又は指定役務の消費者の認識、感知を基準とし、商標の構成から、消費者が認識する商品の産地、販売地又は役務の提供地が、実際の使用上においてその認識する性質、品質又は産地などと異なり、消費者に誤認・誤信させるおそれがあるかどうかを直接的かつ客観的に判断すべきであるとされている。
 
得恩堂社はこれを不服として経済部(日本の経済産業省に相当)訴願委員会へ訴願を提起したが、これも棄却された。その後、法により、知的財産裁判所(現在は「知的財産及び商業裁判所」と改称)に行政訴訟を提起した。同裁判所は2019919日付の108年(西暦2019年)度行商訴字第31号判決において以下のように判示した。係争商標「Boy London」は、「London」という1つの単語ではなく、「Boy London」という2つの英単語からなり、一般の人が商標を認識する習性に基づき、音素文字による外国語に対して頭文字を重視するため、係争商標が消費者に印象を与える顕著な部分は「London」ではなく「Boy」である。関連消費者は、係争商標を「London」や「Boy」に分割されたものではなく、全体として熟知していることから、係争商標の図案を直接的から客観的に判断しても、関連消費者にそれが「Boy from London」や「London」と同一又は類似するとの誤認を生じさせることはない。
 
また、得恩堂社は、係争商標を長年使用しており、20年以上にわたって広く販売するとともに、台湾の主要なメディアにも広告を掲載し、眼鏡の販売量は極めて高く、関連する消費者は、いずれも係争商標「Boy London」が得恩堂社の生産している商品及び提供している役務に使用されている商標であることを認識している。したがって、係争商標の名称は、商品の機能、用途及び品質と無関係であり、一般公衆に知られている普通名詞でもない。また、係争商標は、その原料や産地が英国やロンドンに由来するという特性を直接的かつ明確に描写しているものではないため、公衆に商品又は役務が英国に由来するものであると誤認させるには至らないとし、得恩堂社勝訴の判決を下した。
 
その後、智慧局はこれを不服として最高行政裁判所に上告し、同裁判所は2022818日付で108年(西暦2019年)上字第1074号判決を下した。その見解の一部は以下のとおりである。
 
係争商標「Boy London」の商標登録出願を拒絶した智慧局の原処分に誤りはない。その理由は以下のとおり。係争商標における「London」は、台湾人にとって広く知られた英国の首都の名称であり、当該文字は係争商標とロンドンという都市との関連性を強烈に示すことができる。また、係争商標「Boy London」において、消費者の注意は「London」に容易に引きつけられる。係争商標の使用区分が指定されているため、老若男女問わずいずれもがその役務を受ける消費者となりうるものである。したがって、「Boy」は、単なる特殊な意義を持たない普通名詞であり、見過ごされやすく、すなわち、係争商標の指定商品又は指定役務は、消費者にロンドンに由来し又はロンドンに関連する商品又は役務であるという錯覚をもたらすもので、これを商標として使用すると、客観的に、消費者に係争商標の指定商品又は指定役務の品質、性質又は産地について誤認・誤信を生じさせるおそれがあるはずである。
 
また、商標が出願人によって使用され、かつ取引においてその商品又は役務を識別する標識となっている場合、その先天的識別性の欠如の状況は除外できても、商標が公衆にその商品又は役務の性質、品質又は産地について誤認・誤信させるおそれがある場合、登録を受けることができない(商標法第30条第1項第8号)とする規定の適用は除外できない。原判決は、商標法における上記規定の要件の判断において、出願人は、係争商標が取引において商品又は役務を識別する標識となり、他人の商品又は役務と区別できることを証明するための使用証拠を提出すれば、当該条文の適用を除外することができると認めたが、上記の説明によれば、これが適切ではないことから、原判決を破棄し、得恩堂社敗訴の判決を下した。
 
これに対し、第三者である英国企業聯盟会社(Anglofranchise Limited)は、台湾において、「BOY LONDON」商標を第25類「服飾、Tシャツ、ブーツ、靴、帽子」などの商品、第18類「スーツケース、財布、ランドセル、ハンドバッグ、皮バッグ」などの商品、第35類「広告、企業管理と組織コンサルティング、輸出入事務の代理又は代行サービス、他人への商品の販売促進の実行サービス、他人への販促活動の提供」などの役務において出願し、またその他いくつかの商標を出願しているが、当該商標出願人は英国企業であるため、上記条文は適用されず、智慧局から登録査定を受けた。
 
以上のことから、商標の文字組合せの中に地理的名称が含まれ、出願人が当該地に由来するものでなく、かつ、商標とその指定商品・役務との間に「名実相伴わない」状況があり、消費者に商標と指定商品に対し誤った連想を生じさせ、その商品の性質、品質又は産地について誤信させる可能性がある場合、商標登録することはできないことが分かる。
回上一頁