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ネットショップで商品画像を他人に使用された場合の損害賠償請求について



「撮影著作物」は著作権法第5条に明確に規定されている著作物の一種で、写真、スライド及びその他の撮影の手段により創作されたものを指す。
 
電子商取引の普及に伴い、ネット販売業者が、著作者(他の販売業者である場合もある)の許諾を得ずに、著作者が撮影した商品画像や動画を自らのネットショップに販売目的で使用し、著作者の撮影著作権を侵害するケースは多発している。これらのケースの多くは、著作権者がその撮影著作物を業として販売しているものではなく、その商品の画像又は動画を撮影する目的は、その商品のマーケティングや販売にあるのである。したがって、その撮影著作権の侵害によって被った損害額をどのように立証すべきかについては疑問が生じる。
 
上記の懸念について、台湾新北地方裁判所は、2022616日付けの111年度智簡上附民字第1号判決において、撮影著作権侵害による損害額をどのように立証すべきかについて見解を示している。本件は、ネット販売業者(被告)が、有名なエッセンシャルオイル入りのリラックスシートメーカー(原告)の商品を販売するため、原告の同意や許諾なしに、コンピュータを利用してインターネットから原告が著作財産権を有する撮影著作物をダウンロードし、オークションプラットフォーム上に当該撮影著作物を侵害する画像をアップロードしたというものである。そこで、原告は、被告に対し、以下の損害賠償を請求した。
 
1.当該撮影著作物の撮影に要したスタジオ、カメラ、照明などのハードウエア設備、ストックフォト素材の費用、それに撮影・制作時に支払われた企画・編集スタッフなどの人件費。
2.原告の営業上の損失(本件エッセンシャルオイル入りのリラックスシート商品の販売に係る著作権者と被告の価格差に、被告の販売数量を乗じて算出したもの)。
3.原告責任者が訴訟により負担した交通費と出勤費。
4.原告の著作人格権への侵害による損害。
 
台湾新北地方裁判所は、被告の行為が原告の撮影著作物の侵害に当たることを認めたものの、以下の理由により、原告の損害賠償請求を棄却した。
 
1.当該撮影著作物の撮影、制作に要した設備費用及び人件費は、被告の侵害行為により発生したものではなく、両者の間に因果関係はない。
2.消費者は、商品画像の美しさに惹かれて商品を購入するかどうかを決めたわけではないため、被告の本件撮影著作物の侵害的使用によってその販売量が増加したとは認めがたく、そのような営業上の損失に対する原告の損害賠償請求は正当でない。
3.原告責任者が訴訟により負担した交通費と出勤費は、本件被告の不法行為に直接起因する損害ではない。
4.原告は法人であり、その著作人格権が侵害されたとしても、精神的苦痛は伴わないので、非財産的損害に対する損害賠償を請求することはできない。
 
台湾新北地方裁判所はさらに以下のような見解を示した。被害者が実際の損害額を証明することが困難な場合、著作権法第88条第3項に基づき、侵害の情状を酌量して賠償額を決めるよう裁判所に請求することができる。しかし、原告は、裁判所に対して情状を酌量して賠償額を決めるよう請求しておらず、その旨の陳述もなかったことから、当然ながら、裁判所は、この規定に基づいて、原告の損害額を酌量して決めることはできない。
  
実務上、著作物の完成に要した費用からその価値や損害を推し量ることは一般的である。しかし、裁判所は、本件判決において撮影著作物の制作費は侵害と因果関係がないとして原告の請求を棄却した。これが最近の裁判所の共同見解であるのかは、今後注目に値するものである。
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