ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

「メタバース」関連の意匠登録出願に関する智慧局の見解


Andy Hsieh

「メタバース(Metaverse)」技術の開発・応用が徐々に成熟するにつれ、それに関連する特許や意匠を専利権(専利:特許、実用新案、意匠を含む)で保護する方法をめぐる議論が活発化している。2022614日に、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)が発表した「メタバースと意匠権との関係」とする論文は、「メタバース」産業がその創作物について専利ポートフォリオを展開する際の参考とすることができる。その概要は以下のとおりである。

 
(1)     メタバース関連の意匠は意匠権の保護対象となるか
 
メタバースを構成する要素には、「ハードウエアデバイス」(例えばVRゴーグル)及び「仮想デジタルデザイン」(VRゴーグルを通して表現される映像)がある。仮想映像デザインについては、2011年の台湾専利法改正で、「画像意匠」が意匠権の保護対象として導入された。また、2020年の専利審査基準の改訂により、画像意匠が応用される物品が「コンピュータプログラム製品」にまで拡大されることとなった。
 
現行台湾専利法及び実務によると、メタバースのクリエイターは、メタバースの「仮想映像」のデザイン及び当該仮想映像に特化した「ハードウエアデバイス」の外観についてそれぞれ意匠登録出願をすることができる。
 
(2)     メタバースに係る意匠登録出願と審査
 
メタバースの「仮想映像」は、通常、「仮想空間」、「仮想物品」又は「ヒューマンマシンインターフェース」を含み、その中の「仮想空間」のデザインはインテリアデザインの意匠図面の描き方に従って表現でき、「仮想物品」は物品に係る意匠の図面の描き方に従って表現でき、「ヒューマンマシンインターフェース」は、画像意匠のグラフィカルユーザインターフェースの描き方に従って表現できる。
 
なお、メタバースの「仮想空間」及び「仮想物品」のデザインは、やはり仮想映像デザインの範疇に属するものであることから、出願人は意匠が応用される物品について、実体の物品を指定するのではなく、「コンピュータプログラム製品」を指定する必要がある点に注意が必要である。
 
メタバース意匠の審査規定は、専利法及び審査基準において詳細に定められている。注意すべきは、「仮想映像」デザインの創作性(創作非容易性)の審査において、出願人は、智慧局が有体物の世界における同一の又は類似する物品の外観を開示した文献を従来技芸として引用し、出願した「コンピュータプログラム製品」の「仮想映像」デザインが有体物の外観の転用であるとして、「仮想映像」の創作性を否定する状況に直面する可能性がある。
 
(3)     メタバース意匠権の効力
 
意匠権侵害の成立要件として、被疑侵害対象の物品が係争意匠を施した物品と同一又は類似であること、被疑侵害対象の外観が意匠権の外観と同一又は類似であること、を満たす必要がある。2016年版「専利権侵害の判断要点」によれば、物品及び外観の同一又は類似の判断主体はいずれも「一般消費者」であり、これは意匠権の新規性の判断主体と同じである。
 
有体物とコンピュータプログラム製品は同一でも類似でもないため、有体物の意匠は同一又は類似の意匠を施した「コンピュータプログラム製品」の意匠登録出願の新規性を否定するための適格な従来技芸とはならない。同様に、出願人が「有体物」の外観について意匠登録を出願した場合、その登録査定後の意匠権の効力は、当該「有体物」と同一又は類似の外観を有する「コンピュータプログラム製品」にまで及ぶことはない。
 
以上より、他人が当該「有体物」と同一又は類似の意匠を「コンピュータプログラム製品」に転用することを避けたい場合、出願人は別途、同一の意匠を「コンピュータプログラム製品」に応用される「画像意匠」として意匠登録を出願し、より完全な保護を得ることをお勧めする。
 
(4)     メタバース関連意匠のポートフォリオに関する提案  
 
メタバースと画像意匠の急速な発展に伴い、有体物の外観のデザインに関しては、自分の意匠が第三者の物品に施されたことを防ぐために有体物の外観について意匠登録を出願するだけでなく、「仮想画像」(例えば、NFT, Non-Fungible Token:非代替性トークン)を制作又は販売する関連業者がその意匠創作を剽窃するリスクについても考慮しなければならない。よって、意匠のクリエイターは、有体物について意匠登録を出願する場合、「有体物」のデザインと「仮想的な」デザインの両方について意匠権による保護を受けるため、同一意匠について同時に「コンピュータプログラム製品」に応用される「画像意匠」の意匠登録出願も検討するに値する。
回上一頁