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商標権侵害の排除及び防止の請求は仮執行宣言の対象となるのか


Audrey Liao/Eleanor Chuang

一、仮執行制度
 
「仮執行」とは、暫定的に執行することを意味する。具体的には、裁判所が、財産権上の訴えにおいて、債権者の利益を保護するために、判決が確定する前に、確定した場合と同等の執行力を付与するものである。すなわち、債権者は、敗訴した債務者が控訴することによって執行を遅延させることを防ぐために、未確定の判決に基づき裁判所に強制執行を申し立てることができることである。
 
民事訴訟法第390条により、「財産権上の訴えにおいて、原告が、判決の確定前にその執行をしない場合に弁済又は算定が困難な損害を被るおそれがある旨を疎明したときは、裁判所は、その申立てにより、仮執行宣言を付さなければならない。原告が、執行前に担保の供託による仮執行宣言の申立てをする旨を声明したときは、前項の疎明がなくても、裁判所は、相応の担保額を定め、その担保が供託された後に仮執行をすることができる旨を宣言しなければならない。」と規定している。したがって、財産権上の訴えにおいて、執行前に原告が担保供託による「仮執行」宣言の申立てをする旨を声明したときは、判決の確定前にその執行をしない場合に弁済又は算定が困難な損害を被るおそれがあるという原告の疎明がなくても、裁判所は相応の担保額を定め、その担保が供託された後に仮執行をすることができる旨を宣言しなければならない。
 
「仮執行」は、債権者が早期にその債権を実現できるように、勝訴判決が確定する前に裁判所に強制執行を申し立てることができるものであり、また、債権者は、担保供託による「仮執行」宣言の申立てをする旨を声明すれば、それ以上の疎明や立証がなくても、裁判所は「仮執行」宣言を付することができるため、仮執行制度は、実務において債権者に広く利用されている。
 
二、商標権侵害事件における「仮執行」の申立てに対する裁判所の判断について
 
(一)商標権侵害事件において、会社名による商標権侵害を例にとると、原告請求の趣旨は通常以下のとおりである(詳細は個々の事案の事実関係により異なる)。
 
1、被告は、原告商標と同一又は類似の文字をその会社名の主要部分として使用してはならず、原告商標と同一又は類似の文字を含まない名称への社名変更登記を行わなければならない。
 
2、被告は、原告商標と同一又は類似の文字を含む販促物を使用してはならず、原告商標と同一又は類似の文字を含む販促物を除去・廃棄しなければならない。
 
3、被告は、判決書における事件番号、当事者、請求原因及び主文を新聞に掲載すること。
 
4、被告は、原告に対し、損害賠償を支払うこと。
 
(二)上記請求のうち、営業上の名誉や信用が害されたとしてその回復のために判決関連内容などの掲載を被告に請求することは非財産権上の訴えであるが、原告商標と同一又は類似の文字を会社名の主要部分や販促物に使用してはならないとの請求については、実務上、この部分は侵害の排除及び防止のために商標権を侵害する者に請求するものであって、経済的利益という観点からは、財産的価値を有するものとして財産権上の訴えであることは明らかであるという見解を示している。したがって、原告商標と同一又は類似の文字を会社名の主要部分及び販促物に使用してはならないとの請求に対し、原告は法により「仮執行」宣言の申立てをすることができる。
 
(三)知的財産商業裁判所がこれまでに下した判決では、このような財産権上の訴えにおいて、原告が担保の供託による「仮執行」宣言の申立てをする旨を声明した場合、裁判所は、判決主文において、「仮執行」宣言を付することができると認められていた。しかし、最近、知的財産商業裁判所では、商標権侵害事件における原告の侵害排除・防止の請求が認められるが、それに対する「仮執行」の申立てが却下される判決が相次いでいる。
 
(四)今年(2022年)年初に下された知的財産商業裁判所の110年(西暦2021年)度民商訴字第46号民事判決を例にすると、原告請求の趣旨には、会社名の主要部分における原告商標と同一又は類似の文字の使用禁止、販促物における原告商標と同一又は類似の文字の使用禁止、及び損害賠償請求が含まれている。判決主文では、原告の上記3つの請求が認められたが、原告による「仮執行」の申立ての部分については、同裁判所は損害賠償の請求についての「仮執行」のみを認め、侵害の排除及び防止の請求については、「仮執行の宣言としては性質上不適当」として当該部分の「仮執行」の申立てを却下した。
 
三、結論
 
「仮執行」制度は、債権者が未確定の勝訴判決に基づき裁判所に強制執行を申し立て、敗訴した債務者が控訴することによって執行を遅延させることを防ぐためのものである。民事訴訟法第390条第2項の規定によると、原告は執行前に担保の供託による「仮執行」宣告の申立てをする旨を声明したときは、裁判所は相応の担保額を定め、その担保が供託された後に「仮執行」をすることができる旨の宣言をしなければならないとされているが、法条文ではその他の条件は制限されていない。しかし、商標権侵害の場合、知的財産商業裁判所は最近、見解を変更し、侵害の排除及び防止の請求は判決確定後にのみ執行可能であるとする傾向にあり、つまり、原告が第一審又は第二審の勝訴判決を得た後は、「仮執行」制度を利用して、担保供託後に、裁判所の強制力により、被告にその会社名の変更や侵害する販促物の除去・廃棄させたり、又は被告が判決確定前に権利侵害行為を継続することを禁止することができなくなるのである。
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