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「著名表徴の侵害」に関する最高裁判所の見解



 現在、台湾の法制度では、トレードドレスや表徴は、主に意匠権、商標権、著作権等によって保護されている。しかし、当該外観や表徴が意匠権、商標権又は著作権の要件を満たさない場合、台湾の法制度では、現在のところ、公平交易法(日本の「不正競争防止法」及び「独占禁止法」に相当)第22条によって補充的保護を行っている。つまり「同一又は類似の役務又は商品」において「商標登録していない」「著名」な表徴を使用し、混同を生じさせた場合、権利者は法により民事賠償を提起することができるとされている。しかし、どのような商品の外観が「著名表徴」と判断されるのであろうか。また、「他人の商品と混同させる」か否かは、どのように判断すべきなのであろうか。これらの問題について、最高裁判所による2022216日付の110年度台上字第3161号判決(その控訴審判決は知的財産裁判所による109年度民公上字第3号判決)は、知的財産及び商業裁判所による20211223日付の110年度民公上更(一)字第2号判決と食い違っているようである。

 

上記2件の原告は同一人で、スーツケースメーカーである。原告は、その傘下の同じブランドのスーツケースは、長年にわたり「「リブ加工のデザイン」(スーツケースの表面に施する凹凸加工のこと、以下「リブデザイン」という)を商品の表徴として使用しており、この表徴は商品の出所を識別するものとして関連業者や消費者によく知られているが、上記2件の被告は同一人ではないが、いずれも当該「リブデザイン」と同一又は非常に類似したデザインを採用し、消費者に誤認・混同を引き起こしたと主張した。類似の侵害事実関係について、知的財産及び商業裁判所は109年度公上字第3号判決と110年度民公上更(一)字第2号判決で類似の判断を下した。つまり、当該「リブデザイン」は出所を識別する機能を有するため、原告の「リブデザイン」は著名表徴であると認定した。また、消費者がスーツケースを選択・購入する際に、その受けた「外観全体の印象」はいずれも「リブデザイン」という視覚的インパクトであることから、被告と原告との商品表徴の間に何か加盟、関連又はスポンサー関係があると誤認混同させる可能性が非常に高いと考えられる。したがって、同裁判所は、被告らの商品外観は、原告の著名表徴を侵害すると認めた。

 

しかし、最高裁判所は、110年度台上字第3161号判決で異なる見解を示した。最高裁はまず、「表徴」とは、識別力又は二次的意義を有し、商品の出所を表示し、関連する事業者や消費者が異なる商品を区別することができることをいう。ここでいう「識別力」とは、ある特徴が特に顕著で、関連する事業者又は消費者がそれを見ればすぐに当該商品が特定の事業者により製造生産されたものであると認識できるものを指し、「二次的意義」とは、本来、識別力を有しない特徴であったが、長期間にわたり継続して使用されている結果、消費者に知られるようになり、かつ、その特徴から商品の出所を連想させることができ、これにより、商品の出所を区別できるもう一つの意義が生じることを指す、と述べた。最高裁はまた、原告が自ら提出した係争表徴に関する市場調査報告書を引用し、一般消費者で「原告ブランドを知らない」と回答した者が50%、「原告・被告の商品の間に関連性を見いだせない」と回答した者が46.08%にも達しているとの調査結果から、当該リブデザインは消費者の意識に深く浸透しており、当該リブデザインだけですぐに原告が販売しているスーツケースと識別できると認めることができるか否かについては疑いの余地があるとした。

 

最高裁はまた、「他人の商品と混同させる」という要件について、現実に発生する必要はないが、やはりその事情により、一般消費者の平均的な注意力や記憶力に照らして、混同の具体的リスクが存在して初めてその要件を満たすことができ、そのリスクが単なる抽象的、想像的であればその要件を満たすことができないと述べた。また、混同の具体的リスクの有無は、商品表徴の著名性の高低若しくは識別力の強弱、表徴及び商品若しくは営業の類似度、顧客層の同質性、価格差、競業関係の有無などの事情を総合的に考慮して判断されるとした。最高裁は、裁判書類における事実や証拠を踏まえた上で、以下の問題点を挙げた。まず、被疑侵害品であるスーツケースの正面には別途、被告のブランドロゴが印刷されているため、消費者が購入時にそのロゴをもって商品の出所を識別するのに十分ではないか。次に、両商品の価格及び販売ルートはいずれも明らかに異なっていることから、両商品には価格差が明らかで、被疑侵害品であるスーツケースと外観上同一ではなく、消費者が通常の注意を払えばその違いを識別でき混同にいたらないとする控訴人の抗弁は、全く採用するができないか。これについても、さらなる検討が待たれる。それゆえ、最高裁は原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため知的財産及び商業裁判所に差し戻した。

 

「著名表徴」の定義や「他人の商品と混同させる」という要件については、最高裁と知的財産及び商業裁判所による法的見解に大きな違いはないが、実際に法律を適用すると、全く異なる結論が導き出されている。これは、著名表徴を侵害するケースが台湾の知的財産法の分野において尚も新しいためであり、今後も引き続き、実務上の具体的事例に留意する必要があると思われる。また、一部の商標又は著名表徴の権利者は、訴訟において、その著名性や誤認混同を示す証拠として、市場調査の結果を提出することもあるが、市場調査は、アンケートの設計、回答者の抽出、サンプリングの方法等によって結果が大きく異なる場合があり、例えば、本件のように最高裁が権利者が提出した市場調査報告を引用して権利者に不利な判断を下したため、権利者はやはり市場調査報告を提出する必要があるか否かについて慎重に検討したほうがよい。

 

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