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智慧局、「情報技術(IT)に関する特許審査事例集」を公表


Jason Chuang

 コンピュータソフトウエア発明の特許適格性の判断について業界では様々な検討が交わされてきた。その理由の1つは、規則が不明確であるので、判断が困難となったことである。その判断基準をより明確にするため、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、2021年に「特許審査基準」第二篇第12章コンピュータソフトウエア関連発明に係る基準(以下「コンピュータソフトウエア基準」という)を大幅に改訂し、その後改訂基準を施行した。また、日増しに増加する特許出願及び審査ニーズに応えるため、智慧局は情報技術(IT)の5大技術応用分野について、20事例(人工知能(AI7例、IoT3例、ブロックチェーン3例、クラウド応用3例及びビッグデータ4例を含む)をまとめた「情報技術に関する特許審査事例集」を作成し(https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-900870-d6891-1.html)(以下「事例集」という)、202216日に公表した。

 

2021年に施行されたコンピュータソフトウエア基準において、特許適格性の判断原則が上記「特許審査基準」第二篇第12章の第3節に明確に定められている。

 

上記の判断フローに基づいて、最初のステップは、発明の定義を「明らかに満たす」及び「明らかには満たさない」態様を大まかにスクリーニングするもので、明らかに満たすか否か不明の場合のみ、「コンピュータソフトウエアによる情報処理がハードウエアリソースを用いて具体的に実現されている」要件を満たすか否かの判断ステップに進む。「明らかに満たす」態様とは、簡単に言うと、機器に対する制御(例えば、洗濯機、エンジン、ハードディスクなどの制御)関連や物体の性質(物理、化学、生物学、電気など)に基づく情報処理の実行(例えば、心臓活動信号、エンジンの回転数や温度の数値に基づく情報処理など)に関わることである。「明らかには満たさない」態様には、自然法則を利用していないものと技術的思想でないものが含まれる。留意すべきは、請求項においてコンピュータ(CPU、プロセッサ)の利用に係るものが含まれる限り、判断上は一時的に自然法則を利用したものとして分類され、「明らかには満たさない」には該当しないことである。「コンピュータソフトウエアによる情報処理がハードウエアリソースを用いて具体的に実現されている」という要件の判断とは、コンピュータソフトウエアとハードウエアリソースの協働によって、情報処理の目的に応じた特定の情報処理装置又は方法を構築することを指す。

 

事例集の事例6では、ニューラルネットワークが例として挙げられ、その請求項1及び2の適格性について判断している。事例6の請求項1及び2はいずれも機器に対する制御を実行するものでもなく、制御に伴い処理するものでもない。また、請求項1及び2の情報処理は物体の技術的性質に基づく情報処理と定義されているものではないことから、いずれも発明の定義を「明らかに満たす」ものではない。さらに、請求項1及び2の対象はコンピュータ利用に関する「システム」の発明であり、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されることを示唆しているので、いずれも「明らかに満たさない」ものではない。最後に、「コンピュータソフトウエアによる情報処理がハードウエアリソースを用いて具体的に実現されている」との要件に基づき、事例6において請求項2のみが発明の定義を満たすと判断された。

 

事例集に収録された20事例では、発明の適格性の判断ステップに加え、明細書に基づき実現できるか否か、請求項に記載された特徴が技術的効果を有するか否か、請求項の明確性、進歩性の判断などの特許要件についても詳しく説明されている。コンピュータソフトウエア関連発明の出願人は事例集を活用することで、コンピュータソフトウエア関連発明の特許出願を容易にし、その品質向上も期待できる。

 

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