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知的財産権紛争をめぐる労働事件の管轄裁判所について



知的財産権をめぐる民事紛争(例えば、従業員が開発、創作した専利(特許、実用新案、意匠を含む)、商標、著作物が雇用主に帰属するか否かの紛争、又は従業員が会社の営業秘密を競合他社に漏洩した営業秘密侵害事件)では、当事者が雇用主と労働者に分かれていることがよく見られる。これらの知的財産権紛争に起因する第一審及び第二審の民事訴訟事件の管轄については、これまで、知的財産及び商事裁判所組織法(中国語「智慧財産及商業法院組織法」)第3条第1項の規定に基づいて、通常、知的財産及び商業裁判所(以下「知商裁判所」という)が優先するとされていた。 

202011日、労働事件法が本格施行され、経済的に弱い立場の労働者の権益を保障するため、また、労働者による裁判への出頭が便利となるよう、労働事件法では労働者に管轄裁判所の選択権を付与した。例えば、知的財産権紛争をめぐる労働事件において、雇用主が知商裁判所へ訴訟を提起した場合、労働者は本件口頭弁論の前に、当該訴訟事件を自ら選択した管轄権を有する普通裁判所へ移送し、当該裁判所の労働法廷で審理するよう申し立てることができる。逆に、雇用主が普通裁判所へ訴訟を提起した場合、労働者もまた当該訴訟事件を知商裁判所へ移送するよう申し立てることができる。ただし、当該紛争が労働調停手続きを経て労働調停が不成立となり、訴訟が続行される場合、労働者には移送を申し立てる権利はない(労働事件法第6条第2項、第7条第1項後段、労働事件審理細則第4条、第7条第1項などの規定)。労働事件法第6条の立法理由では、裁判所は労働者の申立てに基づき当該訴訟事件を移送すべきであることも明らかにしている。 

知商裁判所は前述した法令規定により、労働契約又はその他の労働関係に起因又は関連する知的財産事件について、すでに労働者の申立てによりいくつかの事件を移送した。同一事件について複数の労働者がそれぞれ異なる裁判所への移送を申し立てた場合、裁判所は同一の原因事実に対する攻撃防御方法は互いに関連しており、口頭弁論の資料も相互に利用することができ、また、裁判相違の回避及び訴訟経済の考慮のため、それぞれ異なる裁判所で審理することは適切ではない等すべての要素を考慮し、総合的に判断して1つの裁判所を選択する可能性がある(20201026日付の知商裁判所109年度民営訴字第9号裁定を参照)。 

ただし、知商裁判所はかつて労働者が事実上裁判への出頭に不便がないとして、労働者からの管轄移送の申立てを棄却したこともある(2020119日付の知商裁判所109年度民専訴字第91号裁定及び202118日付の109年度民専抗字第21号裁定を参照)。当該事件において、原告A社はその従業員BA社在職期間中の創作について、無断でB、配偶者C及びそれらが設立したD社、E社の名義で専利出願したと主張して知商裁判所へ提訴した。従業員Bは新北地方裁判所への移送を申し立てたが、知商裁判所は新北地方裁判所と同じ新北市に位置しており、従業員Bの住所も新北市林口区にあるため、知商裁判所への出頭に不便がないとして、その申立てを棄却した。 

本件は最高裁まで再抗告された。最高裁は原審の裁定を維持したものの、以下のとおりその理由付けは異なる。

労働事件の紛争は非労働者の第三者(すなわちCDE)に関わっており、第三者は雇用主と労使関係にないため、管轄裁判所を選択する権利はないが、労働者が自分が関与した部分の訴訟を原訴訟から切り離して、その選択した管轄権を有する裁判所への移送を申し立てることができるか否かは、原告が主張した事実と請求により決まる。訴訟物の義務が被告らによって共同で負担される場合、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づく場合、訴訟経済の考慮及び裁判相違の回避のため、労働者の選択権を制限すべきであり、労働者はその選択した裁判所への移送を申し立てることはできない(2021429日付の最高裁判所110年度台抗字第315号民事裁定を参照)。  

以上のことから分かるように、労働事件法の施行後、雇用主は知的財産権紛争をめぐる労働事件について知商裁判所へ訴訟を提起した場合、労働者が出頭困難を理由にその他裁判所の労働法廷への移送を申し立てる状況に直面する可能性がある。その場合、当該事件において出頭困難な状況がなければ、又は非労働者の共同被告に関わるものであれば、労働者の選択権が排除される可能性があり、この時、裁判所が直接移送してしまわないよう、雇用主は裁判所へ直ちに意見を表明する必要がある。

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