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台湾企業買収法の一部改正案について
台湾企業買収法の一部改正案について
2021年12月30日に、経済部が提出した企業買収法(中国語:企業併購法)の一部改正案が行政院にて可決されました。
今回の改正のポイントについて、ご紹介いたします。
一、株主の権利の保護のため、合併情報の開示を強化し、株式買取請求権を拡大する。
(一)株主総会前に重要な情報の開示
会社は株主総会の招集事由において、取締役の利害関係、および買収決議に対する賛成または反対の理由を記載しなければならないとする規定が新設されました。現行法と比べて、株主は株主総会の前に重要な情報を知ることができるようになります。(草案第5条)
(二)株式買取請求権の拡大
反対票を投じた株主も株式買取請求権を行使できる規定が新設されました。現行法では議決権を棄権した株主のみが株式買取請求権を行使できますが、これと比べて、改正後は、株主が反対票を投じると同時に、株式買収請求権も行使できるようになります。(草案第12条)
二、合併の柔軟性と効率の向上のため、非対称買収の適用範囲を拡大。
非対称買収とは、買収を加速させるため、大企業が中小企業を買収する際に、特定の条件を満たす場合、取締役会の決議のみによって合併を進めることができる制度をいいます。
現行法では、買収対価について、①対価として新株を発行する場合、発行する新株数の存続会社の発行済株式数に対する割合が20%を超えないこと、かつ、②対価として交付する現金その他資産の存続会社の純資産額に対する割合が2%を超えないことの2つの条件を満たす必要があります。
この点について、改正法では、以下のとおり修正されました。
(一)純資産額に対する割合の上限の引き上げ
対価として交付する現金その他資産の存続会社の純資産額に対する割合の上限が2%から20%に引き上げられました。これにより、取締役会の決議のみによって合併を進めたい場合に、対象会社に現行法より高い対価を支払うことができるようになり、対象会社と交渉する際に提案できる対価の柔軟性が高まります。
(二)適用範囲の拡大
本改正案では、存続会社が「発行する新株数の存続会社の発行済株式数に対する割合が20%を超えない」または「対価として交付する現金その他資産の存続会社の純資産額に対する割合が20%を超えない」のいずれか一つの条件を満たせば、非対称買収の規定を適用することができるようになります。
(草案第18、29、36条)
三、無形資産項目の明確化およびベンチャー企業の株主の課税の延期を含む課税措置の拡大。
(一)無形資産の明確化
識別可能な無形資産の種類および耐用年数が明記されました。識別できる無形資産は、将来、耐用年数にわたって、規則的に償却を行うことができます。明記された識別可能な無形資産の種類には、半導体集積回路配置権、植物の新品種、漁業権、鉱業権、水利権、営業秘密、ソフトウェア等が含まれます。(草案第40条の1)
(二)ベンチャー企業の株主に対する課税の延期
吸収合併される会社がベンチャー企業である場合、個人株主が受け取った対価に対する所得税について、合併の翌年から3年目以降、3年に等しく分けて課税することができる選択肢が追加されました。ベンチャー企業の株主の合併への意向を高めるため、対価を受けると同時に、一度に高額な税金を支払わなければならない負担を軽減するための制度です。(草案第44条の1)
今後、本改正案は立法院(日本の国会に相当)にて審議されますので、引き続き動向に注視していく必要があります。
上記情報についてご質問がございましたら、又はその他の関連法規についての情報をご希望でしたら、当事務所の朱百強弁護士(marrosju@leeandli.com)、林莉慈弁護士(litzulin@leeandli.com)までお問い合わせ頂ければ幸いです。