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税関による商標権益保護措置執行に関する実施規則の改訂案-2021年6月9日予告版



 「税関による商標権益保護措置執行に関する実施規則」(以下「本規則」という)は、商標法第78条第2項の規定に基づき定められたものである。本規則の主務官庁である台湾財政部関務署(以下「関務署」という)は近年、本規則の改訂案を積極的に提出している。これまで3回の改訂案が提出され、そのうち、202169日に予告された最新の改訂案(以下「20216月版案」という)は、2021611日に行政院公報で公表された(行政手続法第151条第2項に基づき第154条第1項を準用する)。意見募集(パブリックコメント)期間は60日で、同案に対して意見やコメントがある場合、2021810日までに提出する必要がある。募集期間終了後、関務署は各界の意見を受け入れて同案を改訂するかどうかを検討し、意見がない場合、又は意見を受け入れ改訂を行い再度予告手続が免除される場合、20218月末に施行される見込み。

一、これまでの案と現行規則の条文対照表 

 以下は20216月版案、2021222付の改訂案(以下「20212月版案」)という)、2020123付の改訂案(以下「2020年版案」という)及び現行規則の条文対照表(以下「改訂案対照表」という)である。 

202169

改訂条文()

2021222

改訂条文()

2020123

改訂条文()

現行条文

7条第2項第1

航空便輸入及び船便輸出入貨物の場合、商標権者は24時間以内に税関のオフィスに出頭し、又は税関が許可したプラットフォームにおいて権利侵害有無の認定を行い、3執務日以内に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で権利侵害有無に関する事実及び証拠を提出しなければならない。ただし、正当な理由があって、期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で理由を釈明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

航空便輸入及び船便輸出入貨物の場合、商標権者は24時間以内に税関に出頭して権利侵害有無の認定を行うか、又は税関に権利侵害疑義貨物の写真ファイルを提供するよう申請した後、権利侵害有無の認定を行うかどうかを税関に通知しなければならず3執務日以内に権利侵害有無に関する事実及び証拠を提出しなければならない。ただし、正当な理由があって、期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面で理由を釈明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

航空便輸入及び船便輸出入貨物の場合、商標権者は24時間以内に税関に出頭して権利侵害有無の認定を行うか、又は税関に権利侵害疑義貨物の写真ファイルを提供するよう申請した後、権利侵害有無の認定を行うかどうかを税関に通知しなければならず、3執務日以内に権利侵害有無に関する事実及び証拠を提出しなければならない。ただし、正当な理由があって、期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面で理由を釈明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

航空便輸入及び船便輸出入貨物の場合、商標権者は24時間以内に税関に出頭して権利侵害有無の認定を行い、3執務日以内に権利侵害有無に関する事実及び証拠を提出しなければならない。ただし、正当な理由があって、期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面で理由を釈明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

7条第2項第2

輸出入者は、3執務日以内に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で権利侵害事情がないことの証明書類を提出しなければならない。ただし、正当な理由があって期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で理由を釈明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

改訂なし

改訂なし

輸出入者は、3執務日以内に権利侵害事情がないことの証明書類を提出しなければならない。ただし、正当な理由があって期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面で理由を釈明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

7条第5

商標権者は第1項の通知を受けた後、関が許可したプラットフォームにおいて税関が摘発時に撮影した権利侵害疑義貨物の写真ファイルを取得し、税関に出頭して権利侵害有無の認定を行うかどうかを判断する際の参考とすることができる。ただし、税関が提供した写真ファイルを、権利侵害有無の認定の唯一の根拠としてはならない。

商標権者は第1項の通知を受けた後、税関に申請して提供された権利侵害疑義貨物の写真ファイルは、税関が摘発した案件で保存されている写真ファイルに限り、税関に出頭するかどうかを判断したり、自ら権利侵害有無の認定を行うかどうかを税関に通知したりするための参考として用いられるものである。

商標権者は第1項の通知を受けた後、税関に申請して提供された権利侵害疑義貨物の写真ファイルは、権利侵害有無の認定の判断の参考として用いられるものであり、権利侵害有無の認定の根拠としてはならない。

商標権者は第1項の通知を受けた後、権利侵害有無の認定のために税関に出頭するかどうかを判断する際の参考となるよう、権利侵害疑義貨物の写真ファイルを提供するよう税関に申請することができるただし、税関が提供した写真ファイルを、権利侵害有無の認定の根拠としてはならない。

9条第2

商標権者が第7条第2項第1号規定の期限内に税関のオフィスに出頭し、又は税関が許可したプラットフォームにおいて権利侵害有無の認定を行わなかった。

2.商標権者が第7条第2項第1号規定の期限内に権利侵害有無の認定を行わなかった。

2.商標権者が第7条第2項第1号規定の期限内に権利侵害有無の認定を行わなかった。

2.商標権者が第7条第2項第1号規定の期限内に税関に出頭して権利侵害有無の認定を行わなかった。

 

二、商標法における「税関に出頭して」に関する授権明確性問題の解決-「税関のオフィスに出頭し又は税関が許可したプラットフォームにおいて」 

 改訂案対照表によると、20212月版案であれ2020年版案であれ、本規則第7条第2項第1号の改訂趣旨はいずれも商標権者の「税関に出頭して」(自ら税関に出頭する)の負担を軽減することにあり、この改訂に合わせて、本規則第9条第2項の「税関に出頭して」との文言も削除された。ただし、商標法第75条第2項「税関が前項の通知を行うときは、期限を定めて、商標権者税関に出頭して認定するよう求め、並びに権利侵害の事実証拠を提出させなければならない。同時に期限を定めて、輸出入者に権利侵害事情がないことの証明書類を提出させなければならない」において、すでに「税関に出頭して」という文言が明文化されているため、これは、関連組織に20212月版案又は2020年版案が授権明確性に違反する可能性があるという懸念を引き起こした。 

 20216月版案では、本規則第7条第2項第1号の「税関に出頭して」という文言が「税関のオフィスに出頭し又は税関が許可したプラットフォームにおいて」に改訂された。そうすることで、商標法第75条第2項の「税関に出頭して」を、「税関のオフィスに出頭して」又は「税関が許可したプラットフォームにおいて」と解釈することにより、授権明確性違反の懸念が払拭されるだろう。 

 その改訂理由は以下のとおり。テクノロジーの発展に伴い、商標権者が権利侵害有無の認定を行う助けとなるよう、税関がそのプラットフォームを通じて権利侵害疑義貨物の写真ファイルを提供することは、技術的に可能であり、かつ実務上、商標権者が摘発された商品を製造又は販売していない場合、写真ファイルだけで侵害の有無を明確に判断することができる。また、前の案と比べて、20216月版案では、商標権者は「写真ファイル申請」の手続を経る必要なく、直接、税関が許可したプラットフォームで侵害疑義貨物の写真ファイルを取得することができるようになる 

 税関の水際対策の実務では、商標権者に24時間以内に自ら税関に出頭するよう求めることは、確かに商標権者との連絡に負担をかけることになり、商標代理人は必ずしも24時間以内に外国の商標権者から確認指示を得ることができず、その結果、商標権者がその商標権を積極的に保護することができなくなる。20216月版案では、「税関プラットフォームで権利侵害有無の認定を行うことができる」ことに緩和し、商標権者の人件費と交通コストを削減することができる。これは、商標権者の水際対策にとって心強いことであると言える。 

三、権利侵害疑義貨物の写真ファイルは、権利侵害有無の認定の参考とすることができる 

 20216月版案の本規則7条第5を見てみると、関務署は「ただし、税関が提供した写真ファイルを、権利侵害有無の認定の根拠としてはならない」という文言を、「ただし、税関が提供した写真ファイルを、権利侵害有無の認定の唯一の根拠としてはならない」に改訂した。この項の改訂は、20212月版案の改訂理由「商標権者がこれらの写真ファイルを権利侵害報告書に取り入れて証拠として提出する場合、当該証拠が権利侵害認定報告書に対して生じた結果を自ら背負わなければならない。そのため、他の権利侵害事実や証拠も併せて提出する必要があり、これにより総合的に認定すべきであり、これらの写真ファイルを権利侵害有無の認定の唯一の根拠として用いることは適切ではない」との内容を、直接明文化したもので、これも筆者が20213月に、20212月版案に対して執筆した文章の中のコメントと一致している。 

四、商標権者及び輸出入者の両方のための便利な手段-プラットフォームに証拠書類をアップロード 

 20216月版案は本規則第7条第2項第1号を、商標権者は、3勤務日以内に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で権利侵害有無に関する事実及び証拠を提出しなければならない」と改訂し、また、同案は本規則第7条第2項第2号を、輸出入者は、3勤務日以内に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で権利侵害事情がないことの証明書類を提出しなければならない」と改訂した。つまり、商標権者であれ輸出入者であれ、書面による回答に加えて、税関が新たに設置した「税関が許可したプラットフォーム」を通じて証拠書類をアップロードすることもできる。 

五、まとめ 

 20216月版案が提出された当時、新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、その感染拡大防止ための人流抑制の趨勢、及びインターネットの発展に応じ、商標権者がオンラインで侵害疑義貨物の写真を確認できるほか、書類もアップロードできるように改訂された。これは、商標権者の負担を大幅に軽減し、さらに国際社会において商標権保護に取り組む我が国のイメージ向上にもなるもので、知的財産権を保護するという政府の決意を実行することができる。

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