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憲法訴訟法の施行



憲法訴訟法の施行

 

台湾の憲法(中華民国憲法)においては、「大法官」が憲法解釈を行うという制度が採用されています。この大法官による憲法解釈については、199323日に改正された「司法院大法官審理案件法」に基づき処理されてきました。その後、2005年には憲法が改正されましたが、「司法院大法官審理案件法」は、憲法改正に応じた改正もされないままとなっていました。また、長年にわたり、人権保障という観点からも手続及び制度の速やかな改革が望まれてきました。幾度もの法改正が試みられた後、20181218日に憲法訴訟法が立法院(国会)を通過しました(形式としては、「司法院大法官審理案件法」を全面的に改正するとともに、名称を「憲法訴訟法」に改正)。

 

この憲法訴訟法は、202214日に施行される予定です。そこで、憲法訴訟法のポイントをご紹介致します。

 

一、現行の制度の概要

 

中華民国憲法第78条では、「司法院は、憲法を解釈し、また法令及び命令の解釈を統一する権限を有する」と規定されています。そして、同79条第2項では、この司法院の権限は司法院の「大法官」が行使するとされています。大法官は、総統により指名され、立法院の同意を経て任命されます(憲法追加条文第5条第1項)。

法律が憲法に違反する場合には、法律の規定は無効となります(憲法第171条第1項)。しかし、裁判官が法律が憲法に違反し無効であると考える場合でも、適用を拒むことはできません。無効であると考える場合には、大法官に対して、憲法解釈申立をする必要があります(大法官解釈 釈字第371号)。

また、憲法で人民に保障された権利が不法に侵害され、訴訟を提起した場合において、終局確定裁判で適用された法令が憲法に抵触する疑いがあるときは、人民は大法官に憲法解釈の申立をすることができます(司法院大法官審理案件法第5条第1項第2号)。

さらに、行政機関や立法委員(国会議員)が、憲法の適用や法令が憲法に抵触しないか等について、大法官に憲法解釈の申立をすることについても規定されています(同項第1号、第3号。なお、立法委員が行う場合は、総数の3分の1以上の委員により申立てをする必要)。

 

二、大法官審理案件の全面的な司法化

 

来年施行される新制度下では、大法官による審理は「司法化」され、これまでより裁判に近い形になります。

現行法では、大法官は「会議」で憲法解釈申立案件の審理を行っていました。また、その審理結果は、「大法官解釈」の形で公開されていました(なお、受理要件を欠く場合は、「不受理決議」)。新制度では、大法官は、「憲法法廷」を組成して案件の審理を行います。審理結果は「判決」又は「決定」の形となります。

新制度では、判決書(決定書)の他、受理案件の申立書及び答弁書も公開されます。また、過去にはなかった記録閲覧制度も導入されます。

決議要件については、現行法では「憲法解釈(合憲及び違憲)には大法官の総数の2/3が出席し、出席者の2/3の同意がすること」とされていますが、要件が厳しいためになかなか決まらないという問題点がありました。そこで、「大法官の総数の2/3以上が評議へ参加し、総数の過半数の同意すること」へ緩和することとなりました。

 

三、判決に対する憲法審査制度の導入

 

現行法では、「裁判所の確定終局判決」を経て申請する場合も含め、大法官による審理の対象は、あくまでも法令でした(法令の規定が憲法に違反しないか等)。裁判所の確定終局判決での法令の解釈又は適用において、憲法で規定された基本権の意義を誤認又は無視した場合は大法官による審理の対象外であり、人権の保護として不十分な部分がありました。

そこで、憲法訴訟法では憲法法廷の審査対象には、抽象的な法令に加え、「裁判所の確定終局判決」も審査の対象とすることとなりました。

 

四、法廷の友の制度(Amicus Curiae)を新設

 

新制度では、憲法解釈案件は憲法法廷に受理された後、その申立書及び答弁書が公開されます。これに対して、一般民間人が特定の事件に対して意見を有する場合、「法廷の友」として意見を憲法法廷に提出するための制度が新設されます。これは、米国のAmicus Curiaeを参考に設けられるものです。

 

以上のように、違憲審査の制度が大幅に変更となります。ただ、台湾では「全面的な司法化」と呼ばれていますが、あくまでも最高裁判所とは別に憲法法廷を設けるという制度であり、日本や米国のように最高裁判所が違憲審査をするという制度に変更になるわけではありません。今回の改正についても、ドイツ型の審査制度を導入するものと説明されています。従って、今後も日本と台湾のシステムは大きく異なるので、注意する必要があります。

 

上記情報についてご質問がございましたら、当事務所の朱百強弁護士(marrosju@leeandli.com)、林莉慈弁護士(litzulin@leeandli.com)までお問い合わせ頂ければ幸いです。

 

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