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台湾における医薬用途発明に係る審査実務のご案内について



台湾における医薬用途発明に係る審査実務のご案内について

 

医薬品産業は特殊な産業の一つであり、その研究開発活動は通常、高コスト、高リスク、及び長周期という特性を有しています。しかし、そんな中でも、周知の医薬の新規な医薬用途、例えば新規な適応症、新規な塩類若しくは多形、又は用法若しくは用量などについての研究開発や改良は日々進んでおり、このところ、周知の医薬の新規な医薬用途の発明の審査実務が注目されています。

そこで、台湾専利法(日本の「特許法」「実用新案法」「意匠法」に相当)及び台湾特許審査基準の関連規定に基づき、台湾での周知の医薬の新規な医薬用途の発明に係る審査実務及び注意すべき点をご案内いたします。

一、周知の医薬の医薬第2用途の発明に係る審査実務及びそのクレームの記載形式

特許出願に係る医薬が周知であり、特許出願に係る医薬用途のみが、引用文献に開示の医薬の用途と異なることで特許性を有する場合、「特定な用途に用いられる医薬」との記載形式では、通常、当該用途限定は当該医薬の用途又は使用方法についての記載に過ぎず、限定作用を生じないという理由で、当該医薬自体の特許性は認められません。そのため、請求項の請求対象を「用途(又は使用、応用)」とする必要があります。ただし、用途(又は使用、応用)を請求の対象とする請求項は、方法の請求項と見なされます。よって、「医薬Aの疾患Xを治療する使用」のような記載形式とした場合、「医薬Aを用いて疾患Xを治療する方法」と見なされ、「人間又は動物の診断、治療又は外科手術方法」に該当し、不特許事由になってしまいます。それに対し、「医薬Aの疾患Xを治療する薬物の製造における使用」のような、いわゆるスイス型クレーム形式を採用すれば、「人間又は動物の診断、治療又は外科手術方法」に該当しないため、認められます。

例を挙げますと、特許出願に係る発明が「周知の一般式Iで表される化合物の抗アレルギー作用」という新規な医薬用途である場合、その請求項の記載形式を「一般式Iで表される化合物の抗アレルギー剤の製造における使用」のようなスイス型クレームすることで、認められる可能性があります。

二、周知の医薬の特定の塩類又は多形の発明に係る審査実務及びそのクレームの記載形式

特許出願に係る発明が周知の医薬の特定の塩類又は多形である場合、原則として、当業者が特許出願に係る発明と従来技術との差異を十分認定することができるように、請求項は、その技術的特徴を有する物理的、化学的特性、例えば粉末X線回折、単結晶X線回折、IRRamanNMR等のスペクトル分析法、又はDTATGADSC等の熱分析方法における数値によって、当該塩類又は多形の構造を特定する必要があります。

例えば、特許出願に係る発明が「周知の化合物Aのメタンスルホン酸塩の結晶Y」である場合、その請求項は、「粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°9.45°および17.36°に回折ピークを有する、化合物Aのメタンスルホン酸塩」のように、粉末X線回折における数値により、当該周知の化合物Aのメタンスルホン酸塩の新規な結晶Yを限定する記載形式にすれば、認められる可能性があります。

また、周知の医薬の特定の塩類又は多形については、当該塩類の選択又は多形の作製が、通常、ルーチンな実験方法によって得られるものであり、かつ、その特定の塩類又は多形が、当該周知の医薬に比べて予期できない効果を有しないという場合、原則として、当該周知の医薬の特定の塩類又は多形は特許性を有しないと認定される点です。また、引用文献に、当該周知の医薬の塩類又は多形Aが開示されており、特許出願に係る発明が当該医薬の他の塩類又は多形Bである場合、通常、当該引用文献において、他の塩類又は多形の存在が予期しうるか否か、当業者が当該塩類又は多形の作製を試みる動機付けがあるか否か、他の塩類又は多形を如何にして作製するかを知りうるか否か、及び、当該塩類又は多形が、他の塩類若しくは多形と異なる効果、又は他の塩類若しくは多形よりも優れた効果(例えば生物学的利用能、安定性等)を有するか否かを更に考慮する必要があります。

三、周知の医薬の用法又は用量の発明に係る審査実務及びそのクレームの記載形式

特許出願に係る医薬が、引用文献に開示の医薬と同一であるが、その技術的特徴が、例えば投与対象である特定患者群、投与経路、投与間隔、異なる成分を前後して投与すること等の違いによる用法の差異、又は投与量の違い等による用量の差異である場合、発明の実質的な技術内容に応じて、上記のような「薬物の製造における使用」というスイス型クレーム形式をもって請求するか、又は「キット」を請求の対象とする必要があります。

具体的な例としては、特許出願に係る発明が、「化合物Aの初期投与量として5.010.0mgkgで投与し、投与を2日間停止し、再度2.05.0mgkgの投与量で3日間投与し、順次循環的に投与することを特徴とする、周知の化合物Aによる疾患Yの治療」である場合、「医薬組成物」を請求の対象とするのではなく、その発明の実質的な内容に応じて、「化合物Aの初期投与量として5.010.0mgkgで投与し、投与を2日間停止し、再度2.05.0mgkgの投与量で3日間投与し、順次循環的に投与することを特徴とする、化合物Aを疾患Yを治療する薬物の製造における使用」というスイス型クレーム形式を採用する必要があります。

また、特許出願に係る発明が、「化合物A2.05.0mgkgの投与量で、また、抗癌剤B5.010.0mgkgの投与量で連続して投与することにより、抗癌剤Bの用量を従来の半分以下とし、癌治療の効果を維持したまま、抗癌剤Bによる副作用を軽減することを特徴とする、化合物Aと活性成分Bによる癌の治療」である場合、「化合物A及び抗癌剤Bを含むことを特徴とする癌治療キットであって、前記化合物A及び前記抗癌剤Bが、異なる包装に収められ、使用時に、前記化合物A2.05.0mgkgの投与量で、かつ、前記抗癌剤B5.010.0mgkgの投与量で連続して投与されることを特徴とする、癌治療キット」という記載形式を採用することが可能です。

また、医薬分野の当業者が周知する従来の課題(医療効果の増大又は副作用の低減など)を解決するために、投与量、投与間隔、投与経路等の医薬品使用方式の最適化条件を検討することにより得られた発明は、当業者がルーチンな作業による一般的な手段によって獲得することができ、かつ、引用文献の開示内容と比べてその効果を予期することができると判断された場合は、特許性を有しないと認定されうるということです。それとは逆に、例えば引用文献の開示内容と比べて予期できない効果がある場合、特許出願に係る発明は特許性を有すると認められる可能性があります。

以上をまとめると、周知の医薬の医薬第2用途、又は新規な用法若しくは用量の発明は、その技術的特徴が、当該医薬自体にあるのではなく、その新規な医薬用途、又は用法若しくは用量にあることから、実務上、発明の実質的な技術内容に応じて、スイス型クレーム形式にするか、又は、「キット」を請求の対象とすることが要求されます。一方、周知の医薬の特定の塩類又は多形の発明については、当該「特定の塩類又は多形」を請求の対象とすることが認められますが、周知の医薬に関する従来技術の開示内容と区別できる物理的、化学的特性により、当該塩類又は多形の構造を特定する必要があります。

ご質問、ご要望などございましたら、歐(tlo@leeandli.com)までお問い合わせください。

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