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退職後の競業避止約束の適法性要件に関する労働基準法施行細則の改正について
退職後の競業避止約束の適法性要件に関する
労働基準法施行細則の改正について
「退職後の競業避止約束」に関する改正労働基準法(以下、「労基法」という。)第9条の1は、2015年12月18日に施行されました。改正法の施行後に成立した退職後の競業避止約束が次の規定のいずれかに違反する場合、当該約束は無効であると解されます。
1. 使用者は、保護を受けるべき正当な営業利益を有すること。
2. 労働者が担当する役職又は職務において使用者の営業秘密に接触し、又はそれを使用しうること。
3. 競業避止約束における期間、区域、職業活動の範囲及び就職先に対する制限(以下、「競業制限」という。)は合理的な範疇を超えないこと。
4. 使用者は、労働者が競業行為をしないことにより受けた損失に対し合理的な補償(以下、「競業補償」という。)をすること。
また、改正法の施行に伴い、退職後の競業避止の適法性要件を具体的に定めるため、労働部(日本の厚生労働省の一部に相当する省庁)は、労基法施行細則を改正し、2016年10月7日付労働関2字第1050127775号通達で、改正内容を公表しました。当該労基法施行細則の改正内容は次のとおりです。
一、 書面による約束(第7条の1)
退職後の競業避止約束は、書面により行うべきであり、また、当該書面に労基法第9条の1第1項及び第4号所定事項を詳しく記載し、労使双方が押印又は署名した上で、各自1通を所持しなければなりません。。
二、 競業制限は合理的でなければならない(第7条の2)
労基法第9条の1第1項第3号では、競業制限が合理的な範疇を超えないと規定されていますが、その適法要件は以下のとおりです。
1. 制限の期間は、使用者が保護しようとする営業秘密又は技術情報のライフサイクルを超えてはならず、最長でも2年間を超過してはならない。
2. 制限の区域は、元使用者の実際の営業活動の地理的範囲に限定されるべきである。
3. 制限の職業活動範囲は、具体的で明確でなければならず、かつ、労働者の前の職業活動の範囲と同様又は類似しなければならない。
4. 制限の就職先は、具体的で明確でなければならず、かつ、元使用者の営業活動と同様又は類似し、競争関係を有するものに限る。
三、 競業補償は合理的でなければならない(第7条の3)
競業補償の合理性については、次の事項を総合的に考慮しなければなりません。
1. 毎月の補償金額は、労働者離職時の月平均賃金の50%を下回っていないこと。
2. 補償金額は、労働者の競業避止期間内の生活を維持できるように算定すること。
3. 補償金額は、労働者が競業避止の期間、区域、職業活動範囲及び就職先の制限を遵守したことにより発生した損失に相当すること。
4. その他の補償基準合理性の判断に関連する事項。
なお、競業補償は、一括払い又は月次払いで支払うこととされます。
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