ニューズレター
「公開発行会社有価証券の公開買付に関する管理規則」及び「公開買付説明書における記載すべき事項に関する準則」に関する改正予告について
「公開発行会社有価証券の公開買付に関する管理規則」及び「公開買付説明書における記載すべき事項に関する準則」に関する改正予告について
近頃の買付代金不払いによる公開買付の中止の重大事件の発生を受け、金融監督管理委員会(以下、「管理当局」という。)の2016年9月28日付けの報道発表(資料)によれば、管理当局は、公開買付の応募者の権利・利益に対する保障を一層強化するため、「公開発行会社有価証券の公開買付に関する管理規則」及び「公開買付説明書における記載すべき事項に関する準則」等の改正案(以下、併せて「当改正案」という。)を公表しました。本稿では、当改正案の概要をご紹介します(以下、公開買付説明書を「説明書」という。)。
一、 「公開発行会社有価証券の公開買付に関する管理規則」についての改正案の概要
(一) 公開買付会社(以下、「買付者」という。)の義務の強化
1. 天然災害、戦争又は動乱等の事情を除き、買付者は公開買付説明書記載の買付代金支払時期を延長してはならないことを明示する(同規則改正案(以下同)の第7条の1)。
2. 買付者の十分な資力の確保のため、現金を買付代金の支払手段とする場合には、証券引受業務の免許を有する財務顧問若しくは公開発行会社の財務報告の監査業務を取扱う公認会計士より、合理的な手続を経て、資金源を審査し、買付者が買付代金を支払うための契約履行能力を具備する旨の承認書が出されること、又は金融機関より契約履行の保証がなされることのいずれかの条件の充足を要請する(第9条)。
3. 情報開示を強化して株主の応募決定の参考となるようにするため、買付者に対し次の関連情報の管理当局への申告、投資者への公告及び受託機構への通知を義務付ける(第19条第2項)。
(1) 公開買付条件成就前に、他の主務機関より既に許可を得たこと又は既に届出をし発効したこと。
(2) 公開買付条件が成就したこと。
(3) 買付代金の全額を既に受託機構名義の公開買付専用振込口座に振り込んだこと。
(4) 公開買付条件成就後に、有価証券の応募数が買付予定数の最大数を超えたこと。
なお、(3)の規定については、当局の今後の出方により、買付者の資金調達のスケジュールに影響が及ぼされる可能性があるので、ご留意ください。
(二) 買付対象会社(以下、「対象会社」という。)の取締役会及び審議委員会の権限等の強化(第14条及び第14条の1)
1. 取締役会及び審議委員会において、買付者の身元情報及び財務状況、買付条件の公平性や買付資金源の合理性等の重要情報について調査・検証し、そして株主に対し前記の結果に基づく助言を提供することを義務付ける。
2. 対象会社及び審議委員会の便宜を図るため、調査・検証結果の返答期間を10日間から15日間に延長する。
3. 審議委員会に対し、調査・検証状況及び審議の結果を取締役会に提出して報告することを義務付ける。
4. 責任を明確にするため、取締役会議事録において各取締役の同意又は反対の明確な意見及びその理由の記入を要請する。
5. 議事の規範を明確にするため、審議委員会の出席及び議事進行に係る手続規則を増設する。
(三) 公開買付条件が成就したものの、買付者が買付代金の全額を受託機構名義の公開買付専用振込口座に振り込んでいなかったとき、応募者は、その応募を撤回することができることを明記する(第19条第4項)。
(四) 受託機構に公開買付に係る株式事務の管理業務を強化させるため、代金及び株券の決済用の専用口座を設置し、振り込んだ資金を指定用途のみに使用するようにすることを義務付けるほか、その善管注意義務及び消極的な資格も追加する(第15条)。
二、 「公開買付説明書における記載すべき事項に関する準則」についての改正案の概要
(一) 説明書で援用された外部専門家の意見書を投資者の参考となるようにするため、説明書の所要事項につき、弁護士法律意見書、財務顧問確認書、金融機構契約履行保証書又はその他専門家が作成した関連審査意見書等を特別記載事項として記載することを求める(同準則改正案(以下同)第4条)。また、外部専門家の基本情報及び委託事項の開示(第5条)のほか、専門家が自ら担当した書類につき、署名又はサインすることも要請する(第13条の1第2項)。
(二) 多層的買付の仕組みが増えていることに鑑み、現金を買付代金の支払手段とする場合には、最終の資金源の身分及び関連資金の調達等の重要な情報を開示することを要求する。また、会社が自己資金で買付資金を充当するとき、資金源の合理性を明らかにするよう、公開買付が公告される前の最近の2年度の財務諸表の開示も要求する。なお、買付者に対し、買付代金支払の履行義務を負う旨の宣誓書を提出し、資金調達に関連するあらゆる協議又は約定の文書を含め、説明書と併せて公告することを要求する(第7条)。
(三) 買付者が公開買付の完了後に対象会社の重大な資産を取得する計画を有している場合、当該計画内容の開示を義務付ける(第12条)。
上記情報についてご質問がございましたら、又はその他の関連法規についての情報をご希望でしたら、お気軽に弊所(お問い合わせ先:朱百強弁護士marrosju@leeandli.com;林莉慈弁護士litzulin@leeandli.com)までご連絡下さい。