ニューズレター
台湾特許法改正の方向について
現在、台湾特許庁においては、特許法改正に向け、その草案づくりに鋭意議論が続けられておりますが、論ずべき改正点が非常に多いこと、また、改正案が台湾特許庁でまとまっても、その後、上級官庁である経済部、更に国会での審議がひかえておりますので、改正特許法が本年中に施行されるのは厳しい状況であると言えます。
今般、当所では、特許法改正の方向につき、以下のようにその概略をまとめ、クライアント各位のご参考に供することといたしました。台湾特許改正の方向性のご理解の一助となれば幸いに存じます。なお、今回の改正は、上記のような事情を含んでおり、また改正案の内容も更に調整されることが考えられますので、今回当所でまとめましたものは、あくまでも概略であることにご留意いただきたいと存じます。特許法改正につき、何らかの進捗がありましたら、適時お知らせして参りたいと存じます。
一、国際との調和の推進
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優先権証明書類の補充期限:
現行の「出願日から4ヶ月以内に補充すること」を、「最も早い優先権日から16ヶ月以内に補充すること」に改正する。 -
復権:
下記の事項につき、法定期間を過ぎても、故意でない場合は復権を申請することができる:
(1) 優先権主張
(2) 特許証書料及び1年目の年金
(3) 2年目以降の年金 -
新規性の喪失の例外の主張:
(1) 新規性の喪失の例外に関する規定を、進歩性にも適用するよう拡大する。
(2) どのような事由で例外が生じるのかに関する規定、及び出願人自身の事由によるものにも及ぶのかにつき、別途検討する。 -
公衆衛生関連議題の部分:
WTO加盟国は、国家の緊急事態、その他の緊急事態、公益を促進するための非商業的使用の場合、開発途上国及び後発開発途上国に必要な医薬品の取得のために強制実施権を許諾して協力することができる。
我が国の立法院は既に2008年5月23日に、WTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定の修正」議定書 (TRIPS 31bis)の許可に同意した。
二、産業の需要に合わせて
動植物特許の解禁に関する部分:
動植物特許を全面的に解禁する。特許権の効力が及ばない範囲とされる研究試験行為の改正に関する部分:
(1) 第57条1項1号を新訂し、特許権の効力は、業としない個人的行為、並びに後発医薬品について特許権存続期間内に行う試験に及ばないことを規定する。
(2) 「授業」の態様及び「営利上の行為ではない」との要件を削除する。特許権の国際消尽を明確にする:
第57条2項の「…第6号における販売できる区域は、裁判所が事実に基づいて認定する」との規定を削除する。
三、各界からの要望
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特許強制実施許諾
(1) 用語及び定義の修正:「特許実施」(実施を特別に許可する)から「強制授権」(強制実施許諾)に修正するとともに、再発明の定義を検討しなおす。
(2) 強制実施許諾の事由の適切性の検討。
(3) 合理的な商業条件及び期間内に協議できないことを、強制実施許諾の「事由」から「前提条件」に変更する。
(4) 競争制限に違反した場合、公平取引委員会の処分を受けたのであれば、「確定」される前に強制実施許諾を申請することができる。
(5) 強制実施許諾の処分手続き及び事後の監督体制の検討。 -
権利侵害関連規定を改正
(1) 特許侵害に係る主観的な要件、タイプ、求償範囲及び証拠保全等の関連事項については、法改正の際、全体的に考慮する。
(2) 特許権表示に係る規定については、諸国の規定を参照しながら調整する。
(3) 間接侵害については、我が国の全体的な法制度に関与するため、更に侵害の類型と態様を集め、裁判官や実務界との共同検討が必要である。 -
意匠の保護(名称を「新式様専利」から「設計専利」へ変更):設計の保護を拡大
(1) 部分意匠出願を認める。
(2) Icons(アイコン)及びGUI(グラフィカルユーザインタフェース )出願を認める。
(3) 組物出願を認める。 -
出願日を確保するための外国語の種類
(1) 外国語書面で明細書、特許請求の範囲、及び図面を提出したものは、その外国語書面については補正してはならない。
(2) 外国語書面の種類を限定する。
(3) 誤訳に関る補正・訂正制度の規定を導入する。
(4) 外国語書面で出願したものに関する関連措置を定める。 -
補正及び分割制度の調整:
(1) 日本の法制を参考にし、審査における重要な一環である「補正」につき、制度上の全体的な調整を行なう。
(2) 「補正」関連規定の調整に合わせ、分割制度に関しては、初審査と再審査の異なる適用時点を区別し、特許査定後の分割に関する規定を加えると同時に、分割と「補正」関連の規定も併せて定める。
四、その他の改正事項
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特許、商標の複審及び紛争事件の審理方式については、既に経済部の指示を受けており、現行制度の維持及び訴願機能の強化の方向で処理すべきである。
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その他の改正議題については、公聴会の進行に合わせて改正と調整を進めて行き、特許法の改正はまだ完全に定まっていない。
ご質問、お気づきの点、ご要望などございましたら、お気軽に林(chlin@leeandli.com)までお問い合わせください。