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商標権者のウェブサイトと同一又は類似のコンテンツ、レイアウト、順序、構造などを広告やウェブページに使用することは、公平交易法違反の可能性あり—最高裁113年(西暦2024年)度台上字第335号民事判決


Winona Chen

 

 一、事案の概要

 

 

(一)本件上告人は次のように主張している。上告人たる勢得科研株式会社(STAREK SCIENTIFIC CO., LTD.)は、登録第02031241号商標(以下「係争商標1)及び登録第02031242号商標(以下「係争商標2」という。 係争商標1)の商標権者であり、201711月にFacebookのファンページ「科研市集」を開設し、20181月には正式に「科研市集」をオンラインショップの名称として正式に使用し、「科研市集」を著名商標、表徴とすべく努力してきた。しかし、被疑侵害者たる科研市集株式会社は、係争商標が著名な登録商標と表徴であることを知りながら、これを社名の主要部分として使用し、また、「科研市集株式会社(中国語科研市集有限公司)」の名称で隆光電株式会社とFacebookのファンページを開設し、オンラインショップの左上隅に「科研市集株式会社」の文字を表示し、係争商標者のウェブサイトと同一又は類似のコンテンツ、レイアウト、順序、構造を広告やウェブページなどに使用したこと(原審で係争商標権者が拡張請求したもの)、及び被告たる隆光電株式会社が複数の商標登録を出願し(すなわち  )、係争商標に対して異議申立を行ったことなどは、いずれも原告の商業上の信用にフリーライド(ただ乗り)し、その努力成果を搾取し、著しく公平さを欠く行為であるため、係争商標権を侵害し、公平交易法(日本の「不正競争防止法」及び「独占禁止法」に相当。以下「公平法」という)に違反する行為である。

 

(二)原判決(111年(西暦2022年)度民商上字第17号民事判決)は、係争商標2は識別性を欠き無効であり、係争商標は著名商標でも著名表徴でもなく、科研市集株式会社の社名は関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがなく、他人の営業・サービス上の施設又はイベントと混同させるおそれもないとした。科研市集株式会社は、その社名を適切に表示し、「科研市集株式会社」の名でFacebookのファンページを開設したことも、係争商標権の侵害や著名表徴へのフリーライド行為とは認めがたい。しかし、原審は、被疑侵害者が自己のウェブサイトにおいて係争商標権者の言語著作物を複製、翻案し、これを使用して営業活動を行うことは、公平法第25条の著しく公平さを欠くという不正競争行為に該当するとして、被疑侵害者に対し、係争商標権者の科研市集ウェブサイト(https://www.sciket.com/)と同一又は類似のコンテンツ、レイアウト、順序、構造を広告やウェブページに使用しないこと、係争商標権者の科研市集ウェブサイトと同一又は類似のコンテンツ、レイアウト、順序、構造を含む広告やウェブページを削除することを命じる旨の判決を下した。

 

(三)係争商標権者が原判決の一部を不服として上告したところ、最高裁判所は、113年(西暦2024年)度台上字第335号民事判決において、原判決に理由不備の違法があるとして、原判決を破棄し第二審裁判所に差し戻した。

 

二、本件の主な争点

 

原審の主な争点

 

(一)係争商標は識別性がなく、無効となるか。

(二)係争商標が著名商標又は著名表徴であるかどうか、もしそうならば、係争商標が登録公告された時の商標法(以下「商標法」という)第70条第2[1]及び公平法第22条第1項第2[2]の規定が本件に適用されるのか。

(三)被疑侵害者は、商標法第36条第1項第3[3]の善意による先使用の規定を主張することができるか。

被疑侵害者が係争商標権者の科研市集のウェブサイト(https://www.sciket.com/)コンテンツ、レイアウト、順序、構造と同一又は類似の広告やウェブページを使用することは、公平法第25[4]に違反するのか。

 

第三審の主な争点

 

原判決は、民事訴訴訟法第469条第6[5]に規定する「判決に理由不備の法令違反があること」に当たるか。

 

三、裁判所の判断

 

原審の判断

 

(一)係争商標1は、第35類、第40類の商品又は役務への使用が指定されており、上記商品及び役務は、係争商標1の文字通りの意味とは無関係であり、商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特性を描写する説明でもなく、台湾の政府機関又はその主催する展覧会の標章、又はそれによって授与された賞牌・賞状とも無関係であり、他人が先に登録し、同一又は類似の商品又は役務への使用を指定した商標と同一又は類似のものでもない。したがって、識別性を有すると判断される。係争商標2は、第1類、第9類、第35類及び第42類などの商品及び役務への使用が指定されており、上記商品と役務と係争商標2の文字通りの意味は明らかに関連し、係争商標2は、商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特性を描写する説明であり、客観的に関連する消費者にそれが商品又は役務の出所を表彰する標識であると認識させるには不十分であり、それにより、他人の商品又は役務と区別することはできない。したがって、識別性を有しないと判断される。

 

(二)係争商標は著名商標又は著名表徴ではない。なぜなら、係争商標権者が提出した、係争商標が指定商品又は指定役務の区分でどのように使用され、その区分で著名となったかについての証拠は、係争商標が著名商標又は著名表徴となったことを立証するのに十分ではないからである。被疑侵害者が、会社設立登記の後、マーケティング活動において、その社名を適切に表示したため、係争商標権の侵害や著名表徴へのフリーライド行為とは認めがたい。被疑侵害者の社名は、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれはなく、他人の営業・サービス上の施設又はイベントと混同させるおそれもない。

 

(三)被疑侵害者は、係争商標登録出願の出願日前に、その販売する商品又は役務において、係争商標と同一の文字を使用し始めたことを立証できなかったため、商標法第36条第1項第3号の善意による先使用の規定は適用されない。

 

(四)係争商標は登録査定を受けた商標であるから、被疑侵害者の公開審査期間中の係争商標に対する異議申立ては、法律で認められた公開審査行為であり、被疑侵害者の係争商標に対する異議申立てが、係争商標権者が侵害を訴えることを避けたいという動機があったとしても、これは上告人の商業上の信用にフリーライドし、その努力成果を搾取する著しく公平さを欠く行為とはいえない。

 

(五)被疑侵害者が、係争商標権者の科研市集のウェブサイト(https://www.sciket.com/)コンテンツ、レイアウト、順序、構造と同一又は類似の広告やウェブページを使用することは、公平法第25条に違反する。

 

最高裁の判断

 

原審は、「被疑侵害者が、そのオンラインショップの左上隅に『科研市集株式会社』の文字を表示し、隆光電有限会社が商標登録出願をし、同一の役務において、係争商標と類似の商標を使用したことは、原告の商業上の信用にフリーライドし、その努力成果を搾取し、公平法第25条に規定されている著しく公平さを欠く行為に当たるか否か」という重要な攻撃方法については、採用しない理由を何ら述べず、科研市集有限公司は、マーケティング活動において、その社名を適切に表示し、被疑侵害者は著名表徴にフリーライドしていないと述べるにとどまり、係争商標権者に不利な判断をしたことは、判決に理由不備の違法があるとした。

 

四、本件からの学び

 

(一)商標出願の際には、「識別性の欠如」などの無効理由が権利主張の障害とならないよう、出願する商標が識別性を有するか否かに注意しなければならない

 

商標出願の際には、権利主張の障害にならないよう、登録しようとする文字、図形などが指定商品及び役務と関連性を有するか否か、単に商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特性を描写する説明にすぎないなどの理由で識別性欠如又はその他無効とされる可能性がないか注意すべきである。

 

(二)登録商標を積極的に使用し、関連証拠を保存することで、将来的に権利を主張する際には、登録商標を著名商標又は著名表徴として主張し、より広い権利保護を受けることができる

 

商標が著名商標及び著名表徴となるには一定の要件[6]がある。商標が著名商標である場合、その保護範囲は一般の登録商標より広く、被疑侵害者による同一又は類似の商品・役務の使用に限定されない。また、著名商標の文字を自己の会社、商号、団体、ドメイン又はその他営業主体を表彰する名称とし使用し、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある、又はその商標の識別性又は信用を損なうおそれがある行為についても、著名商標の商標権侵害を主張することができる。商標が著名表徴である場合、同一又は類似の商品に同一又は類似の方法で使用することにより、他人の商品、営業又は役務と混同を生じさせる場合、公平法の関連規定に違反する可能性がある。したがって、権利者は、登録商標を積極的に使用し、広く宣伝し、販売を促進することにより、市場において相当な名声・信用を蓄積し、関連する事業者又は消費者に普遍的に認知されるようにしなければならない。また、将来、権利を主張するため、登録商標の使用及び関連する事業業者又は消費者に普遍的に認知される証拠を確実に保存しておくべきである。

 

(三)商品やサービスの広告、ウェブページ又はその他のマーケティング資料を制作する際、権利侵害リスク回避のため、他人と同一又は類似のコンテンツ、レイアウト、順序、構造を使用することは避けるべきである

 

商品やサービスの広告、ウェブページ又はその他のマーケティング資料を制作する際、他人と同一又は類似のコンテンツ、レイアウト、順序、構造を使用することを避けるべきであり、そうでない場合には、著作権や商標権の侵害となる可能性がある。本件の見解は、商標権の侵害とならない場合でも、公平法に違反し、損害賠償及び侵害排除の責任を負うおそれがあることを明らかにしており、慎重な対応にならざるを得ない。

 

(四)当事者が第二審の判決に不服である場合、第二審がそれぞれの争点について詳細な理由付けがあるか否かを詳しく調べること。第二審裁判所が簡単な理由を記載していたとしても、第三審において、原審が採用しない理由を詳しく述べておらず、判決に理由不備の違法があると積極的に主張することができる

 

本件原審は、「被疑侵害者が、そのオンラインショップの左上隅に『科研市集株式会社』の文字を表示し、隆光電有限会社が商標登録出願をし、同一役務において、係争商標と類似の商標を使用したことは、原告の商業上の信用にフリーライドし、その努力成果を搾取し、公平法第25条に規定される著しく公平さを欠く行為に当たるか否か」という争点について全く論述していないわけではないが、最高裁は依然として、原審が採用しない理由を詳しく述べなかったことは、判決に理由不備の違法があるとした。したがって、第二審判決を不服として上告しようとする当事者は、最高裁113年(西暦2024年)度台上字第335号民事判決の趣旨を参酌し、第二審裁判所による簡単な理由付けに基づき、判決に理由不備の違法があると積極的に主張することができる。

 

[1]商標法第70条第2号は、「商標権者の同意を得ずに、次の各号のいずれかに該当する場合、商標権侵害とみなす。...... (第2号)他人の著名な登録商標であることを知りながら、当該著名商標にある文字を、自社、商号、団体、ドメインネーム又はその他の営業主体を表彰する名称として、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある、又は当該商標の識別性若しくは信用名声を損なうおそれがあるもの。」と規定している。

[2]公平交易法第22条第1項第2号は、「事業者がその営業において提供する商品又は役務について、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。......(第2号)著名な他人の氏名、商号、会社名称、標章又はその他他人の営業、役務を示す表徴を、同一又は類似の役務において、同一又は類似の方法で使用することで、他人の営業、役務の施設又は活動と混同を生じさせること。」と規定している。

[3]商標法第36条第1項第3号は、「次の各号のいずれかに該当するときは、他人の商標権の効力による拘束を受けない。......(第3号)他人の商標登録出願日より前に、善意で同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は役務に使用したもの。ただし、もともと使用していた商品又は役務に限られる。商標権者は、適切な区別表示を付記するよう要求することができる。」と規定している。

[4]公平交易法第は、「本法に別段の定めがある場合を除き、事業者は、その他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為もしてはならない。」と規定している。

[5]民事訴訟法第469条第6号は、「判決が次の各号のいずれかに該当するときは、当然法令違反とみなす。......(第6号)判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。」と規定している。

[6]商標が著名であるか否かは、以下の要素を総合的に考慮して判断する。1.その商標の識別性の強弱、2. その商標が関連する事業者又は消費者に知悉、認識される程度、3. その商標の使用の期間、範囲及び地域、4. その商標の宣伝の期間、範囲及び地域、5. その商標の登録出願又は登録取得の有無、及びその登録、登録出願の期間、範囲及び地域、6. その商標の権利行使が成功した記録、特に行政又は司法官庁により著名であると認められたことがある状況を指すもの、7. その商標の価値、8. その他著名商標と認定するに足りる要素。表徴が著名であるか否かは、以下の要件を総合的に考慮して判断する。1.広告量、2.市場におけるマーケティング期間、販売量、市場シェア、3.その表徴が、関連する事業者や消費者に印象を与える程度にメディアで広く報道されたかどうか、4.その表徴が付された商品又は役務の品質、5.口コミ、公正かつ客観的な市場調査データ、6.関連する主務官庁の見解。(知的財産及び商業裁判所111年(西暦2022年)度民商上字第17号民事判決参照)

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