ニューズレター
OEM期間の満了又は終了後にその期間中に製造された商標商品を販売することは商標権侵害に当たる
一、前言
OEM(委託者ブランド名製造)期間中、商標権者から商標の使用及び商標商品(登録商標の付された商品)の製造を許諾されたOEMメーカーが、OEM期間の満了又は終了後、OEM期間中に製造された商標商品を販売することが商標権侵害に当たるか否かは、実務上重要な論点となっている。
智慧財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は、112年(西暦2023年)度民商訴字第19号民事判決において、この問題について、商標権侵害に当たると判断した。
二、事案の概要
原告会社は、第29類の食用油脂などの指定商品に使用する係争商標の登録を取得した。原告会社と被告会社は元々OEM提携関係にあり、原告会社は被告会社に対し、その製造するガラス瓶の底面に係争商標を印字することを許諾した。被告会社が製造したガラス瓶は、原告と被告会社が営む事業において共同して使用することができる。
しかし、原告会社は、双方のOEM提携関係の終了後、被告会社が、原告会社の承認又は許諾を得ずに、係争商標が瓶底に印字されたガラス瓶(以下「係争ガラス瓶」という)に、被告会社が製造した「合成ビネガーエッセンス」、「唐辛子風味油」、「低温圧搾ごま油」、「黒ゴマ油」を充填し(以下「係争商品」という)、実体店舗やEC サイト「Shopee」で展示販売していたことを発見した。
三、本件判旨
IPCCの112年(西暦2023年)度民商訴字第19号民事判決(判決日:2024年10月30日)は、本件商標権侵害に係る争点について、以下のように判示した。
(一)係争商品の表示方法は、商標の使用に該当し、原告会社の商標権を侵害した
被告会社が係争商品を製造し、その瓶底の中央部に係争商標をはっきりと表示した。その範囲は瓶底の面積の半分以上を占めており、関連する消費者にそれが商標であると認識させるに足るものであるため、商標の使用に該当するというべきである。係争商品のガラス瓶の胴体部には、被告会社の登録商標、会社及び工場の住所、連絡先を明記したシールが貼付されていたが、係争ガラス瓶の底面の係争商標は何ら隠されていなかったため、係争商標が商標の使用に当たるとの判断に影響を及ぼさなかった。
以上のことから、被告会社が係争商標を目立つように表示して係争商品を製造した行為は、係争商標の使用に該当し、係争商品と第29類食用油脂などの係争商標の指定商品は同一又は類似の商品であり、裁判所は商標法第68条第2号の商標権侵害に当たると判断した。
(二)被告会社に係争商標を侵害する故意又は過失がなく、原告会社は被告会社に損害賠償を請求することはできない
係争ガラス瓶は、双方のOEM提携期間中に製造されたものであり、OEM提携終了後も、被告会社は未使用の係争ガラス瓶を保有していたため、この問題に対処するため、原告会社に電子メールで連絡した。原告会社は、新たなOEM先との連絡調整に最善を尽くすと回答し、その後何も回答はなく、さらに、被告会社は、特許商標事務所に専門家の助言を求めたこともあったため、裁判所は、被告会社が在庫の係争ガラス瓶を使い終わったことは常識に反せず、故意又は過失による係争商標の侵害には当たらないと判断した。
(三)原告会社の被告会社に対する係争ガラス瓶の使用差止め、撤去及び廃棄の請求は理由あり
前述のとおり、被告会社は原告会社の商標権を侵害したため、裁判所は、原告会社の被告会社に対する係争ガラス瓶商品の使用差止め、廃棄の請求を認容する旨の判決を下した。
四、まとめ
本件において、裁判所は、OEMメーカーがOEM期間終了後、OEM期間に製造した委託者の登録商標を付した商品を販売する行為が商標権侵害に当たることを認めた。しかし、同裁判所は本件において、商標権者が残存する係争商標商品の取扱いを元のOEMメーカーに指示しておらず、被告らは専門の法律事務所に相談していたことから、被告らに主観的故意・過失はないとし、原告に対する損害賠償責任はない旨の判決を下した。本件は現在、IPCCで控訴審の段階にあり、同裁判所の見解と訴訟の進展は注目に値する。