ニューズレター
技術図面は著作権法による保護対象となるのか
実務上、著作権法で保護される著作物は、思想又は感情の表現であって、一定の表現形式などの要件を満たすほか、オリジナリティ(創作性、中国語:原創性)を有するものとされることが多い。そのオリジナリティの程度とは、専利法(専利:特許、実用新案、意匠を含む)上の特許、実用新案、意匠において要求されるオリジナリティ(新規性)の程度ほど高くはなく、すなわち、当該著作物が完全に独創的である必要はなく(最高裁97年(西暦2008年)度台上字第1214号民事判決参照)、社会通念に照らして、既存の著作物と区別がつき、著作者自身の個性や独自性を表現するに足りる程度であればよいとされている(知的財産及び商業裁判所109年(西暦2020年)度民著訴字第102号民事判決参照)。
技術的概念を取り入れた図面(Technical Graphics、テクニカルグラフィックス)の図形著作物が著作権法により保護されるか否かについて、知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は最近、2024年11月6日付113年(西暦2024年)度民専上字第2号民事判決において、第一審判決(110年(西暦2021年)度民専訴字第52号)の認定を覆し、肯定的な見解を示している。同裁判所は、技術の表現を特徴として思想又は感情を表現する創作は、創作者がその描こうとする図面についてデザイン創作の選択を示したことが、創作者の個性や独自性を表現し、他の著作物と区別するのに十分であれば、オリジナリティがあり、著作権法上の図形著作物として保護されると認めている。
本件原告は、被告による特定の型番のフィルター製品(以下「係争製品」という)の製造販売がその特許権、実用新案権及び意匠権を侵害し、また、その中の意匠明細書の正面図(以下「係争正面図」という、下図1を参照)の図形著作物及びフィルター本体に付された6面の金属模様(以下「係争立体物」という、下図2を参照)からなる美術著作物の著作権を侵害すると主張した。本件第一審は、係争製品は専利権の範囲に属さず、係争正面図及び係争立体物にオリジナリティがないとして、原告敗訴の判決を下した。原告はこれを不服して第二審に控訴したが、第二審は、係争製品が専利権を侵害するか否かについては第一審の非侵害の判断を支持したが、係争正面図と係争立体物が著作権で保護されるか否かについては、原審とは異なる見解を示した。
図1:係争正面図
図2:係争立体物
第二審の判断は以下のとおり。係争正面図のオリジナリティは、フィルターの実体製品を透視図法によって正面図に変換せざるを得ない点にある。その寸法、仕様、構造を創作的に表現するために、図面の形状、線、空間配置などの製図技法を用いることは、創作者の個性や独自性を表現するに足りるものであり、オリジナリティがあるため、著作権法上の図形著作物として保護される。係争立体物のオリジナリティは、フィルターの各種金属層、ガスケット、穿孔、共鳴孔の特徴及びそれらの相互関係を明らかにすることができる点にある。これは、線の隙間、形状の変化、配置の組み合わせなどの美術技法によって表現し、相当な美術技法を発揮し、創作者の個性や独自性を表現するに足りるものであり、オリジナリティがあるため、著作権法上の美術著作物として保護されるものでもある。ただし、係争正面図と係争立体物がオリジナリティを有し、著作権法で保護される範囲は、フィルターの一般的なデザイン要素以外の部分に限定された。その後、第二審は、係争製品が係争正面図及び係争立体物の著作権を侵害するか否かをさらに審理した結果、係争製品は係争正面図及び係争立体物と比較して、空間分布や配置にはそれぞれ5つ及び6つの相違点があり、両者は、その構図、全体的な外観、主要な特徴及び配置などの点で、一般公衆に対する全体的な概念及び感覚において明らかに類似しておらず、実質的類似性がないとし、著作権侵害を構成しないと判断した。
IPCCは、上記第二審判決において、著作権法で保護される著作物のオリジナリティの要件は、創作者自身の精神的な活動を表現するに足りる程度に最低限の創作性を備えていればよいというものである、と改めて述べた。このようなオリジナリティの要件は、技術的性質を有する図形著作物及び美術著作物にも適用される。本件では、IPCCは、係争正面図及び係争立体物におけるフィルターの一般的なデザイン要素以外の設計上の特徴をより具体的に分析し、この分析に基づき、これらの部分はオリジナリティがあり、著作権法上の著作物として保護されると判断した。しかし今後、このような技術図面や美術著作物が、創作者の個性や独自性を表現しているという意味でオリジナリティがあると認められるためには、一般的な要素以外にどれだけの特徴が必要なのか、引き続き注目に値するところである。