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専利権譲渡契約が解除された場合、専利権は譲渡人に当然返還されるのか?
専利権(専利:特許、実用新案、意匠を含む)譲渡契約において契約違反が生じ、譲渡人により契約が解除された場合、譲渡された専利権は債権契約の解除により譲渡人に当然返還されるのか。これについて、最高裁判所は2024年7月10日付113年(西暦2024年)度台上字第719号民事判決で、明確に否定する見解を採っている。
本件では、A社は、B社と係争特許について特許権譲渡契約(以下「係争契約」という)を締結し、譲渡登記を完了したと主張した。しかし、B社は係争契約の条項に違反し、係争特許をC社に売却した。A社は、B社の無権限の処分行為を認めず、B社に係争契約の解除を通知し、B社には原状回復義務があるとして、係争契約の補充協議、民法第179条、第259条並びに専利法第96条第1項に基づき、A社の係争特許権の帰属を確認し、B社に係争特許権をA社に移転登録するよう命じ、B社は係争特許に関する処分、負担の設定、実施許諾、変更又はいかなる法律行為もしてはならないことを求める訴訟を提起した。
最高裁は、知的財産及び商業裁判所の二審判決(111年(西暦2022年)度民専上字第45号)を支持し、B社に係争特許権のA社への移転登録を命じることのみに同意し、他の2件の請求は棄却した。その見解は以下のとおり。
一、B社は確かに補充協議の条項に違反しているため、A社はB社に対し、係争契約解除後、係争特許権の移転登記を請求することができる。
二、しかし、特許権の譲渡は処分行為の1つである準物権行為であり、その債権・債務の発生原因である債権契約とは異なり、原則として独自性と無因性を有する。譲渡人の解除権行使により原因関係(契約関係)が遡及的に消滅したとしても、準物権契約は効力を失わず、権利の移転を受けた譲受人が民法第259条などの規定により原状回復義務を負うにとどまる。したがって、譲渡された特許権は、債権契約が解除されたからといって、当然に譲渡人に返還されるものではない。
三、したがって、係争契約が解除され、A社は、B社に対し、係争特許権の移転登録を請求することができるが、 B社がA社に特許権を返還する意思を表示するまでは、A社はまだ係争特許の権利者ではなく、特許権の権利を行使することはできない。よって、A社が、裁判所に対し、係争特許について特許権を有することを確認すること、B社は係争特許について処分、負担の設定、実施許諾、変更又はいかなる法律行為もしてはならないことを求めたことは、理由がなく、認められるべきでない。