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特許請求の範囲の解釈は実施例や図面によって制限できるか? --知的財産及び商業裁判所112年(西暦2023年)度行専訴字第70号行政判決


Philip Tsai

 専利法(専利:特許、実用新案、意匠を含む)第58条第4項は、「特許権の範囲は、特許請求の範囲を基準とし、特許請求の範囲の解釈時には、明細書及び図面を参酌することができる」と規定している。この規定は、同法第120条に基づき、実用新案にも準用する。しかし、特許請求の範囲は1又は複数の請求項で構成され、各請求項は文字で記載されているため、特許訴訟ではこれらの文字の解釈が攻防の焦点になることが多い。訴訟の過程で、特許権者は、他者が従来技術に基づいて請求項の有効性を争う状況にしばしば直面する。請求項の有効性を確保するために、特許権者は請求項の範囲を狭く解釈することで、従来技術と区別することができる。

 

 

しかし、請求項の解釈にはルールがあり、恣意的に行うことはできない。解釈過程において明細書や図面を参酌することは可能であるが、特許権の範囲は請求項の記載を基準とし、必ずしも請求項に記載されておらず明細書又は図面にのみ記載された制限を解釈結果に課すことはできない。この点に関して、知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は、112年(西暦2023年)度行専訴字第70号行政判決において、関連する原則を改めて明確に述べている。

 

本件では、係争実用新案が無効審判を請求され、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)の審査を受け、「請求項18について無効審判請求が成立し、取り消すべきである」との処分が下された。実用新案権者はこれを不服として訴願提起し、さらに行政訴訟を提起したが、いずれも棄却された。

 

訴訟の過程で、実用新案権者は次のように主張した。「証拠23の組み合わせは、係争実用新案請求項1に係る考案の技術的特徴を十分に開示していない。係争実用新案請求項1に記載された鋼矢板の技術的特徴は、垂直に設置されなければならず、水平に設置することはできない多くの専門家及び学者に確認したところ、海洋工学の分野では、鋼矢板は垂直に設置されるのが常識であり、係争実用新案請求項1に記載されたスクリュー203の長軸は、鋼矢板206と平行な方向に設置されなければならないこれは必然的な構造上の特徴であることが分かった」とした。しかし、裁判所はその主張を採用しなかった。

 

判決はまず、特許請求の範囲に関する解釈原則を次のように述べた。「特許請求の範囲を解釈する際には、明細書や図面を参酌することができるがしかし、特許請求の範囲は、明細書に記載された実施形態又は実施例を包括的に特定したものであり、図面の役割は明細書の記載不足の部分を補うことにすぎないしたがって、明細書の実施例及び図面を参酌した特許請求の範囲の解釈は、最も広範な合理的解釈を基準としなければならない。明細書には特許請求の範囲の内容が実施例及び図面に限定されるべきであることが明確に示されていない限り、実施例及び図面の記載によってその範囲を制限したり、さらには当事者自身に有利な解釈をして公告された特許請求の範囲において客観的に表現された特許権の範囲を変更したりしてはならない」。この原則に基づき、裁判所は、実用新案権者の主張は「係争実用新案請求項1に、明細書又は図面に記載された独立した構成要素の内容を導入しただけであり、つまり、明細書又は図面に開示されているが請求項に記載されていない内容を請求項に導入することにより、公告された実用新案登録請求の範囲において客観的に表現された実用新案権の範囲を不当に変更するものである。したがって、その主張は採用できない」と指摘した。

 

したがって、特許訴訟の当事者は、特許請求の範囲を解釈する際、裁判所を説得するために、上記の原則に特に注意を払う必要がある。

 

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