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真の専利出願権者はどのような法的根拠に基づいて専利権の返還を請求すべきか



  専利(特許、実用新案、意匠を含む)出願権の帰属をめぐる紛争が生じた場合、真の専利出願権者はどのような法的根拠に基づいて冒認出願人にその取得した専利権の返還を請求すべきかについて、専利法には明文規定がないことから、実務上に疑義が生じることがよくある。これまで幾つかの真の出願権者が不法行為による損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を主張したことがあるが、裁判実務ではほぼ肯定的な見解であった。 

 例えば、知的財産裁判所103年度民専訴字第71号民事判決(判決日:201563日)では、「専利権は無体財産権であり、受益者には法律上の原因がないにもかかわらず、受益者が他人が専利権を出願できる創作を無断で自己の名義で出願し専利権を取得し、そのために本来その財産権を所有する他人に損失を及ぼした場合、受益者には不当利得が成立し、他人は民法第179条の不当利得の規定に基づき受益者に当該財産権の返還を請求することができる」と明確に指摘された。また、知的財産裁判所107年度民専上字第21号民事判決(判決日:20181128日)とその最近下した109年度民専上字第18号民事判決(判決日:2021429日)のいずれにおいても、「研究開発の成果が専利主務官庁による登録査定を経て専利権を受けることができる客体となった場合、すでに私法上の財産権という属性を有しており、真の専利出願権者はその権利を保護するため、不当利得、不法行為又は債務不履行のいずれに基づき給付の訴えを提起し、冒認出願人に専利権の返還を請求することができる」と指摘された。 

 ただし、上述した見解に対し、最高裁判所が2021527日付で下した109年度台上字第2155号民事判決(一審判決:知的財産裁判所106年度民専訴字第72号民事判決(判決日:2018329日)、二審判決:知的財産裁判所107年度民専上字第17号民事判決(判決日:2019411日))では、異なる立場を採っているようだ。 

 本件の被上告人(一審原告)は、発電機製造メーカーAである。被上告人Aは、上告人B(一審共同被告)が無断でその商品に関する技術に基づき実用新案を出願し、かつ、当該出願がすでに智慧局により登録公告され(以下「係争専利」という)、上告人Bは法律上の原因なく利益を受けたことが明らかで、かつ、その係争実用新案の出願権者という地位を故意に侵害し、そのために係争実用新案権を享有することができない損害を受けたことから、民法第179条、第184条第1項の規定に基づき、自己が係争実用新案の出願権の所有者であることを確認し、並びに上告人Bに係争実用新案権を自己に移転するよう請求することを主張した。原審判決(つまり知的財産裁判所の107年度民専上字第17号民事判決)もまた、Aは上述した法律規定に基づき、自己が係争実用新案の出願権の所有者であることを確認し、及びBに係争実用新案権を自己に移転するよう請求する旨の主張はいずれも理由ありと認定していた。しかし、最高裁判所はこの見解を覆し、その論理構成を以下のとおり要約した。 

1、実用新案権の権利帰属をめぐる紛争が生じた時、主務官庁に権利者名義の変更を申請するか、又は当事者間で実用新案権を譲渡することに合意することに加え、専利法第120条により準用する同法第35条の規定に基づき、真の考案者は同一の考案について実用新案を出願することしかできない。 

2、真の考案者は、主務官庁が法により実用新案権の付与を公告する前に、直接その実用新案権が冒認出願人の侵害を受けたとして、不法行為規定に基づき冒認出願人に現状回復を請求して当該実用新案権を自己に移転するよう請求することができるのか。また、不当利得とは、法律上の原因がなく利益を受け、他人に損害を及ぼしたことを指し、受益者が受けた利益と被害者が受けた損害との間には、因果関係は存在する必要はある。冒認出願人が取得した実用新案権は、主務官庁が付与したもので、真の考案者は主務官庁が法により実用新案権の付与を公告する前に、その被った損害が当該実用新案権であるとして、当該実用新案権の返還を請求することができると認めるか否かについては、いずれも更なる議論の余地がある。 

 しかし、主務官庁は、権利帰属の問題について、従来、主務官庁の権限に属する事務でなく、私権の争いに属するもので、当事者は先ず、司法ルートで解決すべきであるとの考えで、最高裁判所が指摘した専利法第35条の規定(「特許権につき、特許出願権者又は特許出願権共有者が、当該特許の公告日から2年以内に、第71条第1項第3号の規定により無効審判請求を提起し、並びに無効審判で取消が確定した日から2ヶ月以内に同一の発明につき特許出願をした場合、当該取消が確定した特許権の出願日をその出願日とする。前項の規定により出願した案件については、改めて公告しない。」)に基づき、専利審査基準第五篇第1章「専利権の無効審判請求」でも真の権利者は裁判所の判決などの書類を無効審判請求の証拠として提出すべきと要求されており、また、専利法第35条は前述した無効審判は特許査定の公告日から2年以内に請求しなければならないという制限があるだけでなく、かつ、無効審判で特許権の取消が確定した日から2ヵ月以内に改めて専利を出願することを要求するもので、民事訴訟及び無効審判手続、さらにはその後の行政訴訟手続でさえ一般的に数年も費やすことになり、実務上当該条文規定に基づいて権利を取り戻すことができる者は極めて稀である。また、専利法第35条の制度設計では、先ず冒認出願人が取得した専利を取消して改めて出願することが求められるため、権利の存在及び範囲の変動にも高い不確定性が存在している。よって、実務上は、民法上の請求権に基づいて直接裁判所に判決で冒認出願人が取得した専利権を真の権利者に「返還する」ことを請求するという救済ルートを構築してきた。最高裁判所は前述した判決において、これらのやり方に対して異なる見解を採用しているようで、今後真の権利者が順調に権利を勝ち取ることはできるのか注意に値するものである。

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