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著作権法一部条文改正案のポイント


Cathy C. W. Ting/Sophia Chen

  デジタルテクノロジー及びインターネットの高度な発展に対応するため、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は国際条約及び各国の著作権法制度を参考にして著作権法一部条文改正案を提出し、202148日に行政院(日本の内閣に相当)で審査され決定された。今回の改正は新設9条文、改正37条文で過去20年で最大の改正案となる。改正ポイントは以下のとおりである。


(一)「公開放送」及び「公開伝送」の定義を修正し、インターネット技術で著作権を区別しない


 ネットの帯域幅の拡大及び関連する応用技術の急速な発展に伴い、無形的な利用に関する権利が段々著作権法の核心となっている。インターネットを通じてリニア配信番組や放送番組を伝送することが一般的であり、消費者は技術的に権利の種類を区別することが難しい。よって、同じ番組であれば、テレビ局やラジオ局による放送であれ、インターネットによる放送(再生不可)であれ、いずれも「公開放送」に該当するものとし、インターネット技術をもって「公開放送」か「公開伝送」か区別することはなくなる。


(二)「再公開伝達権」を新設

 

 新設した再公開伝達権とは、公開放送、公開伝送された著作物の内容を、公衆の場所で同時にスクリーン、スピーカー又はその他の機械設備を用いて公衆に伝達することを指す。例えば、量販店にスクリーンを設置してYouTube動画を放送することは改正後には再公開伝達とされる。著作権主務官庁(智慧局)の従来の解釈では、上述した機器の純粋な起動で、著作物の利用に係らないとする見解は、著作権者の権益を保障するため、今後適用されなくなる。


(三)著作財産権の制限規定(フェアユース)を改正


 立法又は行政目的、司法及び行政手続き、教育目的、著作物アーカイブの紹介の目的、公法人著作物、引用、非営利目的、通常の家庭用設備による再公開伝達、美術又は撮影著作物の展示解説、及び時事問題の転載などの規定について改正又は新設を行うとともに、国外の立法例を参考にし、遠隔授業、国家図書館デジタルアーカイブ、アーカイブ機構の紹介の目的などのフェアユース(合理的使用)の規定を新設した。


(四)著作権者不明の孤児著作物の強制許諾規定を新設


 著作権者が不明又はその所在が不明な著作物(孤児著作物)について、その利用を許諾できない場合、文化の継承と流通の妨げとなる。今回の改正後、現行の文化創意産業発展法における不明な著作物の強制許諾規定を著作権法に移行し、さらに時効を考慮し審査期間において申請者は保証金を供託すれば先に利用できる旨を新設し、申請者が主務官庁による許可査定を待つ時間を短縮する。


(五)ネットにおける海賊版の販売広告の掲載を権利侵害とみなす旨を新設


 現在、ネットにおける海賊版販売の情報掲載に対する罰則はない。海賊版の流通をいち早く阻止するため、ネットにおける海賊版の販売広告などの情報掲載を権利侵害とみなす旨を新設した。例えば、海賊版音楽ファイルが含まれるUSBの販売、又はゲーム機を買うと海賊版ゲームソフトがプレゼントされるなどの情報がネットに掲載された場合、2年以下の有期懲役に処し、民事責任を負うことになる。


(六)使用料相当額を損害賠償額として請求できる旨を新設


 権利侵害の被害者が民事訴訟を提起し、裁判所へ賠償金額の判断を請求するとき、被害者の立証責任を軽減し、刑事訴訟よりも民事損害賠償を選択する意欲を高めるため、許諾によって得た使用料(ロイヤリティ)を損害賠償額の算定根拠とすることを選択できる旨を新設する。


(七)6ヶ月の法定刑の下限を削除


 現行法では、一部の著作権侵害について法定刑の下限を6ヶ月としており、これは、軽微な事件が過重な刑事責任を問われるというバランスがとれない問題を引き起こす可能性がある。そこで、今回の改正により、当該下限規定が削除され、裁判所が個別案件の情状により酌量することができ、軽微な罪に対する刑事責任過重という問題を回避できることとなる。


(八)雇用者と被雇用者又は被招聘者と出資者との間で著作財産権の帰属を約定できる旨を改正


 職務著作及び出資して人を招聘して完成させた著作について、現行法では著作者に関する約定がない場合、その著作者はそれぞれ被雇用者及び被招聘者に帰属すると規定されている。一方、著作財産権は契約により雇用者又は被雇用者及び被招聘人又は出資者が全部を享有すると約定することができるのみで、柔軟性に欠け、商業取引にも合致しない。そこで、契約の自由原則及び産業発展による著作財産権取得のニーズに合致するよう、今回の改正により、雇用者と被雇用者又は被招聘人と出資者との間で著作財産権の帰属を約定することができるほか、第三者に付与、又は各自が権利の一部を享有すると約定することもできるようにした。


(九)著作物の利用促進のため、著作財産権の質権設定登記の規定を新設


 文化創意産業発展法第23条には著作財産権の質権設定登記の規定があるが、その適用範囲は文化創意産業に限られており、社会発展のニーズに合致しないことから、全ての著作財産権者が適用できるよう、著作財産権の質権設置登記の規定を新設した。


 今回の著作権法改正案は2021412日に立法院(日本の国会に相当)へ送られ、2021423日に立法院での一読が行われて経済委員会に付託され審議中である。

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