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債権者による仮差押決定の取消申立ては、仮差押の申立てが違法であるか否かを問わず一律に債務者に対して賠償責任を負うのか


Alina Tang/Frank Lee

 民事訴訟法第531条第1項には「仮差押の決定が最初から不当により取り消され、又は第529条第4項及び第530条第3項の規定により取り消された場合、債権者は債務者が仮差押又は担保供託によって被った損害を賠償しなければならない。」と規定されているが、同法第530条第3項には「仮差押の決定について債権者はこれの取り消しを申し立てることができる。」と規定されている。債権者による仮差押決定の取消申立てに関し、当初の仮差押の申立てが違法であるか否かを問わず、債権者は一律に債務者に対して賠償責任を負うのかについて、裁判実務において異なる見解がよく見受けられる。

 知的財産裁判所は20151130日付の104年度民公訴字第1号民事判決において以下のように判示している。「債権者による仮差押の申立てにより、債務者に損害をもたらすことは、本質的に不法行為であり、その損害賠償責任の成立要件は以下のとおり、1、加害行為があること。2、行為に違法性があること。3、他人の権利又は利益を侵害すること。4、損害が発生したこと。5、加害行為と損害発生との間に相当な因果関係が存在すること。6、責任能力を有すること。」、「係争専利の有効性及び原告が製造販売した係争製品の組み合わせが係争専利を侵害するか否かの判断については、仮差押執行後、多年に渡る本件訴訟及び行政訴訟手続を経て初めて確定したもので、被告が2007104日に仮差押を申し立てた際に、係争専利には取消すべき原因が存在する、又は仮差押に係る本案訴訟には勝訴する可能性がないことを知っていたと言い難く、その仮差押の申立ては違法性があるとは言えないことから、被告が専利権を不当に行使して原告の権利を不法に侵害したと証明することもできない。ゆえに被告の仮差押の申立ては法による正当な権利行使であり、損害賠償責任を負うべきではないなどという抗弁は採用できる。」として原告(仮差押債務者)の訴えを棄却した。

 仮差押債務者による控訴を経て、知的財産裁判所は2016922日付の105年度民公上字第1号民事判決で第一審判決の判断を維持し、その控訴を棄却した。同裁判所は第二審判決において、「仮差押決定の取消しについて、仮差押の決定に対する抗告ではなく、抗告裁判所は仮差押決定を下した際に客観的に存在する状況により、この決定により取り消されるべきではなく、本案訴訟の敗訴が確定したことで当該決定が取り消され、仮差押決定を下した後の事情の変更による取消しに過ぎないと認め、最高裁判所の関連判決主旨を参照にすると、民事訴訟法第531条第1項に規定する最初から不当による取消しではないことが明らかである。控訴人は民事訴訟法第531条第1項に基づき、被告に対して損害賠償を請求することについて理由はない。」と判示した。

 しかしながら、仮差押債務者による上告を経て、最高裁判所は2018111日付の107年度台上字第1782号民事判決において第二審判決を破棄して原審に差し戻したとした。その判断は以下のとおりである。「本件上告人の主張は、係争仮差押の決定は同法第530条第3項の規定により取り消され、同法第531条第1項の規定により仮差押執行により被った損害を賠償すべき、係争仮差押の決定は最初から不当により取り消された後、同法第531条第1項の規定により賠償を請求すると主張するものではなく、第二審判決は、被上告人が自ら仮差押決定の取消しを申し立てることで賠償責任を負うべきであるという上告人の主張についてはまったく論じておらず、直接、仮差押決定は仮差押が下された後の事情の変更により取り消され、上述した最初から不当により取り消されたものには属さないとし、直ちに上告人に不利な判決を下した。よって、同判決には、理由不備の違法があることが明らかである。その後、知的財産裁判所は2019117日付の107年度民公上更(一)字第2号民事判決において、上記最高裁判所の判決と同じ見解を採用するよう改め、以下のように判示した。「民事訴訟法第531条規定の立法目的は、主に債権者による仮差押制度の濫用防止にあることから、債権者に損害賠償責任を課すことにより、債務者を保護する。立法沿革から分かるとおり、立法の趨勢は、債務者による賠償請求の機会を徐々に緩和し、債務者により便利な賠償請求手続を提供し、債務者の権利保護を重視してきていることである。本件債権者つまり被控訴人は、民事訴訟法第530条第3項の規定により仮差押決定の取消しを申立てたからには、仮差押の決定が債権者の申立てにより取り消された時、債務者つまり控訴人が仮差押により被った損害に対して、債権者つまり被控訴人は賠償責任を負うべきであることが明らかである」、「被控訴人は、民事訴訟法第531条第1項に規定する債権者が自ら仮差押決定の取消しを申し立てることについて、やはり法律上それが『申立濫用及び任意の自主取消』の不当な請求に属するか否かを評価すべきであると抗弁したが、仮差押の決定は必要ではないため、債権者は取消しを申し立てた。必要がないにもかかわらず、債権者はなおも仮差押を申し立てたことは、当然債権者の責に帰すことができる。よって、債権者は債務者が仮差押によって被った損害を賠償すべきである。本案敗訴の判決が確定していることから、そもそも被控訴人(債権者)に帰責性があることが証明できるのは言うまでもない。

 最終的に最高裁判所は2021310付の109年度台上字第3134号民事判決では、その前の第三審判決及び知的財産裁判所の差戻審判決の見解を維持し、つまり、本案債権者は債務者が仮差押により被った損害を賠償すべきと判断した。

 裁判所が本案において示した法律的判断が、裁判実務において一致した見解となっているか否かについては尚も観察が待たれる。高等裁判所及びその支部による200011月の民事法律問題座談会での結論によると、「『仮差押決定は債権者の申立てにより取り消される』とは、民事訴訟法第531条の規定により『仮差押決定が最初から不当により取り消される』、『仮差押債権者が期限内に提訴していない』とともに賠償請求の原因として挙げられるものであり、仮差押債務者は当該規定により仮差押債権者に対し賠償を請求することができる。よって、『仮差押決定債権者の申て立により取り消される』という要件について、債権者の請求が不当である場合に限って』仮差押債権者は仮差押債務者に対し賠償責任を負うべきと限定解釈されるほうがより妥当である」という意見が多かった。しかし、前述した最高裁判所と知的財産裁判所の判決は、上述の座談会の結論とは異なる見解を採っていることが明らかで、債権者が本案判決敗訴後に仮差押決定の取消しを申し立てた場合に、当初の仮差押決定の申立ては正当なものであっても、一律に債務者に対して賠償責任を負うと考えているようで、この見解が合理的かどうかについては、疑う余地がある。

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