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智慧財産局の拒絶理由先行通知は、刑事上の商標権侵害の故意を判断するための参酌要素とすることができる


Ruey-Sen Tsai/Celia Tao

 他人の商標を侵害する行為については、台湾の現行商標法の下において、商標権侵害者が民事責任だけでなく、刑事責任まで問われる可能性もある。商標権侵害における刑事責任の客観的構成要件は民事責任と類似している。これについて、商標法第95では、商標権侵害者が同一又は類似の商品又は役務に、登録商標又は団体商標と同一又は近似の商標を使用し、関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるという要件を満たして初めて該当すると明文で規定されている。客観的要件に加え、商標権侵害者はまた商標権を侵害する意図を持って初めて商標権侵害罪が成立することになる。

 刑事訴訟では、通常、商標権侵害者に侵害の故意があることを立証することは比較的困難である。しかし、過去の裁判実務によれば、商標権侵害者が智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)に商標出願を行い、拒絶査定を受けた場合、智慧局から発せられた拒絶理由先行通知書は刑事上の商標権侵害の故意を判断するための参酌要素とすることができる。これについて、知的財産裁判所は最近下した108年(2019年)度に刑智上易字77号刑事判決においても同じ見解を示した。

 本件では、被告は被疑侵害商標が付されたレインコート製品を製造、販売した。被告は、告訴人に商品を注文したことがなく、告訴人の登録商標の存在を知らなかったと主張した。商標法第95条第3項には過失犯を処罰する旨の規定がないため、被告の行為に対して商標権侵害の刑事責任を問うことができず、無罪を言い渡すべきであるとも主張した。

 この議論について、知的財産裁判所は以下のような見解を示した。被告が智慧局に商標出願をしたが、それは告訴人が所有する商標と非常に近似するものであるため、智慧局が審査した後に被告の出願を拒絶した。これに基づき、知的財産裁判所は、被告が智慧局から拒絶理由先行通知を受け取ってから、その出願及び使用した被疑侵害商標の図案が告訴人所有の商標と近似ているため、誤認混同を生じさせるおそれがあると判断される可能性があることを認識できるはずであると示した。また、被告は、被疑侵害商標の図案が付されたレインコートが市場に流出することを防止することもしなかった。よって、被告が高い近似性のある被疑侵害商標を使用して取引市場で被疑侵害品を販売していることから、被告はその行為が告訴人の商標を侵害するおそれがあることを予見できたにもかかわらず、被疑侵害品を所持、販売しており、被告の主観上に係争商標権を侵害する故意があったことは明らかである。

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