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知的財産裁判所による「複数の引用文献」を組み合わせる動機づけの判断


簡秀如/Elina Yu

  特許無効審判手続において、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)であれば、複数の引用文献を組み合わせる「動機づけ」があるか否かは、従来特許権者と無効審判請求人が係争特許の「進歩性の有無」を争う攻防の焦点となってきた。これについて、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)も特許審査基準において判断原則を明文化している、近年いくつかの審査基準の改訂からみると、智慧局が「動機づけ」の判断基準に修正があることが分かる2013年版の特許審査基準では、「関連する従来技術を組み合わせる動機づけがあるか否かについては、原則として、以下の考えにより関連する従来技術と本願発明との関連性を総合的に考慮する。なお、そのうちの1つが欠けているだけで、組合せの動機づけが欠けていると認定してはならない。(a関連する従来技術と本願発明との技術分野の関連性、(b関連する従来技術と本願発明とが解決しようとする課題の関連性、(c関連する従来技術と本願発明の機能又は作用の関連性、(d関連する従来技術における本願発明に関する教示又は示唆。」と記載されていたが、20177月版の特許審査基準では、「複数の引用文献の技術内容を組み合せる動機づけがあるか否かを判断する時、引用文献の技術内容と本願発明の技術内容との関連性又は共通性ではなく、複数の引用文献間の技術内容の関連性又は共通性を考慮すべきである」と改訂されることとなった。その改訂理由は、係争特許の内容を参酌することにより生じる後知恵を防止するためである。この改訂内容は現在も適用されている。知的財産裁判所が202078日に下した109年(西暦2020年)行専訴第3号判決では、上記改訂後の基準(すなわち現行基準の規定)を採り、複数の引用文献間の関連性と共通性について検討を行った。


 本件原告(特許権者)は、無効審判請求人が提出した複数の引用文献において、その解決しようとする技術的問題と達成しようとする効果は、係争特許請求項の技術的特徴である「グリッド線溝(grid-line grooves)」が解決しようとする技術的問題と達成しようとする効果と同じではないため、当業者は複数の引用文献を組み合せる動機づけがなく、また、それらに基づいて係争特許に係る発明を完成することもできないなどと主張した。しかし、裁判所は原告の主張を採用しなかった。その判決では、「当業者であれば複数の引用文献の技術内容を組み合せる動機づけがあるか否かを判断する時、複数の引用文献間の技術内容の関連性又は共通性を考慮すべきである」と指摘し、また、2017年版(7月)の特許審査基準を引用し、組合せの動機づけの有無について、「技術分野の関連性」、「解決しようとする課題の共通性」、「機能又は作用の共通性」及び「教示又は示唆」との考えを総合的に判断することができると述べ、さらに、一般的に、上記考えが多くの該当すればするほど、当業者が複数の引用文献の技術内容を組み合わせる動機づけが高まるが、特別な状況下では、1つの有力な考えのみに基づいて、複数の引用文献の技術内容を組み合わせる動機づけがあると認定することもできると指摘した。裁判所は最後に、「証拠23及び68はスクライブホイール(scribing wheels)に関連する技術分野の内容で、いずれもスクライビング又はカッティングの作用、機能の共通性を有している。当業者は、スクライビング不良の問題に直面した場合、自ずと証拠236及び7の従来技術の内容を参酌し、その開示された教示又は示唆に基づいてそれらを組み合わせて運用する合理的な動機づけがある」として、係争特許は進歩性を有しないと認定した。

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