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進歩性判断における組合せの動機づけとなり得る技術分野の関連性について



 発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)であれば複数の引用文献の技術内容を組み合わせる動機づけがあるか否かは、特許の「進歩性の有無」を判断する際の重要な基準となってきた。原則的には、複数の引用文献間の「技術分野の関連性」、「解決しようとする課題の共通性」、「機能及び作用の共通性」及び「教示又は示唆」との考えを総合的に考慮しなければならない。

 

 具体的な事件においては、複数の引用文献の技術分野及び解決しようする課題に違いがある場合、裁判実務では、関連性、共通性についてどのように考慮及び判断するのか注意に値するものである。

 

 最高行政裁判所2020730日付の109年(西暦2020年)度判字第411号行政判決では、上記のことについて完全なる分析と論述が行われており、参考になる見解が示されている。本件では、係争特許は「ファン及びその製造方法」に係る発明であり、無効審判証拠において、証拠1はスピンドルモーター、証拠2はファン及びモーター、証拠3はファン、証拠5は薄型化ファンローターに関する特許で、いずれも係争特許と完全同一ではなかった。よって、特許権者は、無効審判訴訟において、自社はスピンドルモーターの製造業者ではなく、関連する製造経験と知識も持っておらず、スピンドルモーターが記載された引用文献には、技術分野の関連性が欠けていると主張した。

 

 しかしながら、最高行政裁判所は、無効審判証拠の技術内容の技術分野を判断するときは、当該技術が適用される物、原理、メカニズム又は作用等を考慮することができると明確に示した。ファンとスピンドルモーターはいずれもモーターの回転原理を利用したものであることから、ファン関連技術分野の当業者にとって、ファンのモーター構造の研究開発及び創作を行う際に、スピンドルモーターの技術内容を参酌する可能性があり、その両者の技術分野は関連していると言える。よって、上記の複数の引用文献に技術分野の関連性があると認定した。

 

 また、「解決しようとする課題の共通性」の判断について、証拠12及び3の明細書の記載により、証拠1が解決しようとする課題は、優れた衝撃耐性と長寿命ベアリングを備えたスピンドルモーターの簡単な構造及びその組立方法の提供で、証拠2は、モーター自体の放熱の改善で、証拠5は、薄型化ファンローターの熱変形を制御・抑制し、その組立て精度を向上させることで、証拠3は係争特許の従来技術であることから、回転軸とホイールハブの結合強度を改善する従来のインペラー(羽根車)の構造だけが開示されており、それらが解決しようとする課題は記載されていないことが分かる。よって、上記明細書の記載から、証拠123及び5が解決しようとする課題が同一であるとは認定することはできない。

 

 しかしながら、最高行政裁判所は、各証拠の明細書の記載を調査したところ、係争特許の発明は薄型ファンのモーター構造問題を解決するためのもので、証拠123及び5はいずれも電子製品の小型化を実現するためにそのモーターは薄型化が必須であることから派生する構造設計に関する問題であることから、複数の証拠が解決しようとする課題にも共通性があり、当業者であれば、当該複数の証拠が開示する技術内容を参酌してそれらを組み合わせる動機づけがあることは当然であると認定した。

 

 また、「当業者」の確立については、特許権者は、原判決では引用文献の特許明細書に記載された内容のみで「通常の知識を有する者」の知識レベルを確立したと主張したが、最高行政裁判所は、裁判所は訴訟手続きにおいて、係争特許に記載された従来技術及び無効審判請求人が提出した証拠に開示された技術内容に基づき、「当業者」及び出願時の当業者の技術水準を確立し、さらにそれらによって無効審判証拠の組合せが係争特許の進歩性欠如を証明するに足るか否かを認定することもできると重ねて述べた。

 

 以上から、複数の無効審判証拠の技術内容、技術分野及び解決しようとする課題が異なる場合にも、当該技術が適用される物、原理、メカニズム又は作用等について考慮してその関連性及び共通性を判断することができる。

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