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「未登録商標」のライセンシーは、許諾関係に基づいて「登録商標」の商標権者に対抗することはできない


Ruey-Sen Tsai/Celia Tao

 台湾の現行商標制度においては登録主義が採用されており、すなわち、台湾で商標権を取得するには、商標登録出願をして登録査定を受けることが必要である。「登録主義」の下で先使用者が被るであろう不利益を軽減するために、商標法第36条第1項第3号にいう「善意の先使用」の規定では、他人の商標の登録出願日前に、善意で同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は役務に使用する場合、他人の商標権の効力による拘束を受けないとされている。現在の実務では、「善意の先使用」を主張した者は、「自分の商品又は役務の販売」を目的として商標を使用しなければならないといった見解が多く見られる。「自分の商品又は役務を販売する」意図ではなく、「他人のために他人の商品又は役務を販売する」というライセンシーとしての地位に基づいて商標を使用する場合、商標法第36条第1項第3の「善意の先使用」を主張する余地はない。
 
 商標権侵害で訴えられたとき、ライセンシーは許諾関係に基づいて「善意の先使用」の抗弁を主張することができないが、許諾関係の法律状態を信頼するため、商標権侵害について故意又は過失がないと主張することができるかどうかは、個別案件により認定されるべきである。これについて、知的財産裁判所は最近下した107年(西暦2018年)度民商訴字第55号民事判決、及びその控訴案件の108年(西暦2019年)度民商上字第8号民事判決において、参考に値する見解を示した。
 
 本件では、原告会社は2013から国内の某有名レストランの営業譲渡を受け経営を始め、その後、2016年に当該レストラン名を商標登録(以下、「登録商標」という)を受けた。しかし、原告会社がこのレストランの経営を始める前に、当該レストランの元の所​​有者は被告会社に対し、その製造に係るレトルト食品に当時登録されていなかったレストランの商標名称及び図形(以下、「未登録商標」という)を表示することを許諾し、これに対して書面で1年目と2年目の契約も締結された。契約終了後、元の所有者と被告の双方は契約を更新していなかったにもかかわらず、被告は依然としてそのまま継続的にそのレトルト食品に商標を使用し続けたため、原告は被告に対し、被告がその「登録商標」を侵害したとして民事訴訟を提起した。これに対し、被告は、その商標の使用については、商標法第36条第1項第3の「善意の先使用」の規定は適用されると主張した。
 
 本件の争点について、第一審裁判所は、元の所有者は、被告会社は両者間の1年目と2年目の契約が終了した後も「未登録商標」を使用し続けたことを明らかに知っていたにもかかわらず、被告の行為を阻止せず被告に料理を教え続けたことから、元の所有者と被告会社との間に「黙示の使用許諾」関係が存在しており、しかも中断されなかったことを証明するに足りると判示した。しかし、被告による「善意の先使用」の抗弁について、第一審裁判所は、被告は最初からライセンシーとしての地位で係争商標を使用していたため、「善意の先使用」の抗弁を主張することはできないが、被告は合法的に使用許諾を受けてその「未登録商標」を使用し、かつ、その許諾関係もまだ終了しておらず、被告は善意をもってこの法律状態を信頼するため、係争商標権の侵害に係る故意又は過失がないことは明らかである、とした。
 

 第二審裁判所は、第一審裁判所による、元の所有者と被告との間の「黙示の使用許諾」関係、及び被告が「善意の先使用」の抗弁を主張することができないという第一審裁判所の見解に反対しなかった。ただし、第二審裁判所は、本件において原告が所有する「登録商標」と「未登録商標」が同じ権利の対象ではないため、被告はその元の所有者との間の許諾関係に基づいて原告に対抗することができないと指摘した。また、商標登録は公開情報であり、かつ、被告は元の所有者から係争商標の出所を確認することができるため、被告に主観上商標権の侵害に係る故意又は過失があると認めるべきであり、被告が当該商標の使用権を有することを信頼していたとの反論は採用できない、とした。

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