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図形商標の類似の程度は、外観デザインの対比に重きを置き、関連消費者の認知を基準すべき


Ruey-Sen Tsai/Celia Tao

 智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)が公告・施行した「混同誤認の虞」に関する審査基準によると、2つの商標間に誤認混同の虞があるか否かを判断する際に、(1)商標識別性の強弱(2)商標の近似とその近似の程度(3)商品/役務の類似とその類似の程度(4)先権利者による多角化経営の状況(5)実際の誤認混同の状況(6)関連消費者の各商標に対する熟知度(7)係争商標の出願人が善意であるか否か(8)その他誤認混同の要素の8つの要素を考慮しなければならない。智慧局は、これら8つの要素を参酌する際に、案件の状況に応じて各項の参酌要素に対する強弱の要求が異なる可能性がある。そのなかで、「商標の近似とその近似の程度」は商標間で紛争が起きる際に最もよく見受けられる争点である。図形商標の近似の程度の判断については、「誤認混同の虞」に関する審査基準において「外観デザインの対比」に重きを置くべきとされている。

 

2つの図形商標間に誤認混同の虞があるか否かを判断する際に、商標の外観、観念の近似程度、及びその他の誤認混同の要素との比重をどのように総合的に考慮すべきかについては、実務上よく議論されている。この議題について、知的財産裁判所107年(2018年)度行商訴字第99号行政判決では、商標異議申立の具体的な案件において参考に値する見解が示されている。

 

本件の係争商標は、「傾いた円形の果物の輪郭」、「果肉部分の右上方の内側にある黒いヘタ」及び「果肉部分の外側の2枚の果肉部分と分離した大小異なる、上方に伸び相対する葉っぱ」の組み合わせからなる果物状の図形であるのに対して、引用商標は「正面に置いたリンゴの果肉部分」、「果肉部分の右側のかじった跡」及び「上方の1枚の果肉部分と分離した葉っぱ」の組み合わせからなる果物状の図形である。係争商標と引用商標はいずれも第9類の「コンピュータソフトウエア、コンピュータハードウエア」及び第42類の「コンピュータ周辺機器の販売、コンピュータプログラムの設計」などの商品・役務への使用を指定していた。

 

異議申立人は、係争商標の果肉部分と分離した楕円形の葉っぱのデザインは、引用商標の葉っぱのデザインと極めて近似していると主張。また、異議申立人は最近米国でテストを実施したところ、果肉部分と分離した葉っぱは消費者が引用商標を識別する要部であることが証明されたことを指摘した。このほかに、異議申立人もまた、係争商標の出願時に、引用商標はすでに国内で一般消費者に広く認知されている著名の程度に達しているため、より大きな保護が付与されるべきであると主張した。しかしながら、異擬申立不成立処分(維持審決)を下した智慧局は、係争商標の果肉部分は完全でかつ2枚の大小異なる葉っぱを有する柑橘類の果物であるのに対し、引用商標はかじった跡があり葉っぱ1枚だけのリンゴであると反論した。被申立人はさらに、係争商標が観念上「柑橘」という意味合いを持っているのに対し、引用商標の意味合いは「リンゴ」であるため、両商標は明らかに別物であると説明した。

 

知的財産裁判所は先ず、引用商標は主にリンゴのシルエットで、かつ国内の裁判実務ではすでに高い知名度に達しており、引用商標は強い識別性を有すると認めるべきであることを明らかにした。両商標の近似性について、同裁判所はさらに以下のように述べた。智慧局は、係争商標は柑橘類の果物であるため、両商標は観念上異なる印象を与えると主張したが、両商標の造形全体は「円形の果物」と「上方の果肉部分と分離した葉っぱ」の組み合わせからなる果物の造形図から逸脱しておらず、また、関連消費者の認知を基準とすると、係争商標の円形の輪郭、ヘタ、葉っぱなどの外観的特徴は、柑橘類の果物と必ずしも認識されるものではない、とした。

 

注意すべきは、裁判所が智慧局に引用商標に関連する果物図形の紛争事件の資料を提出するよう命じ、これらの過去智慧局が審査した案件の結果について、下側の円形のリンゴの図形、果肉部分の右側が完璧で欠けた部分がないもの、上方に葉っぱはないが枝があるものもしくは葉っぱが1枚か2枚あるもの、果肉部分が正面に置かれたものか斜めに置かれたもの、のいずれについても智慧局は異議成立又は無効成立としたことが明らかになった。よって、平等原則及び行政の自己拘束の法理に基づき、係争商標と引用商標との間に誤認混同が生じる虞があると認定すべきであるとしたことである。

 

知的財産裁判所は智慧局に直接係争商標の取消を命じる旨の判決を下した。

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