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意匠権の範囲は図面を基準とする



 現行専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第136条第2項では、「意匠権の範囲は、図面を基準とし、意匠説明書を参酌することができる」という意匠権の権利範囲解釈の基本原則が明文化されている。意匠は物品の外観に施された視覚的創作を保護するものである。したがって、その意匠権の範囲は図面に開示された内容を基準とするのに対し、特許権(実用新案権)の範囲は特許(実用新案登録)請求の範囲に文言で記載された内容を基準とすることで、両者は異なる。また、意匠登録出願人が説明書の文言を利用してその図面に開示された内容を補助的に説明することができることを考慮すると、その図面が保護を請求しようとする範囲を理解するため、意匠権の範囲を解釈するときは、その説明書を参酌することができる。

 

知的財産裁判所108年(西暦2019年)度民専訴字第6号民事判決において、裁判所は、原告の意匠登録に無効理由がある旨の被告の主張に対して判断を示した。本事件では、原告は意匠に係る物品「スキンケア用美顔器」とする意匠登録第D192283号の意匠権(以下「係争意匠」)を有する意匠権者である。原告は、被告に対し、被告が販売した「アクネファイター」(以下「係争製品」という)と係争意匠に係る物品との外観や造形はいずれも同一であることから、係争意匠を侵害していると主張した。これに対して被告は、係争意匠の出願日より前に登録された実用新案登録第M505299号の実用新案権(以下、「被告証拠1」という)に基づいて係争意匠に無効理由があると主張した。裁判所は知的財産案件審理法(中国語「智慧財産案件審理法」)第16条第12項の規定により、係争意匠の有効性について自ら判断した。

 

係争意匠の権利範囲の判断に関して、裁判所は、判決において、意匠権の範囲は「物品」と「外観」から構成されると述べた。登録査定され公告された係争意匠の図面により、さらに説明書における意匠の名称及び物品の用途を参酌したところ、係争意匠が応用される物品は確かに、皮膚の黒ずみ吸出、ニキビ除去及び栄養液の浸透に用いる「スキンケア用美顔器」である。登録査定され公告された係争意匠の図面により、さらに説明書における意匠の説明を斟酌したところ、係争意匠の外観は確かに、「図面の各図から構成される全体形状」である。係争意匠は意匠の説明に、「特に、その前面と背面の外殻の表面はいくつかの異なるダイヤモンドのファセット(切子面)の要素から構成されている」と記載されているが、その図面には対応する意匠の特徴が開示されておらず、当該記載は補助的に説明するためのものではなく、当該文言で記載された外観の形を推測することも困難であることから、係争意匠の権利範囲は、図面を基準とし(専利法第136条第2項を参照)、係争意匠の図面に開示されていない「特に、その前面と背面の外殻の表面はいくつかの異なるダイヤモンドのファセット(切子面)の要素から構成されている」という外観の説明の部分が含まれていないことがわかる。

 

上記の係争意匠の権利範囲の分析結果に基づいて、裁判所は、係争意匠の主な形状の特徴は被告証拠1の図2と類似しており、その相違点は背面の外殻及び中間部の円筒の外側に施された帯状の細部装飾のみにあり、当該細部装飾は、当該意匠の当業者又は一般なデザイナーが被告証拠1の図2に基づいて容易に思いつく創作に過ぎず、かつ当該装飾が施された後の軽微な相違は、係争意匠に係る物品の全体の外観に異なる視覚的効果を生じさせることもできないことから、被告証拠1は、係争意匠の創作性欠如を証明するに足りるものである。

 

以上のことから、意匠権の範囲は図面に開示された物品の外観を基準としなければならず、意匠説明書における意匠の説明は意匠権の範囲を補助的に説明するためにのみ用いられるものであることがわかる。意匠の説明について、2016815日に発効した專利審査基準第三篇第1章では、「意匠の説明は、意匠の形状、模様、色彩又はその組み合わせ等の記載を補助的に説明するためのものであり、意匠の特徴、及び図面に開示された意匠関連内容を含み、当該意匠の当業者がその内容を理解するとともにそれに基づいて実現することができるようにするものである」と規定されている。本事件では、係争意匠に係る意匠の説明に記載さた外観の説明は、係争意匠の図面に対応して開示されていないことから、係争意匠の説明の内容は、係争意匠の形状、模様、色彩又はその組合せ等の記載を補助的に説明するためのものではなく、係争意匠の意匠の特徴及び図面に開示された意匠関連内容も含まない。したがって、本件における係争意匠の権利範囲の分析では、裁判所は係争意匠の権利範囲は係争意匠の図面を基準とし、意匠の説明に記載された外観記載の部分は権利範囲に含まれない旨の判決を下した。

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