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経営幹部層の集団ヘッドハンティングは必然的に営業秘密侵害に該当するか


簡秀如/Elina Yu

最高行政裁判所は2019411日、営業秘密侵害に関する仮の地位を定める仮処分(中国語:「定暫時状態処分」)の申立てについて、108年(西暦2019年)台抗字第94号裁定(以下「本裁定」という)を下し、申立人の請求棄却が確定した。本件の申立人は台湾の電子部品製造業者(A社)で、同業他社(B社)が悪意のヘッドハンティングを行い、かつ、B社がこれによりA社の所有する営業秘密を不正に取得したり使用したことを理由として、その営業秘密を侵害し続けないように、裁判所に対してB社の生産ラインと関連製品の販売行為停止を内容とする仮の地位を定める仮処分を申立てた案件である。

 

A社の主張によると、201311月末からその各一級部門の部長及びその他の経営幹部合計12名がいずれも1ヶ月以内に前後して離職しB社に転職し重要なポジションに就いた。その後2年以内に、ヘッドハンティングされB社に転職した経営幹部は6名にも達した。また、B社は極めて短期間の間に異常な程の技術躍進を遂げた。その結果、A社は先ず刑事告訴を提起し、検察官と警察はB社を捜索し、A社所有のファイル合計42,990件を差し押さえ、そのうちA社の営業秘密に属するものは19,117件にも上った。A社は、B社で差し押さえたエッチング液は、訴外人たるC社と提携して導入したもので、業界で慣用的に用いられるものではなく、かつ、AC間には秘密保持契約も締結していたと主張。A社はまた、その営業秘密の管理についても非常に厳格で、かつ、ヘッドハンティングされた従業員は最高管理者の権限を持っていたため、営業秘密を取得することができると主張した。

 

しかしながら、上記のような事実がありながら、当事件各審級の裁定において、裁判所はなおもA社は侵害を受けた資料が営業秘密であることを釈明しておらず、また、相手方B社が確かに営業秘密侵害行為を有することも釈明していないとの判断を下した。

 

侵害された資料が営業秘密であるか否かについて、本件原裁定を下した裁判所は、次のような見解を示した。「いわゆる秘密保持措置とは、営業秘密の保有者がすでに合理的な秘密保持措置を採っていたことを指す。抗告人はそれが保有する19,117件のファイルについて、自ら一覧表を作り、また、自らファイルを選択する方法で、数万件のファイルを確認し結果、いずれも営業秘密法の要件を満たしていると主張した。しかしながら、抗告人が主張する類別内容を見てみると、たとえ一般的に当該類別の情報に関わる人物が知悉する情報でなく、かつ実際的又は潜在的経済価値を有する場合、秘密性と経済性に符合したとしても、抗告人が、その主張する営業秘密について、その人力と財力に応じ、社会通常で可能な方法又は技術により、公衆に知悉されていない情報を、業務上のニーズにより分類、レベル分けして異なる権限が授けられる者に知悉させるのかという秘密保持管理体制については、まだ釈明する責任を果たしていない。

 

営業秘密侵害行為については、裁判所はまた、次のように示した。当事者双方の生産ラインで使用する機械の設計は異なっており、A社はB社が確かに係争営業秘密を使用したという事実をまだ立証していない。従業員が離職しB社に転職したことは、「不可避的開示法理(Inevitable Disclosure Doctrine)」に関与する可能性があるが、それは、従業員が特定の知識を、固有知識なのかそれとも以前の雇用主から取得した経験なのか区別できることを期待することが難しいため、従業員が競業企業で同一又は類似する業務に従事する際に、以前の雇用主の営業秘密を開示することが不可避であることから、補い難い損失がもたらされることになり、それにより以前の雇用主は裁判所に従業員が一定期間内に競業他社で就業することを禁止し、ひいてはその営業秘密の漏洩を永久に禁止する差止命令( injunction)の発行を請求することができる。しかし、本件の原決定を下した裁判所も次のように具体的に示した。「事業情報は当該産業の従業員が普遍的に知悉している知識であり、たとえ事業者がそれを秘密と見なし、更に相当の保護措置を採っていても、それにより営業秘密を取得することはできない。不可避的開示法理は、市場の自由競争と流通性に、相当程度の影響を有するため、この原則は雇用主に有利であることから、雇用主が立証責任を負うべきである。証明事項は以下のとおり。離職従業員が雇用主の営業秘密であることを知悉ている、離職従業員の前後の業種範囲はほぼ同じか類似する、離職従業員が知悉する原雇用主の営業秘密は、新雇用主にとって相当の経済価値を有する、離職従業員が新しい職場で、原雇用主から得た営業秘密を使用することが不可避である、離職従業員に信義則に反する不正行為がある。よって、本所は、抗告人が主張する営業秘密が固有知識なのかそれとも抗告人の職場から得た経験なのかについて審理すべきである」。原決定を下した裁判所は最終的に、A社はそれについて釈明責任を果たしていないと判断した。

 

上記見解は最終的に、最高裁判所により維持された。

 

本件において、裁判所は仮の地位を定める仮処分の申立てを審理する際に、侵害を受けた側により高い程度の釈明を求めているようであり、たとえ重要幹部が集団でヘッドハンティングされたとしても、これも必ずしも営業秘密が侵害を受けた事実を釈明する根拠となるわけではないため、企業は訴訟戦略を策定する際に留意すべきである。

  

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