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競業避止条項と秘密保持契約をめぐる知的財産裁判所の見解



 

会社は自身の営業秘密を保護し同業他社からの不当競争を避けるため、通常、従業員と競業避止条項(Non-compete clause)と秘密保持契約(Non-disclosure agreement)を締結しているが、競業避止条項に対する代償措置と秘密保持契約の内容などについて、知的財産裁判所は2019124日付けの107年(西暦2018年)度民営上字第2号民事判決において更なる見解を示した。

 

本件の事実については以下のとおり。原告会社はかつて被告たる従業員4人と競業避止条項と秘密保持契約を締結していた。その後、被告は2014年に離職し、原告会社と競業関係がある会社を設立し、原告会社の顧客から発注を受けていた。原告会社は競業避止条項の約定に基づき、被告らに違約金を請求し、さらに、被告らは顧客リストという営業秘密を侵害したと主張して、損害賠償を請求した。

 

台湾台北地方裁判所は審理後、以下のような判断を下した。競業避止条項には被告が負うべき競業避止義務について地域範囲の制限が設けられておらず、「原告会社の業務に関連する業務」及び「関連業務」とは何かについても明確に特定されておらず、合理的範囲を超えており、また、代償措置も講じていないことから、当該競業避止条項は無効である。顧客リストという営業秘密侵害については、秘密保持契約に定められる守られるべき秘密は、契約自由の原則に基づき、営業秘密法で定義される「営業秘密」と完全に一致するとは限らないが、合理的秘密保持措置を講じていなければならず、かつ、明確性及び合理性を備えている必要がある。しかし、原告は、その会社が顧客リストに合理的な保護措置を設けていたことを立証しておらず、また、顧客リストには秘密性又は経済的価値を備えることを証明するには何らの証拠も提出しなかったため、この部分についての請求もまた理由なしとなる。原告はこれを不服とし控訴したが、知的財産裁判所は審理後、第一審判決中競業避止条項の部分を破棄し、被告らに違約金の支払いを命じる判決を下した。

 

競業避止条項について、知的財産裁判所は、以下のような判断を下した。原告会社の商品は台湾内外で販売されており、競業避止の地域、範囲及び方式は、一般の社会通念及び商慣習において、いずれも合理的で適切であると認めることができる。代償措置については、20151216日付けで改正された労働基準法で、第9条の1の規定が新設され、合理的な補償に関する規定が設けられたが、しかしながら、労働部が20166月に発行した通達によると、労働基準法第9条の1の規定は遡及適用しないとの解釈が示された。よって、裁判所は補償給付の有無は、本件競業避止条項が合法かつ有効であるかを判断する要件ではないが、競業避止条項に違反した際に、それを違約金減免の判断要素とすることができるものとして、競業避止の違約金を減免した。

 

顧客リストという営業秘密侵害の部分については、知的財産裁判所は原審の判断を支持しており、秘密保持の範囲は明確性と合理性を備えるべきとし、控訴人のどんな情報も文言のみに基づき拡張していずれも秘密保持又は営業秘密の範囲であると解釈してはならず、また、控訴人はすでに第三者が知り得ることを防止する秘密保持措置を講じているとの見解を示した。控訴人は、パソコンとソフトウエアの使用規範及び会社の入退室管理の写真などを提出したが、入退室管理は一般企業が特定の部屋の人の出入りを管理するもので、顧客リストと関連があるものとは認め難く、また、パソコンの使用規範では顧客リストにどんな保護メカニズムが採られているのか、秘密保持の範囲の明確性と合理性についても説明がなかったため、原審のこの部分についての判断を維持した。

 

一般の裁判所が競業避止条項について業務に関する業種及び関連業務を具体的に特定しなければならないと要求していることに比べると、知的財産裁判所は、一般の社会通念及び商慣習上合理的で適切か否かを判断基準としており、これは競業避止契約を締結した際には業務に関連する業種及び関連業務を具体的に特定することが難しいことを考慮したものであると思われる。秘密保持契約の部分については、企業は約定する秘密保持又は営業秘密の範囲が明確性と合理性を備えたものであるか否かに注意すべきで、また、第三者が知り得ることを防止する秘密保持措置を講じなければならず、どんな情報でも秘密保持又は営業秘密の範囲になるとしたら、今後の訴訟において不利益な結果をもたらす恐れがある。

 

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