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回答者サンプル抽出及び調査実施手続における瑕疵は、商標訴訟における市場調査報告の証拠力に影響する


Ruey-Sen Tsai/Celia Tao

 誤認・混同の虞、著名商標等の商標をめぐる争いは、客観的事実認定と主観認知の判断に係るもので、その答えは人によって異なることから、実務上立証することは往々にして困難である。これらの問題について、事件当事者は「市場調査」の証拠方法でその主張を支持すると、常々考えている。しかしながら、それに関連する法令ではまだ明確に規定されておらず、加えて台湾の裁判所は市場調査報告書の受け入れ程度も一致していないことから、市場調査報告の証拠力又は証明力についてずっと議論が繰り広げられてきた。

 

台湾の裁判所は過去において、市場調査に対する態度はより保守的で、市場調査報告が裁判所の嘱託によってなされたものでなかった場合、一般的には証拠として採用されなかった。近年になって、裁判所は市場調査の有効性及び証明力についての認定で、より明確な論述を示し始めている。最近の知的財産裁判所による106年(西暦2017年)度行商訴字第61号行政判決では、個別具体的な案件における市場調査報告書の証明力について、参考に値する判断が示されている。

 

本件原告はスクリーン保護シール等の携帯アクセサリー業者で、本来商標区分第9類の「PDA用保護ケース、PDA用保護カバー、携帯電話機用保護カバー、携帯電話機用保護ケース、タブレット型コンピュータ用保護カバー、リチウム電池、燃料電池、アルカリ電池、ニッケル・カドミウム電池」等を指定商品として係争商標登録を受けた。参加人はイギリスのファッションブランドで、原告の係争商標がその登録商標と類似しているとして智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)へ異議を申し立てた。異議申立手続において、智慧局は、参加人の商標はすでに著名商標の程度に達していることから、係争商標が指定する「PDA用保護ケース、PDA用保護カバー、携帯電話機用保護カバー、携帯電話機用保護ケース、タブレット型コンピュータ用保護カバー、モバイルフォン用保護カバー」商品については取消すべき旨の決定を下した。原告は智慧局の処分を不服として訴願を提起したが、訴願も棄却されたため、知的財産裁判所へ行政訴訟を提起した。

 

本件行政訴訟において、原告は台湾の研究機関が実施した市場調査報告を1部提出し、参加人の登録商標は著名程度に達していないと主張した。本件裁判所は、当該市場調査報告は審理中に裁判所の嘱託によってなされたものではないが、当該報告が原告自らが委託して作成された市場調査報告だからといってその証明力を直接否定してはならないと示した。しかしながら、当該研究機関の回答者資料を取り調べたところ、本件裁判所では、やはり当該市場調査報告の信頼性に足りないところがあることから、採用すべきではないとされた。

 

本件裁判所はまず、市場調査報告のサンプル抽出について、特定のサンプル抽出法で母集団に対してサンプルの代表性不足の問題が生じないよう、ランダム・サンプリングの手法を採るべきであると述べた。裁判所は本件市場調査報告についてさらに、当該研究機関が送付してきたオリジナルの統計表によると、調査員1人当たりの毎日のアンケート対象数が極めて不均衡であり、また、オリジナルの統計表に記された調査地点についてGOOGLEマップをもって確認したところ、人があまりいない地点が多く発見された、と指摘した。

 

上記の質疑に対し、原告は調査対象の選出及び調査地点等の条件に比べて、回答者がアンケートの質問に忠実にその真意を反映しているか否かがより重要であると弁解した。しかしながら裁判所は、サンプルの代表性と回答者がその他の事件によって左右されるか否かは全く異なる問題であり、回答者全体が質問に対して忠実に答えることができたからといって、回答者の代表性の偏りの問題を解決することにはならないと指摘した。まして、調査員が重複して回答者を調査する場合にも、回答者の忠実な回答に影響する可能性がある。以上の理由から、裁判所は、原告が提出した市場調査報告には確かに瑕疵ありとして、採用すべきでないとした。

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