ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

台湾におけるスマートグリッドの推進に向けた法制度上の課題



非核家園(原発のない郷土)の目標を達成し、脱原発ロードマップ(行程表)を策定するため、政府はすでに去年の年初に電業法(日本の電気事業法に相当)を改正し、同法第95条に原子力発電所を2025年までに運転停止する規定を盛り込んだ。同時に政府は政策面においても、多くのエネルギー転換、再生可能エネルギーの発展に向けた関連計画を推進してきた。例えば、経済部長(日本の経済産業大臣に相当)が2016525日に発表した「新エネルギー政策」「2016年エネルギー産業技術白書」「新エネルギー発展綱領」「風力発電4カ年推進計画」「太陽光発電2カ年推進計画」「フォーサイトインフラ建設計画」「エネルギー転換白書」「屋根へのグリーンエネルギー全国民参加アクションプラン」などである。なお設定目標は、2025年までにいわゆる天然ガスが発電電力量に占める割合を50%にし、石炭を30%にまで減らし、再生可能エネルギーを現在の5%から20%にまで高める電力配分目標を達成することである。

 

上記再生可能エネルギー発展の目標が8年以内に達成できるか否かはさておき、スマートグリッド(smart grid)又は先進メータリングインフラストラクチャー(Advanced Metering InfrastructureAMI)は間違いなく順調なエネルギー転換及び台湾の電力システムの安定性を確保するために最も重要な技術手段となる。

 

台湾スマートグリッド産業協会の説明によると、スマートグリッドが重要視されている理由は、それは発電、送電、配電及びユーザーを統合した先進的グリッドシステムであり、自動化及びIT化のメリットを兼ね備え、セルフチェック、診断及び修復などの機能を具備し、高信頼度、高品質、高効率及びクリーンな電力を供給できるため、世界各国のエネルギー政策の展開方向と一致し、社会の電力供給に対する信頼度と品質向上のニーズに対応することができるものである。また、再生可能エネルギーを発電のため電力グリッドに大量に導入し、スマートメーター(smart meter)と接続してデマンド管理を行い、二酸化炭素排出量を削減し、ピーク負荷を抑制し省エネを実現することができる。

 

このように重要なエネルギー転換テクノロジーへの策略は、政府はすでに何年も前から進めている。台湾電力株式会社(以下「台電」という)は高圧スマートメーター導入計画を始動しており、すでに台湾全土に2.4万軒の企業や工場などの大口需要家に向けて高圧スマートメーターの設置が完了しており、台湾の消費電力量の60%を占めている。一方、近年は中小企業、小規模事業者及び一般家庭の大口需要家をターゲットとした低圧スマートメーター導入計画が苦境に見舞われている。しかし、入札問題、ユーザーの意欲、取引先からのキックバックの受け取りなどの争議に関し、ついに最近になって解決の兆し見えてきた。その導入計画は今年(2018年)から実施され、240250億台湾元を投じて、20万戸にスマートメーターを設置する予定で、2024年には300万戸導入達成の見込で、2018年は「台湾スマートメーター元年」と称されることとなるだろう。

 

しかしながら、この発展計画が予定どおりに完成することができるかは、法制度の観点から特に懸念されている。

 

まず、世界各国のスマートメーター導入計画に関するロードマップでは、電気事業者に一定期間の法定目標の設定を求めることが多いが、台湾におけるこれまでのスマートメーター導入計画を振り返ると、ほぼ台電に策略の方法だけを求めるもので、法定ロードマップも策定されていないため、過去の関連争議がまた発生して計画中止になるか否かについては疑問が残っている。

 

次に、現在の電気料金据え置きの雰囲気において、台電が投じた大量の資金をユーザーに転嫁して負担させることはできるのかという問題がある。外国におけるユーザーに課金できる法律メカニズムが欠如している場合、台電が上記争議や質疑に見舞われた際、それに関する障害を取り除く意欲を持ち全力で推進するのか否かも疑問である。

 

また、スマートメーター導入による効果が実現できるキーポイントも、台電がユーザーの電気使用量の分析により、省エネサービスと提案を提供できることにかかっているが、このような付加価値サービスの提供によって発生した追加費用に対し、ユーザーの支払い意欲は関連の誘因又は管制に関係してくる。しかし、上記のとおり、現在、電気料金が据え置かれている状況の中で、ユーザーにとって関連分析サービスを購入する誘因はない。また、管制面において、この度のエネルギー管理法(中国語:能源管理法)改正に際して、欧州のようなエネルギー効率化指令の省エネ義務(Energy conservation obligation)も導入されていないため、このような分析サービスは、恐らく激励メカニズムの欠如により、後続する市場が創出されにくく、スマートメーターの形骸化をもたらすこととなる。

 

このほかに、台電がこれらのデータを分析し、無料でユーザーに省エネアドバイスを提供することができる場合、個人情報保護法に関する問題もまた生じてくる。これは台電自体が省エネに関する諮問機関ではないため、外部のエネルギーサービス会社又は省エネ指導に関するコンサルティング会社若しくは産業に処理を委託せざるを得ないからである。本来、台電が収集したデータは、電気料金の計算と請求の用途のみであるが、自ら又はそのデータを第三者へ渡して分析し、ユーザーに関連する省エネアドバイスを提供することができるのか、別途ユーザーの同意又は分析コンサルティングに関する法律根拠が必要なのか、業者はこれらのデータの安全性の保護について関連規範を遵守すべきであるのか、コンサルティングによるアドバイスに疑義がある場合、ユーザーはそのデータ分析を拒絶することが可能なのかなどについて、いずれも争議をもたらすこととなる。また、一部のユーザーにとっては、エネルギー消費データに基づいて、その運営業績などの商業機密情報が推測されるため、これもデリケートな情報又は営業秘密の提供に関わる可能性があり、規範の必要性もあることから、併せて考慮すべきである。

 

以上のことから、スマートグリッドの導入により、電力のビッグデータの活用が促され、自動化及びIT化のメリットの利用により、台湾の高品質な電力供給及び政策計画を促進することができるが、それに関連する法規の議題について、より進んだ明確化が待たれる。

 

回上一頁