ニューズレター
孤児著作物の利用に関する疑義
著作権は著作者が享有し、他人が著作者の著作物を利用しようとする場合には、著作者の譲渡又は使用許諾を受けなければならないが、著作権の存続期間は極めて長く、著作権法第30条第1項には「著作者の生存期間及びその死後50年」と規定されている。仮に、著作権の存続中に著作者が不明、又は既に死亡しているものの承継人が不明である場合、他人はこの著作権をどのように利用すべきか?
もし、この著作物が文化的創作に係る著作物であれば、文化的創作産業の発展を促すため、「文化創意産業発展法」(「文化的創作産業発展法」)第24条第1項には、「利用者は文化的創作製品をつくるために、既に公開発表されている著作物について、著作財産権者又はその所在を知るためにあらゆる努力を尽くしたが、不明であり、使用許諾を得られない場合、使用許諾を得ることができない状況を著作権主務官庁に説明し、著作権主務官庁による再調査、確認を経た後、使用許諾の許可を受け並びに使用報酬を供託すれば、許諾範囲内において当該著作物を使用することができる」とする特殊な規範が設けられている。
経済部智慧財産局(※日本の特許庁に相当)は104年(西暦2015年)4月22日付智著字第10416002442号通達で、前述の規定により、著作者が不明の音楽著作物につき、「使用許諾を許可する」方式で利用者が著作物を利用することを許可した。
当該許可案件において、智慧財産局は、「利用者は既に可能な連絡方式で著作者の所在を調査し、また、新聞掲載の方式で著作財産権の帰属について公に情報提供を求めたが、30日が経過しても何も得られなかった。かかる情況は、『あらゆる努力を尽くした』という要件に合致する」と認めている。また、智慧財産局の調査後も、著作者が既に死亡していることしか判明せず、関連する承継人の所在を調べ出すことは依然としてできなかったため、智慧財産局は、当該案件の申請は確かに「著作財産権者が不明又はその所在が不明である」という要件に合致する、と認め、申請人が許可範囲内において当該音楽著作物を利用することを許可している。
また、智慧財産局は「文化創意産業発展法」第24条第3〜5号の規定により、通達において、使用許諾を許可する利用の条件及び範囲(たとえば、複製、貸与及び頒布の条件、公開演出の条件、使用許諾を許可する区域、及び「使用許諾の許可」の性質は「非専属授権」(※非独占的実施許諾)であることなど)を明示し、また利用者に、許可日、文書番号及び前述の使用許諾が許可される利用の条件と範囲を著作物の複製物に明記するよう要求している。利用者は通達に定められている使用報酬を供託して、智慧財産局に報告し、その審査を受けなければならず、そのうえで、はじめて当該著作物を利用することができる。
但し、使用許諾を許可した期間に、もし使用許諾を許可した音楽著作物の著作者から異議が提出された場合、智慧財産局は当該使用許諾を許可する処分を廃止することができる。もし、申請に真実ではない事情があることを見つけた場合、智慧財産局は即座に当該許可を取り消さなければならず、また、利用者が許可された方式によらずに著作物を利用した場合、智慧財産局は即座に当該許可を廃止しなければならない(「文化創意産業発展法」第24条第6〜7号)。