ニューズレター
2014年6月に改正された刑事類法規の改正要点(上)
2014年6月、総統令により「刑事妥速審判法」(「刑事審理加速法」)、「刑事訴訟法」、「証人保護法」及び「刑法」などの刑事類法規の改正案が公布された。今回の法改正のポイントを以下にまとめる。
1. 刑事妥速審判法
i.第5条に、第5項「最も重い主刑が懲役10年以下の罪を犯した、審判中の出国制限期間は、累計8年を超えてはならない。但し、被告が逃亡し指名手配された期間は、計上することができない」旨の規定を増補。
もとより、出国制限の目的は、被告の法廷審問への出席を確保することにあり、これによって、訴訟手続きの進行又は刑罰の執行が保全される。しかし、従来、審理中の案件の出国制限制期間については制限が設けられておらず、被告は、いったん出国を制限されれば、出国することができず、人身の自由が制限される。これは、憲法第23条の規定、及び、長年「大法官会議」(※憲法解釈法廷)解釈で提唱されてきた「必要性(最小限度の侵害)」とやや矛盾するようであるとして、法改正の議論がなされた。しかし、出国制限の効果は被告の出国を消極的に阻むものでしかなく、被告は依然として国内における行動の自由を有しており、人身の自由に及ぼす影響は、人身の自由に積極的且つ強く影響する拘留よりも明らかに軽い。仮に、当該出国制限を拘留処分などと同一視して、犯罪の軽重の区別をつけずに、出国制限の総期間を拘留と同じく一律に「8年を超えてはならない」とするのであれば、軽重のバランスを欠く。そこで、立法院が審議を経て最終的に可決したバージョンでは、法定の最も重い主刑が懲役10年以下である罪について、この審判中の出国制限期間の上限に係る新たな規定が適用される。
ii.第7条を改正し、「第一審係属日から8年が過ぎても判決がまだ確定できない案件は、法により無罪判決が言い渡される場合を除き、裁判所は職権で又は被告の請求により、以下に掲げる事項を斟酌し、迅速な裁判を受ける被告の権利が侵害されていると認め、且つ、事態が深刻で適切な救済を与える必要がある場合には、その刑を軽減しなければならない。一、訴訟手続きの延滞が、被告側の理由によるものであるか否か。二、案件の法律及び事実上の複雑さの程度が訴訟手続き延滞に相応するものであるか。三、その他、迅速な審判と関連する事項」とする。
原条文では、前述の3号の情況を有する場合、裁判所は「その刑の軽減を『考慮することができる』」と規定されていた。しかし、確かに被告の「迅速な裁判を受ける権利」が侵害を受け、且つ、その情況が深刻である場合、依然として裁判所が減刑の補償を与えるか否か決定するのは、「被告の『迅速な裁判を受ける権利』が侵害を受け、その情況も深刻であるのに、本条項の刑の軽減に係る補償を受けることができない」という結果を生じる可能性があり、明らかに、本条項の「『迅速な裁判を受ける権利』が犯されている被告に対し、減刑という補償を与える」という立法目的と矛盾する。そこで、当該これらの被告の「迅速な裁判を受ける権利」を侵害し、且つ、情況が深刻な場合、裁判所はただちに直ちに軽減を行わなければならない、と改正した。
2. 刑事訴訟法
i.第119条の1の、現金で保証金を納めて勾留の免除又は停止等の措置を受けた場合、保証金について利息を計算する旨の規定を増補。
刑事保証金は保証人が被告のために拘留の免除又は停止を目的に納付するものであり、当該保証金は、保証人が納付してから法により没収されるまで、国から委任を受けて国庫代理を務める銀行によって保管されるものの、依然として保証人の所有に属するため、「提存法」(「供託法」)第12条の立法例を参照し、当該保証金に利息が給付されるよう改正した。
利息は国庫代理の銀行が「中央銀行委託金融機構辦理国庫事務要点」(「中央銀行による金融機構への国庫事務処理委託に関する要点」)第12点の規定により、台湾銀行の普通預金利率に基づいて計算、加算し、法により保証金を返還する際に、当該利息を併せて保証人に支払う。新たに規定された「刑事訴訟法施行法」第7条の7によれば、刑事保証金の計息に係る新規定は改正公布の6ヶ月後から施行される。司法院はできるだけ早く行政院と共同で「刑事保証金存管、計息及発還作業辦法」(「刑事保証金の保管、利息計算及び返還作業に係る規則」)を定め、関連措置を実行する。
ii.第370条第2項及び第3項を増補し、「不利益変更原則の適用範囲には宣告刑及び数罪併罰につき定める執行すべき刑も含まれる」(第2項)、「第一審又は第二審の数罪併罰に係る判決につき、その一部が上訴され取り消された後、別途、裁定によって執行すべき刑が定められたとき、これを準用する」(第3項)と明確に規定した。
3. 証人保護法
i.第2条に第16号を追加規定し、「営業秘密法」第13条の2の罪を「証人保護法」の適用範囲に組み入れる。「営業秘密法」第13条の1は2013年1月の法改正において刑事責任及び第13条の2の域外加重条項に係る規定を増補しており、且つ、営業秘密侵害事件の情況は複雑で、専門性が極めて高いことに鑑みれば、証拠入手は困難であり、証人による証言を奨励する必要があるため、当該号規定が増補された。
ii.第14条に、第3項「被告又は犯罪容疑者が第一項の案件の主犯又は共犯ではなく、捜査中にその犯罪の共犯又は犯罪に関連するネットワークについて供述し、検察官がかかる供述に基づいて当該犯罪組織と関連する第2条に列記する刑事事件の被告を追訴することができ、当該被告又は犯罪容疑者が自ら関わった犯罪を供述したがゆえに検察官に起訴された場合、当該被告又は犯罪容疑者の供述した他人の犯罪情況又は法定刑が当該被告又は犯罪容疑者自身の関わった罪より重く、且つ、かつて検察官が捜査中に第2項の同意を行った場合に限り、その刑を軽減又は免除することができる」旨の規定を増補。
本条の改正理由は、検察官が第2項に基づいて被告又は犯罪容疑者に対し、関わった犯罪を供述すれば不起訴処分とすることに既に同意していたにもかかわらず、事後、依然として起訴を行う情況が生じたとき、裁判所がその刑を軽減又は免除できるよう規範することによって、本来の治安維持、犯罪組織一掃という立法目的を貫くことにある。
今回の刑法改正条文は膨大であるため、刑法の改正ポイントについては、次号で改めて説明させていただく。