ニューズレター
「中小企業発展條例」改正、租税優遇措置規定を増補
「中小企業発展條例」は2014年6月5日に改正公布され、今回の改正ポイントは、第35条の研究開発支出の税額控除、第35条の1の知的財産権を対価とした投資所得の課税繰延べ、第36条の2の新規雇用従業員給与費用の130%の税額控除、などである。
改正、増設条文の主な内容
1. 研究開発支出につき所得税額を控除できるよう改正(改正条文第35条)。
中小企業が研究開発に投資した支出については、支出額の15%を上限として、当年度に納めるべき営利事業所得税額から控除することができる。又は、支出額の10%を上限として、当年度から3年間、各年度の納めるべき営利事業所得税から控除することができる。
現行の「産業創新條例」(「産業イノベーション條例」)第10条に研究開発の租税優遇措置が規定されているものの、関連子法に規定されている「高度な革新的(研究開発活動)」という条件により、かかる優遇措置を中小企業に適用することができず、中小企業に公平であるとはいえない。そこで、中小企業の研究開発費用のうち一定の割合を、納めるべき営利事業所得税から控除することを実質的に奨励するため、本条文が改正された。
本改正条文には、中小企業の研究開発支出の営利事業所得税控除に係る詳細な措置について踏み込んだ規範は示されておらず、同条第3項には、詳細な措置については行政院が定めると規定されている。しかし、上記の立法理由から、行政院が該号の権限委譲により定める詳細な控除規則に規定される中小企業の控除可能「条件」は、現行の「産業創新條例」よりも大幅に緩和されるはずであることがわかる。そうでなければ、立法主旨に合致しない。
2. 知的財産権を対価とする投資につき課税を繰り延べることができる旨の規定を増補(改正条文第35条の1)。
個人又は中小企業が、自らが所有権を有する知的財産権を、非上場、非店頭登録又は非新興市場(Emerging Stocks Market)登録会社に譲渡し、新たに発行された株式を取得する場合、個人又は当該企業の当年度の課税所得額への計上が免除される。その後、当該個人又は中小企業が前記の知的財産権の譲渡によって取得した株式を、後日、実際に譲渡するとき、その譲渡価格から前記株式取得に関連する未計上の費用又は原価を控除した後、所得税が課される。
本条規定の増補は、知的財産権を非上場及び非店頭登録会社に譲渡して株式を取得するケースを念頭に置いたものであり、かかるケースにおいては、流動性が低く実質的な所得がない、即ち、実際に現金が入ってくるわけではなく、且つ、その後、当該株式を実際に譲渡するときの価格が必ずしも取得当時と同じであるとは限らないため、ただちに所得税を課税、徴収するのは妥当ではない。そこで、これらの技術株を実際に譲渡するときに所得税を課税、徴収する旨の規定を増補した。
特に注意すべきは、本条規定の価格を設定して投資の対象とすることができる「知的財産権」の範囲が明らかに「専利権」(※発明特許権、実用新案権、意匠権)より広く、当然ながら著作権、商標権などは含まれているが、営業秘密や産地表示など一般的に知的財産権と認められているものが含まれていない点であり、この点については主務官庁の説明を待たなければならない。
3. 新たに設立又は増資された企業の新規雇用従業員の給与費用につき所得税額の割増し控除を受けることができる旨の規定を増補(改正条文第36条の2)。
投資を増やし、就業機会を造り出して、経済成長の原動力を強化するとともに外資を台湾に呼び込むべく、新たに投資設立された又は増資拡大した中小企業が、一定の投資額に達し、一定の人数の従業員を新規雇用し、且つ、当該企業の給与総支給額が増加した場合、新規雇用した中華民国籍従業員への一年あたり給与支給総額の130%を上限として、その新規雇用当年度の営利事業所得税から控除することができることを規定している。
本条で特に注意すべきは、当該中小企業は新規設立又は増資された企業でなければならず、且つ、新規雇用された従業員が中華民国籍であると同時に、当該企業の給与総支給額が増加していなければならない点である。実際の控除に係る詳細な規則や手順については、行政院が定める。
適用できる対象及び期間
「中小企業発展條例」の適用対象は中小企業の定義に合致する営利事業者に限定し、かかる定義等については経済部が定めた「中小企業認定標準」(「中小企業認定基準」)に詳細に規定されている。一般的に、いわゆる「中小企業」とは、払込資本額が8000万新台湾元以下であるもの、又は前年の営業額が1億新台湾元以下のものを指す。但し、経常雇用従業員が200人未満の特定産業、経常雇用従業員が100人未満の一般産業も、当該要件に合致する。
今回改正された条文は、その性質上、租税優遇に属すため、サンセット条項を定め、当該サンセット条項の施行期間は2014年5月20日から10年とする。