ニューズレター
「営利事業所得税査核準則」改正要点
財政部は2014年4月9日に「営利事業所得税査核準則」(「営利事業所得税監査準則」)(以下「新監査準則」)を改正、公布した。今回改正された条文は18条にも及ぶ。我が国で2013年から採用され金融監督管理委員会(以下「金監会」)により認可された「国際財務報導準則」(「国際財務報告基準」。以下「IFRSs」)に主に対応し、関連法令の変更に合わせて、徴収側納付側双方の紛争を減らし、かつ、簡素化して納税者の便宜を図るための改正を行った。「監査準則」は、営利事業者が確定申告において、また、国税局が徴税実務において、しばしば依拠として引用する規則である。本稿では、今回の改正内容の要点を以下のとおりまとめた。
一、営利事業者が物品を販売、又は役務を提供する際に、商品券、ポイント又は保証サービスなどを贈与する場合、当該贈与部分に相応する収益は販売時に計上しなければならず、繰り延べることはできない(第15条の3)
営利事業者が物品を販売、又は役務を提供する際に、ポイントを顧客に贈与し、顧客が将来当該ポイントを商品と引き換えることができることに関して、IFRSsには「ポイントに相応する収益を見積もって売上高から繰延収益に振り替え、顧客がポイントを商品と引き換えた時点で収益を計上しなければならない」と規定されている。しかし、新監査準則では、物品を販売又は役務を提供する際にポイントを贈与することを1つの取引としており、そのポイント贈与部分の収入は販売時に実現しているため、営利事業者は所得税の確定申告を行う際、財務諸表上、当該贈与部分の繰延収益を売上高に計上しなければならず、その後、顧客がポイントを商品と引き換えた際、その性質は営利事業者による顧客への販売値引きとなり、商品引き換え当年度の販売値引きとして処理しなければならない、と規定されている。
二、工事損益計算方法につき、原価回収法を増補(第24条)
営利事業者の請負工事の工事期間が1年以上である場合、工事損益の計算に関しては、完工割合法を採用しなければならない。但し、工事損益について確実な見積もりができない場合、改正前の監査準則では、全部完工法しか採用することができなかった。しかし、国際会計準則第11号「工事契約」の工事損益計算方法に原価回収法が含まれていることに合わせ、新監査基準には、営利事業者がIFRSsにより会計事項を処理し、規定を満たす場合には、原価回収法を採用することができ、既に発生した工事原価の回収可能範囲内で収入に計上して、工事損益を計算する、と規定されている。2012年12月31日以前に着工し、まだ竣工していない工事については、依然として、これまでの方法により工事損益を計算しなければならない。
三、ファイナンスリースの認定は、国際会計準則の規定により行う(第36条の2)
改正前の監査準則におけるファイナンスリースの認定条件は、財務会計準則公報第2号「リース会計処理準則」により、「営利事業者が資産の貸付をする場合、その未収リースの回収可能性が合理的に見積もられ、且つ貸手が負担すべき将来のコストに重大な不確定性がなく、以下のいずれかの条件を満たす場合、ファイナンスリースを採用しなければならない。1.リース期間の終了時に、リース物の所有権が無条件で借り手に移転する、2.借り手が(リース物の)割安購入選択権を有する、3.リース期間がリース物の法定耐用年数の4分の3以上である、4.リース開始時に各期のリース料及び割安購入価格により計算した現在の価値総額がリース資産の帳簿価額の90%以上に達する」と定められていた。しかし、国際会計準則第17号の「リース」規定には、上記第3号及び第4号のような明確な認定基準は既になく、リース期間が当該リース資産の耐用年数の大部分を占める場合、又は最低リース料の現在価額が当該資産の公正価額にほぼ達している場合、当該リース契約はファイナンスリースと認定される。そこで、新「監査準則」ではこれに合わせて規定を増補し、IFRSsを採用する営利事業者については、IFRSsの規定により処理される。
四、営利事業者が仕入、費用及び損失につき法的証明を取得できない場合でも、誠実に記帳し、取引関連書類及び代金支払い資料を提示して、業務に必要であると証明することができ、徴税機関による審査調査の結果、それが事実であると確認された場合、その支出の性質によって、原価、費用又は損失につき審査、認定を受けることができる。但し、法的憑証不備があれば、規定により処罰され、自ら申告書で開示した場合は、処罰が免除される(第38条及び第67条)
改正前の監査準則の規定では、営利事業者が仕入、費用及び損失につき、取引相手から「統一発票」(※財政部認定の公的領収書。台湾では営業税をインボイス方式で管理しており、このインボイスに相当)を交付されておらず、法的憑証を取得できない場合、取引関連書類及び代金支払い資料を提示し、且つ事前に申告書に開示しなければ、認定を受けることができなかった。しかし、実務上、営利事業者の多くは、かかる仕入れ、費用及び損失を事前に開示していないものの、こうした支出は確かに存在し、且つ業務に必要なものであるため、費用又は損失につき事実を確認して認定すべきであることを考慮し、関連規定を改正して実情に合わせる。
五、未実現の費用及び損失を計上できる項目に短期投資に関する有価証券値下がり損失を増補(第63条)
改正前の監査準則の規定では、未実現の費用及び損失を決算報告で計上できる項目は(1)棚卸資産値下がり損失、(2)従業員退職給付引当金、従業員退職基金又は労働者退職準備金、(3)貸倒引当金及び(4)その他法律に別段の規定があるもの又は財務部から特別案件の許可を受けたもののみであった。
六、旅費支出につき、提示しなければならない証明書類に関する規制を緩和(第74条)
国内出張宿泊費の認定に係る証明書類に、旅行会社から購入したパッケージ商品関連書類を追加。ボーディングパスを紛失した場合の代替証明書類について、出国した事実を証明できるパスポートのコピーを代わりに提示できる旨の規定を増補。自家用車を運転して高速道路を利用しETCで支払った高速道路利用料は、当事者(即ち出張者)の支払い証明書を証憑とする。
七、営利事業者が従業員のために加入する団体保険の一定額(1人につき毎月2000台湾元以内)は被保険従業員の給与所得とみなされず、かかる団体保険範囲には、団体生命保険、団体健康保険及び団体傷害保険が含まれる旨を明確に規定(第83条)
八、営利事業者が納付する特殊な貨物及び労務税については、以下の規定により処理する(第90条)
(一)建物や土地の販売に属するもの:当該売却物件や土地の収入項目から控除しなければならない。
(二)特殊貨物の製造に属するもの:出荷年度の租税公課に計上しなければならない。
(三)特殊貨物の輸入に属するもの:当該特殊貨物の輸入原価又は製造原価に計上しなければならない。
(四)裁判所その他機関(構)が買受け、競売又は売却し、未納税の特殊貨物に属するもの:当該特殊貨物の輸入原価又は製造原価に計上しなければならない。
(五)特殊労務収益に属するもの:当該特殊労務による収入項目から控除しなければならない。
九、輸出損失につき国外公証機構又は国外検査機構が発行した証明書類の添付を免除できる旨の規定について、当該輸出損失金額を「50万新台湾元以下」から「90万新台湾元以下」に引き上げる(第94条第9号)
十、固定資産の各項の重要な構成要件について、固定資産耐用年数表に規定される耐用年数より長い年数に基づいて単独で減価償却を計上することができるが、財産目録に明記しなければならない(第95条第9号)
十一、営利事業者が使用する資産が規定の耐用年数に既に達している場合、消滅又は廃棄時に、事前に主務機関に申請して許可を受けなくてもよい(第95条第10号)
十二、営利事業者は「促進民間參與公共建設法」(「公共施設建設への民間企業参加促進に関する法律」)の規定により、公共施設の建設に投資し、経営を行い、経営期間が満了した後、当該公共施設の所有権を政府に移転する場合、当該公共施設の工事総原価、取り決めた経営期間により原価償却費を計上しなければならない。但し、当該公共施設につき、固定資産耐用年数表に規定される耐用年数が経営期間より短い場合、経営期間内に固定資産耐用年数表に規定される耐用年数より長い耐用年数で減価償却費を計上することができる(第95条第16号)
IFRSsを採用する営利事業者は、国際財務報告解釈第12号「サービス譲与契約」の規定により、当該公共施設の関連原価を無形資産に計上しなければならないが、徴収納付双方が当該公共施設資産の類別認定について紛争を生じることのないよう、現行の方法に従って固定資産に計上し減価償却を行う、と明記している。
十三、海外の被投資事業者で且つ実質的な経営活動を行っていないものについて、その投資損失を計上する場合、当該海外の被投資事業の再投資先が実質的な経営実態を有する事業で、経営上の欠損により当該海外の被投資事業者に損失が発生したことを証明する書類を提出しなければならず、当該証明書類は公証・認証を受けなければならない。また、被投資会社が裁判所の裁定により更正並びに減資を行う場合、裁判所が裁定する更正計画書に記載される減資基準日を損失計上日とする規定を増補(第99条)
営利事業者の投資損失は、被投資事業に欠損が発生し、その営利事業の原出資額が毀損してはじめて実現するため、当該被投資事業の欠損についても実質的に発生した場合に限るよう改正した。
十四、営利事業者が代理店又は顧客との取決めで、一定の仕入れ販売数又は金額に達することを旅行への招待の条件とする場合、当該営利事業者が代理店又は顧客を国内外旅行へ招待する費用は、「その他費用」の項目に入れて処理しなければならず、「免扣繳憑単」(「源泉徴収免除票」)を作成して徴税管轄機関に申告しなければならない(第103条)
注意すべきは、この規定により、招待を受けた代理店又は顧客は、営利事業者が申告した費用につき、それを課税所得として申告しなければならない点である。実務上、実行可能であるか否かを注視する必要がある。
十五、固定資産又は無形資産をIFRSsの初度適用により異なる項目の資産に振り替える場合でも、もともとの資産の種類により所得税法及び新監査準則の規定に従って減価償却費又は諸償却費を見積もって計上しなければならない(第104条)
十六、営利事業者がIFRSsの初度適用又は会計原則の変更により前期損益項目を変更する場合、所得税の確定申告時に調整する必要はない(第111条)
当該帳簿調整された収入、原価又は費用が、所得税法関連規定により自ら調整、申告しなければならない金額に影響を及ぼさないことを考慮し、営利事業者の帳簿計算ミスによる前期損益調整事項を所得税確定申告時に営業外損益計算に加えなければならないとする規範を適用しないよう、改正された。
以上をまとめると、今回の改正では、財務上、税務上の新たな違いが増補された(上記「一」)が、IFRSsと税法との間におけるいくつかの財務上及び税務上の違いが取り除かれ、又は整理、明確化された(上記「二」「三」「十」「十二」「十五」「十六」)。また、関連法令の制定や改正に合わせ、監査準則に明文規範を置き(上記「五」「七」「八」「十三」「十四」)、並びに徴収側納付側双方の紛争を減らし且つ簡素化して納税者の便宜を図るため、費用証憑の認定、計上基準及び証明書類に関する規制を緩和した(上記「四」「六」「九」「十一」)。これらの改正は、全体的に、財政部が国際社会の潮流に対応し、且つ簡素化して納税者の便宜を図るべく努力していることが見てとれ、評価することができる。営利事業者については、自らの権利、利益を確保するため、新監査準則の遵守に努めるのは言うまでもない。