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台湾専利水際保護措置新制度


Winona Chen

総統府は2014122日に、立法院が201413日に最終可決した「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第97条の14の「専利水際保護」制度に関する条文計4条を公布した。関連条文は、行政院が関連措置規則を完成した後に施行する。また、行政院経済部及び財政部は2014324日に「海関査扣侵害専利権物実施辦法」(「税関による専利権侵害物の差押に関する実施規則」)(経智字第10304601440号及台財関字第1031006024号)を公布、施行した。行政院は同日、新改正「専利法」第97条の142014324日より施行する旨定めた。
2014324日に専利水際保護措置新制度が施行される前、商標及び著作権については、「海関執行商標権益保護措施実施辦法」(「税関による商標権保護措置執行に関する実施規則」)、「海関査扣侵害商標権物品実施辦法」(「税関による商標権物品の差押に関する実施規則」)、「海関受理進、出口貨物仿冒商標檢舉案件有関事項」(「税関が受理した商標権侵害輸出入貨物の検挙案件に関する事項」)、「海関査扣著作権或製版権侵害物実施辦法」(「税関による著作権又は製版権侵害物の差押に関する実施規則」)などの法規により、商標及び著作権の水際保護に関する管理規制措置は比較的、具体的且つ周到に規範されていた。専利権水際保護については、税関はもともと、自らが定めた「海関配合執行専利及著作権益保護措施作業要点」(「税関による専利及び著作権保護措置執行に関する作業要点」)により専利水際保護措置を実施していたが、当該作業要点には、税関による侵害物品の差押えの手続き及びその実施方法、差押えの解除などについて具体的に規定されておらず、その結果、徒に専利権水際保護措置が実施されるものの、その執行効果ははっきりしなかった。これは、財政部関務署の「知的財産権水際措置」統計資料から明らかであり、税関が毎年差し止める商標侵害に係る輸入物品は数万件、著作権侵害に係る輸入物品は数千件に達しているにもかかわらず、専利侵害に係る輸入物品は何も差押えられていないという統計資料(http://web.customs.gov.tw/lp.asp?CtNode=13159&CtUnit=998&BaseDSD=7参照)から窺い知ることができる。
今回新たに施行された「海関査扣侵害専利権物実施辦法」(「税関による専利権侵害物の差押に関する実施規則」)は、「専利法」第97条の14の規定を具体化しており、その要点は以下のとおりである。
一、差押の申立てに必要な書類及び資料(第2条)
専利権者は、自らの専利権を侵害するおそれのある輸入物品に対し、貨物輸入地の税関に差押を申し立てる場合、書面でこれを行い、並びに専利権証明書類(実用新案権の場合には実用新案技術報告)、専利権者資格証明書類、権利侵害分析報告及び権利侵害疑義物品を十分に識別することのできる説明(権利侵害物のサンプル又は写真、カタログ、図面など)、税関が差押対象物を十分に識別することのできる説明(輸入者、統一番号、申告番号、貨物名、型番、規格、輸入予定日、輸入港又は輸送手段など)を添付しなければならない。
二、相当する担保を供託する際の担保の種類(第3条)
専利権者が税関に権利侵害疑義物品の差押を申立て、税関が審査の結果、かかる申立てが規定に合致すると認めた場合、税関が算定した保証金を納付するか又は相当する担保を供託するよう専利権者に通知しなければならない。担保の種類については、政府発行の公債、銀行の定期預金通帳、信用金庫の定期預金通帳、信託投資会社の1年以上の預託証券、信用機関の保証などが含まれる旨明確に規定された。
三、税関は差押を実施する際、協力するよう専利権者に通知することができ、並びに書面で専利権者及び被差押人に通知しなければならない(第4条及び第5条)
税関による水際差押の実施が時効性及び緊急性を有する場合、慎重且つ周到を期すため、税関は差押実施前に、必要があれば、権利侵害疑義物の確認に協力するよう専利権者に通知し、執行の便宜を図ることができる。税関は差押実施時、書面で当事者に通知しなければならない。
四、被差押物品の検査を申請する際の手続き及びその実施方法(第6条)
税関による差押実施後、当事者は「専利法」第97条の1の第5項の規定により被差押物の検査を申請することができるが、書面にて貨物輸入地の税関にこれを申請しなければならず、且つ被差押物品の機密資料漏洩を回避するため、当事者は税関が指定した時間、場所及び方法により検査を行うことで、権利者の秘密を保護しなければならない。
五、専利権者が権利侵害疑義物につき訴訟を提起しなければならない期限の起算日(第7条)
専利権者による差押申立て後、税関が第5条の規定により差押を実施して、書面で専利権者及び被差押人にその旨通知し、専利権者はかかる通知の翌日から12日以内に権利侵害訴訟を提起し、並びに税関に通知しなければならない。専利権者が、税関による差押実施前に既に権利侵害訴訟を提起している場合にも、後続の執行の便宜を図るため、税関にその旨通知しなければならない。前項の期限につき、税関は必要に応じて12日間延長することができる。
六、被差押人が逆担保を提供して差押の解除を請求する際、及び当事者が裁判所の判決により権利非侵害が確定したことを理由に差押の解除を申請する際に準備すべき書類(第8条、第9条)
専利権者による差押申立て後、被差押人は税関に評価価格の2倍の保証金又は相当する担保を供託し、書面で差押の解除を輸入地の税関に申請することができる(第8条)。専利権者が差押を申立て、並びに税関が差押を実施した後、専利権者の提起した権利侵害訴訟が裁判所の判決により棄却が確定し、又は権利非侵害が確定し、専利権者又は被差押人が税関に差押の解除を申請する場合、書面を以て並びに判決書類を添付してこれを行わなければならない(第9条)。
七、被差押人が逆担保を供託して差押えの解除を請求した場合、税関は代表的なサンプルを抜き取ってから、「進口貨物通関規定」(「輸入貨物通関規定」)により処理することができる(第10条)
税関が規定により差押を解除した後、差押物について税関は「進口貨物通関規定」(「輸入貨物通関規定」)により処理する。しかし、被差押人が逆担保を供託して差押の解除を請求した場合については、関連証拠資料ファイルの完全性を維持するため、且つ後続の処理を容易なものにするため、税関は代表的なサンプルを抜き取ってから、「進口貨物通関規定」(「輸入貨物通関規定」)により処理することができる。
八、保証金又は担保の返還を請求する際の添付書類(第11条)
当事者が保証金又は担保の返還を申請する際に添付しなければならない書類(裁判所の確定判決と同じ効力を有する証明書類、和解に達したことを示す和解書、既に20日以上の期間を定めて相手方に権利を行使するよう催告したにもかかわらず未だに行使しないことを証明する書類、又は相手方が返還に同意したことを証明する書類)を明確に規定。
まとめ
「海関配合執行専利及著作権益保護措施作業要点」(「税関による専利及び著作権保護措置執行に関する作業要点」)に対応し、権利侵害に係る輸出入物品の差押えについて、専利権者は依然として、暫定状態を定める処分(仮処分)を出して権利侵害物品の輸出入を禁止するよう裁判所に請求し、これが許可された後、執行命令(権利侵害疑義者の情報、権利侵害に関わる貨物名、規格、型番又はその他の情報を含む)を税関に送達して協力、執行を命じるよう請求しなければならなかった。今回施行された「専利法」第97条の14及び「海関査扣侵害専利権物実施辦法」(「税関による専利権侵害物の差押に関する実施規則」)では、権利侵害に係る輸入物品の差押について、専利権者は労力、時間、費用を費やして暫定状態を定める処分(仮処分)を請求する必要がなく、法規により税関に権利侵害疑義物の差押を申し立てることができ、並びに、税関は、自らが算定した保証金が支払われた又は相当する担保が供託された後、差押を実施することができる。この手続きの利便性によって、専利権者の権益がより保障されることに疑念の余地はない。

  但し、注目すべきは、「専利法」第97条の14及び「海関査扣侵害専利権物実施辦法」(「税関による専利権侵害物の差押に関する実施規則」)が、権利侵害に係る「輸入」物品の差押についてのみ規定しており、権利侵害に係る「輸出」物品の差押関連手続き及び実施方法については規定していない点である。しかし、専利権者は権利侵害物品の販売(輸出を含む)について、もとより「専利法」により排除することができる。権利侵害に係る「輸出」物品の差押は、専利権者の専利権実施にとって、権利侵害に係る「輸入」物品の差押と同様重要であるため、この部分につき、税関がどのように差押を行うのか、注視、評価する必要がある。 

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