ニューズレター
「智慧財産案件審理法」改正
立法院第8期第5会期は2014年5月20日に第10回院会を招集し、「智慧財産案件審理法」(「知的財産案件審理法」)第4条、第19条、第23条及び第31条条文改正案を最終可決し、並びに第10条の1を新たに追加規定し、全文は2014年6月4日に総統により公布された。主な改正部分は以下のとおりである。
1. 技術審査官職務範囲の拡大
仮差押、仮処分、仮の状態を定める仮処分又は強制執行手続きなどの民事保全手続きに関して、これまでは主に裁判官、司法事務官が処理してきたが、知的財産事件(とりわけ特許事件)にかかわる民事保全手続きは高度な技術性を具える。そこで、今回、第4条を改正して技術審査官の執行職務範囲を拡大し、技術審査官が民事保全手続き又は強制執行手続きにおいて専門的な技術意見を提供できるようにすることで、技術審査官の専門的役割を拡大することを期待し、並びに、知的財産紛争を有効に解決し、知的財産権者の権益の保障を強化する。
2. 営業秘密侵害に関わる権利侵害者に具体的な答弁による訴訟協力義務を課す
民事訴訟法第342条と第343条は相手方に文書提出を命じることに関する規定であり、同法第345条には当事者が文書提出命令に違反した場合の法律効果、即ち、裁判所は情況を斟酌して、一方の当該文書に関する主張又は当該文書により証明すべき事実が真実であると認めることができる、と規定されている。しかし、前記規定は民事訴訟法の提出文書についての通則法規定であり、双方の紛争が営業秘密侵害にかかわるもので、当該営業秘密が科学技術産業の競争秩序に重大な影響を及ぼす可能性があるため、相手方(当該文書提出を命じられた一方)に文書提出に懸念を抱かせる情況において、仮に裁判所が相手方(当該文書提出を命じられた一方)の説明に耳を傾けずに、直接、当該文書に関する一方の主張又は当該文書により証明すべき事実が真実であると認めるのであれば、おそらく双方の立証責任に対し公正を欠くことになる。
今回の法改正中、第10条の1においては、外国の立法例を参酌して、当事者が営業秘密を侵害された(又は侵害の虞がある)と主張し且つ当該これらの侵害事実について釈明し、相手方が当該当事者の主張を否認するとき、裁判所は期限を定めて相手方にその否認の理由を具体的に答弁するよう命じなければならない、と規定されている。いわゆる「具体的に答弁する」とは、相手方に、当事者の営業秘密を侵害していないと消極的に否認するだけではなく、否認した事実について具体的な理由を提供するよう要求するものである。たとえば、営業秘密の入手先又は使用範囲の表明、自身の営業秘密が含まれているかどうかの説明などである。本条の追加規定によって営業秘密事件の権利侵害被疑者の具体的な答弁義務が強化された。かかる答弁義務の強化は、裁判所が適正な判決を下す一助となるとともに、当事者の訴訟手続上の権利の保障にも配慮するものである。
注意すべきは、本条が立法院の三読会議(※最終会議)で議論された際、審査会が、営業秘密侵害事件にかかわる技術はややもすれば科学技術産業又は競争秩序に対し重大な影響を生じる可能性があるため、相手方が具体的な答弁を提出できない場合の法律効果を規定する際には、同時に権利者の釈明責任の引き上げも検討して、バランスをとるようにしなければならない、と表明していた点である。したがって、権利者は営業秘密を侵害されたと主張し並びに釈明する際、それが有する営業秘密及び侵害を受けたという事実について、はっきりとした釈明を提供しなければならない。
3. 知的財産裁判所の知的財産事件第二審管轄についての専属権限を確立
現在、知的財産第一審民事事件は知的財産裁判所が専属的に管轄しているわけではない。当事者は、知的財産民事第一審案件を普通裁判所(一般の裁判所)が管轄することに合意又は取り決めることができる。しかし、第一審判決が下された後は、当該第一審判決が通常裁判所又は知的財産裁判所のいずれによって作成されたかにかかわらず、すべて、知的財産裁判所に上訴又は抗告を提起するよう統一される。これによって、知的財産裁判所を設置することで裁判の品質及び機能を向上するという目的が果たされることが期待される。ゆえに、今回の法改正では、第19条に、知的財産事件の第一審判決に不服で上訴又は抗告する場合、管轄裁判所である知的財産裁判所に上訴又は抗告しなければならない旨明記し、これによって法律見解を統一し、並びに判決の公信力を高める。