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著作権法改正草案第一稿



201443日、経済部智慧財産局(※台湾の知的財産主務官庁。日本の特許庁に相当)は著作権法改正草案第一稿を公布した。台湾の著作権法は1998年の改正以来、何度も改正され、最新の改正は2014122日に行われた。しかし、現行の著作権法には依然として時宜にかなわない点がいくつかある。そこで、台湾の実務において生じている著作権問題について各国の著作権法制を参酌し、再度、大規模な著作権法の改正を行った。
著作権法の原条文は計117条、改正後の条文は計147条で、今回の改正の要点は次のとおりである。
一、科学技術の発展に適応させるため、著作財産権の無形の権限を整理・統合及び修正
科学技術発展の技術段階に応じて、調整、修正を行い、実務上のニーズに適応させる。かかる調整、修正には、デジタル・コンバージェンス(Digital convergence)の発展によって生じる、利用形態及び権利範囲の境界線が曖昧になるといった問題につき、公開放送及び公開送信の定義を修正、ネットワーク及び放送設備の発展について、再公開伝達権を新たに規定、公開演出及び公開口述が区別しにくいという問題につき、公開演出及び公開口述を整理・統合し、並びに公開演出の定義を修正、公開上映の定義を簡素化し、理解しやすいようにする、などが含まれる。
(改正条文第3条第6号〜第10号)
二、職務著作物及び視聴覚著作物の著作者帰属規定の合理性を検討
現行の著作権法には、職務著作物につき約定がない場合、著作人格権及び著作財産権はそれぞれ被用者及び使用者に帰属する、と規定されている。かかる規定は、被用者の権利と利益を守るためのものであるが、実務上での執行に際しては、労資間で紛争が生じやすい。そこで、修正草案では、被用者を著作者とする案と、使用者を著作者とする案、2つの提案がなされている。また、実務上、視聴覚著作物の多くが他人に出資・委嘱して完成した著作物であることに鑑み、視聴覚著作物の著作権利帰属を、新たに条文を追加して規定する。
(改正条文第13条、第14条、第15条及び第38条)
三、著作物の流通・利用を促進するため、著作人格権規定を修正
現行の著作権法の規定には、法人消滅後の著作人格権侵害につき救済ルートがない。そこで、国際公約及び外国の立法例を参照し、法人消滅後の著作人格権の保護を削除した。また、著作人格権の保護を強化するため、著作者の名誉を損なう方法でその著作物を利用する場合は人格権侵害に該当する旨明確に規定した。著作物の流通・利用を促進するため、修士・博士論文につき、現行の「公表することに同意したものと推定する」から「公表することに同意したものとみなす」と修正し、並びに、著作者の死亡後、一定の要件を充たす場合には、著作者が生前公開していない著作物を公表できる旨、新たに規定した。
(改正条文第17条、第19条及び第20条)
四、市場調和を促進するため、著作財産権の頒布権限規定を明確化
現行の著作権法は、たとえば、頒布は実際に交付する情況に限るのか否か、権利消尽と並行輸入禁止の関係など、頒布、輸入及び権利消尽原則について、全てを明確にしているわけではない。今回の法改正では、著作権法の頒布の意味を、実際に交付する行為を指す、と明確にしているが、公開陳列及び所持する行為は依然として著作権法の規範を受ける。また、国際社会における著作財産権の権利消尽原則につき、著作財産権が所有権移転という方法で頒布された後は、再び頒布権を主張することができず、これには所有権の移転又は貸し出しという方法で頒布された権利も含まれる、と明確に定義し、頒布権及び賃貸権に関連する権利消尽規定を整理・統合並びに修正すると同時に、真正品の並行輸入規定を保留し、著作権者に市場區隔の権利を与える。
(改正条文第33条、第34条、第74条及び第99条第1項第4号)
五、実演者及び録音著作物の保護を調整
録音著作物を著作権又は著作隣接権で保護するかどうか、各国の立法は一致しておらず、著作権で保護する場合、その保護基準は比較的高く、台湾では1944年から現在に至るまで著作権を以て録音著作物を保護してきた。今回の法改正では、著作権による保護の基準を維持すべきであると認めているが、現行の著作権法では実演者及び録音著作物の保護に関する規定が分散しているため、実演家及び録音著作物の権利を独立した条文で規範することで、参照しやすくする。また、現行の著作権法によれば、実演家はその撮影・録音されていない実演又は「録音著作物」に既に収録されている実演についてのみ排他的権利を有するが、世界知的所有権機関(WIPO)が20126月に採択した国際条約「視聴覚的実演に関する北京条約」に対応し、当該公約の規定により、今回の法改正では、実演家はその撮影・録音されていない現場での実演及び視聴物に録音録画された実演について排他的権利を有する旨の規定を追加し、並びに、実演家と録音著作物は公開演出に係る共同報酬請求権を有すること及びその行使方法を明確に規定した。
(改正条文第35条、第36条及び第37条)
六、著作財産権の制限及び例外規定を、より合理的なものに修正
現行の著作権法の合理的使用に係る項目は、ネットワーク及びデジタル時代のニーズに十分に対応しきれていない。そこで今回の法改正では、立法又は行政目的、司法及び行政手続き、教育目的、公法人著作物、引用、非営利目的、区域の共同アンテナ、コンピュータプログラムのバックアップ及び時事問題の転載などの規定について修正を行う以外に、外国の立法例を参考にして、遠隔授業、国家図書館のデジタルアーカイブ、パロディ・改変及び写り込みなどの合理的使用規定を新たに追加した。このほか、現行の著作権法第44条〜第63条などの著作財産権に係る制限及び例外規定は、該条に規定する要件を充たさなければならないほかにも、第65条の合理的使用概括条項規定の4項の基準により「合理的な範囲内で」という要件を充たしているかどうかチェックする必要がある。著作財産権に係る制限及び例外規定をより明確にすることで、遵守しやすくするため、今回の法改正では、著作権法第44条〜第63条などの著作財産権に係る制限及び例外規定の適用要件を明確に規定すると同時に、「合理的な範囲内で」という要件を削除した(改正条文第61条の私的複製を除く)。かかる改正により、第65条の合理的使用概括条項規定によりチェックを行う必要はもうない。
(改正条文第53条、第54条、第55条、第56条、第57条、第58条、第60条、第62条、第63条、第64条、第66条、第67条、第68条、第70条、第73条、第75条及び第78条)
七、著作財産権者不明の強制許諾規定を新たに追加
台湾の「文化創意産業発展法」(「文化的創造的産業発展法」)には著作財産権者不明の強制許諾制度が規定されているが、文化的、創造的産業に限定して適用されている。そこで、著作権法においても、著作物の流通・利用を促進するため、全ての利用者が、営利目的又は非営利目的にかかわらず、孤児著作物を利用することができるよう、著作財産権者不明時の強制許諾規定を新たに追加した。また、著作財産権者不明著作物の利用の時効性及び著作権主務官庁の審査効率の向上も考慮し、日本の著作権法第67条の2の規定を参考に、著作権主務官庁の審査期間中、利用者が保証金を供託して、先行利用できる旨の規定を新たに追加した。
(改正条文第81条)
八、水際規制措置の修正
現行の著作権水際規制措置規定は、税関が申請により差押えを行い、著作権者又は製版権者の侵害防止請求権行使の緊急性に重点を置く。しかし、差押え物品が侵害物であるか否かはまだわからず、民事訴訟法では、債務者が担保を供託した後、仮差押又は仮処分を取り消すことが認められていることを参酌し、差押えを受けた者が倍額の保証金又は相当する担保を供託して、差押えの解除を税関に請求することができる旨の規定を新たに追加する。また、権利侵害の事実又は訴訟提起の必要性を調査するため、商標法第76条第2項及び第3項の規定を参考にして、税関が権利者の申請により、権利者に権利侵害貨物関連情報を提供することを認める規定を新たに追加し、並びに関連情報の用途を制限することで、著作権者又は製版権者の権益を十全に保護できるよう期する。
(改正条文第106条)
九、時宜にかなわない刑事責任規定の改正を検討
現行の著作権刑事責任規定は、過去の実体物を主とする海賊版問題、及び、夜市(ナイト・マーケット)や折り込み広告で海賊版光学ディスクを販売する行為が横行していたなどの問題に対応したものである。しかし、近年、科学技術環境の変遷、世界経済低迷の影響のもと、台湾の主要な光学ディスクメーカーも徐々に減少し、且つ、政府は光学ディスクメーカーに対し厳しい取締りを行って、メーカー側が正規版光ディスクの製造行為に従事するよう徹底しているため、近年、重大な違法事件は摘発されていない。夜市や折り込み広告での海賊版光学ディスク販売問題について、台湾は2002年から「貫徹保護智慧財産権行動計畫」(「知的財産権保護行動貫徹計画」)(3年を1期とする)を推進し、知的財産権執法協調架構を構築し、これには警政署(※日本の警察庁に相当)(知的財産権保護警察大隊(※通称「保智大隊」)を含む)、税関、高検署(※高等裁判所検察署)、司法院、貿易局、光碟聯合査核小組(※光学ディスク連合取締り小隊)、教育部(※日本の文部科学省に相当)及び智慧財産局などの組織が含まれ、並びに教育宣伝指導及び取締りを強化しており、内政部警政署の統計によれば、光学ディスク差押え数は近年大幅に減少している。したがって、一部の著作権刑事責任規定は、たとえば光学ディスクの非親告罪化及び6ヶ月の法定刑下限のように、実務執行において「輕重失衡」(※罪と罰が重さのバランスを欠いている状態。たとえば、罪の内容に比して罰が厳しすぎるなど)という問題を呈し、致罪責不相符、謙抑主義の原則(※刑法の謙抑制)に反するため、改正を行う。また、無断で所有権移転により著作物の原作品又はその複製物を頒布する行為について、現行の条文では正規品及び海賊版についてそれぞれ別々に処罰規定を定めているが、規範要件及び刑度に大きな差異はないため、整理・統合して簡素化する。「頒布を意図して公に陳列又は所有する」侵害態様については別に処罰規定を定める。このほか、真正品並行輸入違反には民事責任しかないため、バランスをとるため、真正品並行輸入違反の後続の頒布行為を除罪化する。
(改正条文第118条、第119条、第121条、第122条及び第130条)
十、著作財産権の保護期間を延長するか否か
台湾では現在、著作者の生存期間プラス50年又は著作物の公開後50年という規定を採用しており、これはWTO/TRIPSの規定に合致しているものの、現在、国際社会において、たとえばアメリカ、EU指令、イギリス、フランス及びドイツなど、一部の国家では既に70年に延長されている。また、日本でも映画の著作物は70年に延長されているが、その他の著作物については50年のままであり、韓国では依然として50年という保護期間が維持されている。著作財産権の保護期間を延長するか否かが、創作のインセンティブを高めるか否か、異なる産業に対する影響の違い、国家の教育文化コストの増加に及ぶかといった要素については、各界のコンセンサスが得られるのを待つ。
十一、著作権登録制度を回復するか否か
現在、「文化創意産業発展法」第23条に規定される質権設定登録制度以外に、台湾にはその他の著作権登録制度がない。今回の改正は、著作物の流通・利用を促進し、及び取引の安全を保障するため、著作権財産権の譲渡、「専属授権」(「専用使用権」)及び質権設定登録の公示制度を新たに規定した。ただ、著作権登録の全面復活の要望がたびたび出され、ベルヌ条約第5条及びTRIPS規定により、著作権登録を著作権取得の要件とすることはできないため、国際的に採用されている著作権登録制度はいずれも自主登録制に属す。WIPOはその加盟国に対して著作権登録制度の調査を行っており、先進国のなかで、登録制度がなく自主登録制度を採用している国の割合はかなり多い。登録制度のない国にはイスラエル、オランダ、スイス、スェーデン、イギリス、ドイツ、デンマーク、ロシア、南アフリカ共和国及びオーストラリアなどが含まれ、自主登録制度を採用している国にはアメリカ、カナダ、フランス、インド、日本、スペインなどが含まれる。この議題については、各界において全く正反対の異なる意見がある。賛成者は、自主登録は権利者情報の参照が容易になり、著作物利用の取引コストを引き下げ、著作物の流通・利用を促進することができる、と主張している。これに対し、異なる意見の者は、著作権登録の復活は、「登録すれば権利を有し、登録していなければ権利がない」といった誤解を生じやすく、且つ著作権登録には強制性がないため、著作権者が初回登録後、連絡方法、譲渡及び使用許諾等の異動につき変更登録を行っていない、又は不実な登録を行っていれば、反対に誤った情報を利用者に提供し、紛争となった場合、事の次第を明らかにするために相当の行政、司法コストを費やすこととなり、真正の権利者の保護に余分な負担を形成し、権利者登録を奨励する誘因に欠けており、おそらく権利者登録を希望する者は多くはないだろう、と主張している。著作権登録の全面復活は紛争性が高いため、依然としてさらに踏み込んだ議論を行う必要がある。
(改正条文第84条)
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