ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

解雇の合法性と権利失効に係る最高裁判所の見解



最高裁判所は、2013年の3つの判決(102(西暦2013)度台上字第1732号、102(西暦2013)度台上字第1766号、102(西暦2013)度台上字第1932号判決)において、労働者が離職後何年も経ってから、雇用主の当時の解雇が適法ではなかったとして訴えを提起し、賃金支給を請求した案件について、いずれも権利失効理論を以て労働者の請求を却下した。

当該3件の判決の原告はいずれも、2001年にアメリカで起きた9.11同時多発テロ後、世界中の航空業界の業績が低迷した結果、業務縮小、赤字などの理由で解雇された客室乗務員である。労働者はいずれも解雇時に既に解雇手当を受け取っており、且つ、その後9年余りもの間、異議を表明することなく、また、別の職場で働いていた。2011年になって、これらの労働者はようやく訴えを提起して雇用関係の存在を確認するよう請求し、並びに当該期間の賃金及び各種手当を支払うよう請求した。訴訟中、雇用主は権利失効の抗弁を提出したこともあったが、高等裁判所は「権利失効理論は雇用主側に適用されるべきである」と判示した。そのため、判決では雇用関係が存在することが確認され、雇用主は支払わなかった賃金を支払うよう命じられた。
これらの案件は最高裁判所に上訴され、最高裁判所は2013年の判決(102(西暦2013)台上字第1732号)で、権利失効理論は信義則(信義誠実の原則)から派生したものであり、当然、労働者にも同じように適用される、と明確に指摘し、次のように述べている。「民法第148条第2項には『権利の行使、義務の履行は、誠実かつ信用できる方法によらなければならない』とする明文規定が置かれている。上記規定は、労働基準法第1条第1項後段の規定により、該法が規範する事件についても適用される。権利者がその既に行使可能な権利につき、相当期間ずっと行使せず、その不行使によって、権利者がその権利の行使を望んでいないようにと義務者に思い込ませるに足るものである場合、当該権利の性質、法律行為の種類、当事者同士の関係、社会の経済状況、時間的・空間的バックグラウンドの変化及びその他の主観的・客観的要素を斟酌した結果、もし、権利者が長期間その権利を行使しなかった後、突然、権利を行使し、そのことが義務者を窮地に陥れるに足るものであり、事件の公平及び個別案の正義に反すると認めることができるときは、信義則から発展した法律倫理(権利失効)原則に基づき、このとき権利者が行使した権利は信義則に反すると認められ、その権利は制限され、再び行使することができない。したがって、当該、信義則から派生した権利失効原則は、民法第148条が198214日に改正された際、第2項の立法理由に特に追記された『信義則は、如何なる権利の行使及び義務の履行にも適用されるべきである』との趣旨を参照すれば、労働者にも適用される。」
このほか、最高裁判所は、同年の102(西暦2013)度台上字第1766号判決のなかで、さらに一歩踏み込んで、次のように指摘している。「不定期労働契約は継続履行の契約関係に属し、その安定性及び明確性が最も重要であり、その契約のあるなしは、賃金の給付、労務の提供に関連するほか、労働者の勤続年数計算、定年退職金の拠出、企業内部組織の人員配置、業務調整などにも関係し、労使双方の権益に対する影響は極めて大きく、紛争が生じた場合、できるだけ速やかに確定しなければならない。ドイツの解雇保護法(Kundigungsschutzgesetz)には労働者が解雇の合法性に対し訴訟を提起する場合、一定の期間内にこれを行わなければならないとする制限が設けられていることを参酌すると、労働関係が長期間未解決のままになるのは望ましくないものである。権利失効理論も信義則に基づいて発展してきたものであり、民法第148条に第2項が追加規定された法改正の趣旨によれば、労働法律関係において、当然、労働者側の権利行使時に、特別にその適用が排除されることはない。」
過去の実務事例中、当事者が権利失効理論を持ち出すことはたびたびあるが、最高裁判所は当事者の権利行使が時効にかかっていない、又はもとより時効問題さえ持ち出されない状況下で、権利失効を理由に当事者の権利行使を禁止する判例はあまり見られず、権利失効理論を採用する案件も不動産関連案件が主である。
解雇の合法性に関する紛争において、これまでの実務ではずっと、労働者が解雇時に異議を申し立てず、自ら進んで離職票に署名し、解雇手当を受け取った後、ようやく訴えを提起して争うなどの行為について、多くの場合、比較的容認する態度を採ってきた。これに対し、今回の最高裁判所が短期間に作成した3つの判決は、いずれも権利失効理論を理由に第二審の労働者に有利な判決を破棄しているのみならず、いずれも労働契約において、労働者の権利行使にも権利失効の可能性があることを明示しており、最高裁判所の態度が若干転換したようであることがわかる。最高裁判所が今後、権利失効に対する認定基準の規制をさらに緩和し、より多くの事案において権利失効理論を引用し権利の行使を制限するかどうか、その動向に着目する価値がある。
回上一頁