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不正な財務報告の刑事責任及び要件



台北地方裁判所は20142月に、天剛資訊公司がその財務諸表に虚偽の情報を記載した財務報告不正事件について判決を作成し、次のように判示した。「天剛資訊公司は財務報告の業績を水増しし、財務報告の製品在庫による不良債権計上額及び資金調達の必要性を低く見せるため、その他のメーカーと共謀して循環取引を行い、実際には製品の販売及び代金の受取りがない状況下で、虚偽の取引情報を会社の帳簿、財務諸表に記載し、これらの財務諸表に基づいて作成し、証券取引法の規定により申告、公告すべき年次財務報告、財務業務書類に虚偽の記載がある状況は、各被告の当該事件への関与状況から見ても、それぞれ商業会計法第71条第1号の虚偽記載罪、証券取引法第171条第1項第1号の財務報告不正罪を構成すると認定する。」
この事案の争点は、財務報告不正事件においてしばしば論じられる議題であり、かかる争点には、証券取引法第171条第1項第1号(同法第20条第2項違反)と同法第174条第1項第5号の区別、当該2つの条文の規定により処罰する際に「重大性」に係る要件を入れるべきか、及び「重大性」の判断基準は何か、が含まれる。それぞれにつき、以下のように述べさせていただく。
一、財務報告不正に関する処罰規定
財務情報不正に関する刑事処罰につき、関連する条文は以下のとおりである。
(1)商業会計法第71条(11号:不正な事項であることを明らかに知りながら会計伝票を作成又は帳簿に記入した場合、15号:その他の不正な方法を利用して会計事項又は財務諸表に不正を生じさせた場合)
(2)証券取引法第202項(発行人が本法の規定により申告又は公告した財務報告及び財務業務書類につき、その内容に虚偽又は隠蔽の事情があってはならない)
(3)証券取引法第1711項第1号(第202項の規定に違反した場合、3年以上10年以下の懲役に処す)
(4)証券取引法第1741項第5号(発行人、公開買付、証券会社、証券商同業協会(中華民国証券商同業公会、Taiwan Securities Association)、証券取引所又は第18条に定める事業者が、法により又は主務官庁が法律に基づいて発した命令により規定された帳簿、会計資料、伝票、財務報告又はその他の関連業務文書の内容に虚偽の記載があった場合、1年以上7年以下の懲役に処す)
原則として、非公開発行会社の財務情報に不正がある場合、商業会計法第71条により処罰し、公開発行会社については証券取引法第1711項第1号(同法第20条第2項違反)又は第1741項第5号により処罰する。
二、証券取引法第1711項第1号(同法第20条第2項違反)と第174条第1項第5号の区別
(1)1968430日に証券取引法が制定された際、第1741項第5号には財務報告不正に係る刑事責任が定められていた。それから20年後、1988129日の法改正時、証券取引法には第174条に刑事処罰規定が定められているだけであり、一般投資家の民事賠償請求について請求権の基礎を提供することができないと判断され、第20条第2項に民事責任に係る規定が追加された。しかし、2004428日の証券取引法改正時、立法者は誤って、当時の証券取引法には財務報告不正について民事損害賠償責任しか定められていないと考え、既に存在していた第174条第1項第5号の刑事処罰を見落とした。そして、第20条第2項の発行人が申告又は公告した財務報告に虚偽や不正があるといった行為は、会社関係者の重大な不法行為であり、また重大な証券犯罪でもあるため、処罰する必要があると考え、財務報告不正を第171条第1項第1号規定の刑事制裁を受ける事由の1つに組み入れた。その結果、同一の財務情報不正に係る行為が、同一の法律規範のもと、2つの条文に同時に存在することとなり、「屋上屋を架す」といった重複の状態を生じ、また、同一の行為に対して刑罰の重さが異なるといった事態をもまねいた。
(2)2004428日の法改正以降、公開発行会社の財務情報不正に係る行為に対し、2つの処罰条文が同時に存在しているため、裁判所が具体的な個別案を審理する際、証券取引法第20条第2項、第171条第1項第1号を以て罪を問うケースがよく見受けられる。しかし、第174条第1項第5号とどのように区別すべきかについて示される理由は一致しておらず、甚だしきに至っては、理由を付さずに、直接、証券取引法第171条第1項第1号を適用するケースも少なくない。
(3)天剛事件の第一審判決では、単に証券取引法第20条第2項及び第174条第1項第5号条文の文義解釈から、両者の適用範囲を区別することはできないとしている。当該第一審裁判所は、証券取引法の立法目的、刑法の謙抑性原則、罪刑均衡原則から、並びに目的性縮減で以て証券取引法第171条第1項第1号及び第174条第1項第5号の処罰範囲を制限することを試み、次のように判示している。「両者はいずれも『重大性』を客観的要件とする必要があり、且つ公開発行会社が財務報告又は財務業務書類を申告(公告)する前に行った虚偽の記載が、もし重大性の基準に達しているのであれば、証券取引法第174条第1項第5号の要件に該当する。もし虚偽の記載後の申告(公告)が重大性の基準に達しているのであれば、証券取引法第20条第2項の行為を構成し、証券取引法第171条第1項第1号の要件に該当する。もし、いずれも重大性の基準に達していなければ、商業会計法第71条を適用して処罰する。非公開発行会社については、証券取引法の規範を受けないため、商業会計法第71条規定のみを適用して処罰する」。
三、重大性の判断
我が国では、財務情報不正が重大性の基準に達しているか否かについて、判断基準が確立されていない。台北地方裁判所は天剛事件において、「会社の財務情報不正が重大性を具えるか否かを評価する際、同時に、理性的な投資家にとって重要な質的及び量的指標であることを考慮しなければならず、量的指標は重大性分析の第一歩である」とし、審計準則公報第51号「監査計画及び執行の重大性」第19条、証券取引法施行細則第6条の財務諸表再作成についての基準及び米国の会計実務において一般的によく用いられるガイドラインから、「会社が不正な循環取引により引き起こした財務情報不正事件を処理する際、『営業収入金額の1%』を重大であるか否かの量的基準とすることができる」との見解を示している。また、質的基準については、「もし財務情報不正が会社経営陣の不祥事又は不法行動によるものであれば、重大性を具えると認めることができる」としている。
台北地方裁判所は天剛事件において、証券取引法第1711項第1号(同法第20条第2項違反)と第174条第1項第5号の財務情報不正に係る刑事責任の判断には、「重大性」を客観的要件として入れるべきである、と判示している。これによって、重大性を具えない内容の不正行為に対して一様に重罪に問うことで発行人又はその責任者が恐慌状態に陥るのを回避することができる。また、たとえば、些末な事柄すべてを会社の財務報告又はその他の関連業務文書に記載することで投資家が過度に大量の不必要な情報を受け取る可能性を回避することもできる。したがって、前述の裁判所見解には実際のところ頷けるものがある。また、証券取引法第1711項第1号(同法第20条第2項違反)と第174条第1項第5号の区別については、天剛事件で採用された見解以外にも、何人かの著名な学者も立法主旨に従って分析し、「第174条第1項第5号は刑法の文書偽造罪に照らした量刑加重であり、本質的に文書偽造罪で、もし財務報告不正の内容が重大性を具え、公衆又は他人に損害を生じるに足るものであるとき、証券取引法第174条第1項第5号が適用される。証券取引法第20条第2項、第171条第1項第1号は証券詐欺規定に属し、財務報告不正の内容が重大性を具え、かつ、行為者が不正な財務報告を利用して詐欺を行った場合に、はじめて、当該条項により処罰される」との見解を示している。この区別方法は論理上根拠を有するもので、法改正が行われる前に採用できる判断方法であるといえる。
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