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特許の水際保護措置条文が立法院で最終可決


簡秀如/Stanley Cheng

立法院は201413日に「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)改正草案を「三読」(※立法過程の最終決定段階)で通過させ、第97条の14の「特許の水際保護」制度に関する条文計4条を追加規定するとともに、付帯決議で、「三読」通過公布日から2ヶ月以内に関連措置や規則の制定を完了した後、新法を正式に施行するよう行政院に要求した。今回の法改正は、特許の水際保護措置を正式に専利法に定めるものであり、将来的に特許権者が、輸入される物品がその特許権を侵害する虞を有する場合、現行の商標法及び著作権法の規定に照らし、担保金を供託して権利侵害疑義物品の差押えを税関に申し立てることができるようにすることで、特許権に対する保護を強化するとともに、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property RightsTRIPS)の知的財産権の水際保護措置に関する関連規定を確実に履行するものである。

 
今回の法改正の主なポイントは、差押え手続き、差押えの停止及び損害賠償の3点である。
 
l   差押え手続き
 
(一) 特許権者は差押えを申し立てる際、税関に書面でこれを行い、侵害の事実を説明するとともに、税関が査定する当該輸入物品の課税価格に相当する保証金又は担保を供託しなければならない。これは、特許権者と差押えを受ける側双方の権益のバランスに配慮したものであり、特許権者に差押えを自発的に申し立てる権利を付与するとともに、差押えを受ける側が貨物の差押えによって被る商業上の損失を回復することができるよう保証するものである。
(二) 税関は、差押え申立て受理後、申立人に通知しなければならない。申立てが規定に合致すると認め、差押えを実施する場合、申立人及び差押えを受ける側に書面で通知しなければならない。
(三) 差押え物品の機密資料を保護したうえで、双方はその差押え物品を検査することができ、これによって、申立人と差押えを受ける側が差押え物品の状況を理解したうえで、当該差押え物品につき権利を主張することができる。
 
差押え物品のコンテナ延滞料、倉庫費用、積卸費用などの費用につき、申立人が、差押え物品が特許権侵害に属す物品であることを確認する裁判所の確定判決を受けた場合、差押えを受ける側が当該費用を負担しなければならない。反対に、差押えが申立人の責めに帰することのできる事由により停止された場合、申立人が負担しなければならない。
 
l   差押えの停止
 
税関は、次のいずれかの特定条件に合致するとき、差押えを停止することができる。(1)申立人が、税関が差押えの申立てを受理する旨を通知した翌日から12日以内に期限に従って訴えを提起しなかったとき(税関は必要に応じて24日まで延長することができる)(2)申立人が差押え物につき訴訟において敗訴の確定判決を受けたとき(3)申立人が自ら差押えの停止を申し立てた、又は(4)差押えを受ける側が逆担保を供託したとき
 
上記逆担保は、申立人が供託した保証金の倍額の担保金又はこれに相当する担保とする。このように規定するのは、差押えを受ける側が敗訴したとき、特許権者が賠償請求できる金額は、おそらく差押え物品の価値を大幅に上回ることになり、差押えを受けた側が相当する担保を提供していないのに、直ちにその貨物を通関させることがある場合、それは特許権者にとって決して公平ではない点を考慮したからである。
 
 
l   損害賠償
 
差押え物品が特許権を侵害する物品に属さないとする裁判所の確定判決を受けた場合、申立人は、差押えを受けた側が差押え又は逆担保の供託により被った損害を賠償しなければならない。
 
今回の法改正以前に、税関はもともと、自らが制定した「税関による特許及び著作権の権益保護措置執行に関する作業要点」(「海関配合執行専利及著作権益保護措施作業要点」)により特許の水際保護措置を実施していた。しかし、当該作業要点の規定では、特許権者はまず先に裁判所から暫定状態を定める仮処分の許可を受けるとともに、案件に関係する貨物の輸出入日時及び場所、輸出入に用いられる輸送手段の名称、便名、果ては、輸出入申告書番号などの具体的な資料まで提出する必要があり、そのうえで、税関はようやく特許権者に協力して処理することができた。しかし、これらの資料は正規ルートからの入手が困難であるため、税関は特許の水際保護措置を設けていたものの、その効果は今ひとつであった。今回の法改正では、特許権者に特許権侵害疑義物品の差押えを税関に直接請求できる権利を与え、ようやくアメリカ、日本、中国、韓国などの主要国とその法的基準の足並みをそろえることになった。但し、仮に申立人が具体的な輸入情報を依然として提供することができなかった場合、税関が、案件に関係する貨物が権利侵害物であるか否かをどのように判断するのか、また、関係する科学技術分野の紛争事項をどのように処理するのかについて、疑問の余地が残る。よって、この新制度の実際の効果がどのようなものであるかは、当該制度の正式な施行後、改めて検討、評価しなければならない。
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