ニューズレター
知的財産裁判所が商標権者提出の侵害鑑定報告の証拠能力を否定
警察官、裁判所検察官、裁判官又はその他の司法機関及び税関が、商標商品が模倣品であるか否か、又は商標権侵害を構成するか否かを認定する場合、原則として、当該商品が、商標権者が自ら製造した、又は他人に使用許諾して製造させたものであるか否かをまず確認しなければならない。現在の実務における通常の方法では、商標権者又は専用使用権を受けた者又はそれらが指名した人員が鑑定報告書を作成、提出して、真正品と模倣品被疑物の相違点を説明し模倣品であるか否かの結論を出して、警察官、裁判所検察官、裁判官又はその他の司法機関及び税関の参酌に供する。権利侵害者が当該鑑定報告の証拠能力について争わないのであれば、通常、それは証拠として採用されるが、もし権利侵害者が争うのであれば、証拠として認められるかどうかは疑わしい。 |
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知的財産裁判所の2011年の100年度刑智上易第59号刑事判決は、商標権侵害刑事事件について、刑事訴訟法第198条には「鑑定人は、裁判長、受命裁判官又は検察官が、次に掲げる者から1名又は数名を選任して、これに担当させる。/1、鑑定事項について特別な知識、経験を有する者。/2、政府機関の委任により鑑定職務に就く者。」と規定されており、また、同法第208条第1項には「裁判所又は検察官は、病院、学校又はその他の相当する機関、団体に委託して、鑑定又は他人の鑑定を審査させることができ、第203条から第206条の1までの規定を準用する。当該裁判所又は検察官が口頭で報告又は説明する必要がある場合、鑑定又は審査を実施する者に命じて、これを行わせることができる」と規定されていることを開示している。 |
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知的財産裁判所は、「本件鑑定人は商標権者によって指名されており、当該鑑定人が取調べ中に自ら作成、提出した商品鑑定報告書及び行った鑑定陳述は、いずれも、当該鑑定人が裁判長、受命裁判官又は検察官によって選任又は委任された者ではなく、また、検察機関によって総括的に選任又は委任された者でもないため、証拠能力を持たない」と指摘している。 |
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その後、高雄地方裁判所は、2013年の102年度智簡上字第1号刑事判決において、知的財産裁判所の上記見解を引用し、最高裁判所の2007年の96年度台上字第6614号刑事判決の見解を参酌して、当該事件の被告及び弁護人が、商標権者自らが指名した鑑定者によって作成、提出された鑑定報告の証拠能力を否定していることを考慮し、当該鑑定報告を事件を審理するうえでの証拠として認めなかった。 |
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知的財産裁判所の「商標権者が自ら作成、提出した権利侵害鑑定は証拠能力を備えない」とする判示はもとより法において根拠を有するものであるが、商標権侵害実務におけるこれまでの鑑定実務の方式に重大な影響を及ぼすことは確実であり、おそらく商標権者に不利益をもたらすことになるであろう。 |