ニューズレター
「台湾年度最優秀税法判決」第一号
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当所は先だって、国際的に有名な楽器及び音楽教育関連会社(以下、「会社」という)の委任を受け、徴税機関が、会社が音楽教育サービスを楽器販売代理店に提供したことを否定しかつ会社がインボイス発行規定に違反したとして過料を科した税法紛争(以下、「本件紛争」という)について、行政訴訟を提起し、最近、勝訴判決が確定した。また、本件最高行政裁判所100年(西暦2011年)度判字2254号判決(以下、「本件判決」という)は、今年9月24日に「第一回台湾年度最優秀税法判決」で最優秀税法判決に選ばれた。これは、元財政部部長、税法教授及び税法弁護士から構成される選考委員会によって、その年の最も優れた税法判決を選出したものであり、本件判決は、長年にわたる税法に係る疑義を明確にし、納税義務者の権利を具体的に保障し、税法及び司法改革に大きく貢献したとして、その第一号に選ばれた。本件判決の主旨及び重大な影響は、以下のとおりである。 |
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1. |
本件紛争が台北高等行政裁判所で審理された際、徴税機関は、会社と一部の楽器販売代理店の財政部賦税署監査時の不利な自白を唯一の証拠として提出しただけで、その他の補強証拠を提出することができなかった。そこで当所は会社をサポートして、会社と一部の楽器販売代理店との間の取引を示す証拠を提出し、双方に取引の事実があったことを証明した。しかしながら、台北高等行政裁判所は、不利な自白のみを採用し、会社と一部の楽器販売代理店との間に取引があったことを示す証拠については全く斟酌せず、会社側敗訴の判決を下した。 |
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2. |
当所は会社に対し、原審判決が上訴要件である「判決の法令違背」事由を構成することを詳細に分析、説明し、その結果、会社は当所の意見に同意して最高行政裁判所に上訴を提出した。本件判決は、当所が提出した上訴理由を最終的に採用して「原審判決には9項の『判決の法令違背』事由があった」と判示し、原審判決を破棄して「更審」(※最高裁で原審判決が廃棄された場合、高等裁判所に差し戻され、再審理されることになり、これを更審という)に差戻した。台北高等行政裁判所はこれとは別に免罰の勝訴判決を下し、かつ、本件紛争は徴税機関の上告放棄により判決が確定した。 |
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3. |
本件判決は当所が提出した上訴理由を採用し、3項の重要な税法原則を導き出して、納税義務者の権利の保障、税法及び司法の改革に大きく貢献した(以下に、選考委員会の選考意見を整理する)。 |
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(1) |
本件判決は「原審判決が会社に不利な証拠のみを採用し、会社に有利な証拠を顧みなかったことは、判決の法令違背という上訴要件を構成する」と具体的に論断しており、行政裁判所の税法判決の質の向上を促す点において重大な意義を有する。 |
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(2) |
本件判決は「税法は民法の契約自由の原則を尊重しなければならず、例えば例外的に、脱税行為を理由に実質課税で追徴課税を調整しなければならない場合、徴税機関は実質的な証拠を提出するとともに正当な法律手続をとらなければならない」と明確に述べている。本件判決は契約自由と税法の調整について創始的な論述を行い、並びに長年来の税法紛争を整理し明確にした。 |
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(3) |
本件判決は「過料処罰要件の事実認定は、徴税機関が立証責任を負わなければならず、かつ、それが提出する証拠は裁判所に確信の程度に至る心証を抱かせなければならない。さもなくば、行政裁判所は直ちに、処罰要件を構成する事実が存在しない、と判示しなければならない」として、納税義務者の権利に有益な保障に資した。 |
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税法又は紛争に関してご質問等ございましたら、当所「税務専業分工小組」(税務専門チーム)までご連絡ください。 |
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